第584話 安定の信頼感ってことかな。的なお話

「それじゃ、途中まで一緒に行こうか。」

「そうですね。」


ギルドとレイランまでの分かれ道までは一緒に向かうことに。

そんなわけで一緒に玄関から出てギルドの方へと向かうのだが……なんか、妙な視線を感じるんだけど?

悪意とかは感じない。

でも、間違いなく見られてる。

え?

なに?

なんで見られてるの?


「どうしたの?」

「いや、なんか視線を感じて……悪意じゃないんだけど……。」

「あー、確かにそうだけど、気にしない方がいいよ? 冒険者やってたら多かれ少なかれそういうのはあると思うし。」

「そう言われても……いい気がしないのは確かなんで。」


普段の嫉妬の視線には慣れはした。

でもこの視線はそういうのじゃなくて……なんて言えばいいかは分からないが、少なくとも悪意はない。

ないが、その普段との差がかえって不快感を感じる原因となっている。


「はぁ。仕方ないか。原因がわからないことにはどうしようもないですし。」

「そういえばさ、レント達はダンジョンに潜りたいの?」

「あー、潜りたいっていうか、なんていうか、興味はありますよ。そりゃ迷宮都市ですから、それ目的で来たのは間違いじゃないですし。でも、現状はそうホイホイ潜るわけにはいかないですよね? 訓練とかがありますから。」

「言ってくれれば少しは考えたよ?」

「少しは、ですか…。」

「うん。まあ、ギルドとしては通常依頼を受けてくれるのはありがたかったし、そこはね。」

「でも狩猟大会をやるようになったから多少は大丈夫じゃないですか?」

「そうだけど、だからって危険はないわけじゃないから。少なくとももう少し強くなってからの方がこっちも安心できるんだよね。だって、レント魔法の扱い下手くそだし。」

「うぐっ! そ、それは分かってますよ……だからこうしてダンジョンに潜らずに訓練してるんじゃないですか。」


下手なのはしょうがないじゃないか。

魔法と出会って1年半かそこらしか経ってないんだから。

これでも一応火魔法のレベルは4はあるんだぞ。

困った時は重唱頼みなのは否定できないけど、それでも初心者レベル超えてはいる。


「んー、じゃあ、とりあえずあと1週間みっちり訓練したらダンジョンに行ってみようか。」

「いいんですか!?」

「うん。でもとりあえず10階層までね。そこから先はまた違ってくるから。」

「違う? 何が違うんですか?」

「それは行けるようになってからのお楽しみってことで。まずは10階層を超えることだよ。ま、でもその前に訓練をみっちりとやるわけだけど。」

「分かってます。頑張りますよ。」

「うん。頑張ってね。じゃ、私はこっちだから。」


話してる間に視線も気にならなくなり、いつの間にか分かれ道まで来てしまっていたようだ。


「午後から訓練だから、忘れないようにね〜。」

「はい。」


さて、それじゃ帰るとしますか。



「ただいま。」

「おかえり。遅かったね。」

「何話した?」


宿に帰ると出迎えてくれたのは愛すべき嫁達。

俺たちが借りている部屋ということなので、ここにはセフィア、リリン、ルリエだけがいる。

普段ならレイダさんやシア達も一緒なのだが、どうしたんだろう?

でもまずはリリンの質問に答える方が先だな。


「リナさんとも恋人になったことを。後、アイリスさんのこともね。一応ケジメはつけないといけないからさ。」

「なるほど。」

「確かにその通りだね。でも、それなら一言言ってくれればいいのに。」

「いやまあ、ケジメだからね。俺1人で言うべきだと思ったんだ。」

「そっか。それならしょうがないか。」

「ところでさ、シア達はどうしたの? 蒼井なら二日酔いでダウンしているんだろうけど、他のみんなはどうしてる?」

「あー、えっと、実は、表には出してなかったけど、レイダさんも体調が優れなかったみたいで、いま部屋で寝てるんだよ。それでシアちゃん達はその看病をしてるの。」

「そ、そうか。」


まさかレイダさんまでダウンしてるとは。

セフィア達が大丈夫だったから他のみんなも大丈夫だと思ってたんだけどなぁ。

あ、でも、今は好都合か。


「そういえば、ここにくる間にアデラードさんと話してて、それで1週間みっちり訓練したら10階層までだけど、ダンジョンに潜っていいってさ。」

「本当!? みんなに知らせなきゃ……って、みんないないんだった。」

「レイダがいなくてよかった。多分ギルドに突撃してた。」

「あはは……ありそう。」


うん。

もしもここにレイダさんがいたら居ても立っても居られなくなって、即座に訓練しましょうとか言ってギルドに突撃してたと思う。

だから好都合だと思ったわけなんだけど。


「とりあえず、レイダさんにはもうしばらく黙っててね。」

「了解。」

「ん。」

「それがいいですよね。」


異議はなかった。

そこはある意味、安定の信頼感ってことかな。

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