第572話 苦労してるんだなぁ。的なお話

「いやー、食った食った。」

「あー美味しかった。」

「お腹いっぱいね。」


さすがに3人前はちょっと多かったけど、久しぶりの寿司なので全部美味しくいただいた。

それは蒼井とアカネも同様で、満足そうにお腹を撫でていたりする。


「生で食べて大丈夫なの? お腹壊したりしない?」

「ああ。多分大丈夫だろ。痛みにくいように冷却用の魔道具だってあるだろうし、それにアイテムボックス持ちの専属の運搬人を雇っているって話だからな。だから寄生虫なんかの心配もしなくてよかったし。」

「ええっ!? き、寄生虫!?」


寄生虫と聞いてセフィアが驚いている。

他のみんなも声に出してはいなくてもちゃんと驚いているみたいでびっくりしたって顔してる。

ユキノなんて、若干青ざめているくらいだ。

………なんでこいつが青ざめてんの?

セフィアやリリン、ルリエら嫁達がそうなるのなら分かるのだが、なんでこいつが?


「その通りです。アイテムボックスを通す事で寄生虫を弾く事が出来るんですよ。アイテムボックスには生き物入れることはできませんから。」

「え? 誰?」

「ここで働いているリューニアといいます。その、寄生虫と聞こえたので、このままだと店のイメージが悪くなるかと思い口を挟まさせていただきました。」

「あ、その、すみません。僕が大きな声で言っちゃったから…。」

「いえ、気にするのも仕方ない事ですから。」


飲食店で寄生虫なんて、どう考えてもアウトな単語だわ。

その辺配慮が足りなかったな。


「それで、説明の続きですが、スゥ・シーは歴代勇者が渇望してきた料理とされ、1500年前の書物にも書かれている程だとか。その関係で古くから調理方法はもちろん、衛生管理なども洗練されており、安全性は保障されています。当店でも、料理長がヤマトで修行を積んでいるので衛生管理は完璧です。」

「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます。」

「いえ、これも仕事ですので。それではごゆっくりどうぞ。」


ゆっくりも何も、俺はもう食べ終わってるんですけど……。

まあ、セフィア達のは寿司よりも遅れてきたからまだ少し残ってるけど、それでもゆっくりするほどじゃないよ?



お昼も食べ終わったのでギルドに向かう。

予定よりも10分ほど早く、今は1時20分頃だが、特にしたいこともないので少し早めに向かっている。

精々、通り道に何か興味を惹かれる店があれば寄るくらいかな。

………と、思ってたんだが、この辺は飲食店系が集まっているようで興味を惹かれる店があっても寄ろうとは思えずに、特に何もなくギルドに着いたよ。

時間、余ったなぁ。

ま、何時間も待つわけでもないし、適当に時間でも潰していればいいか。


「あら、随分と早いのですね。」

「それ、私たちが言うことじゃないと思うよ。」

「そうだね〜。そうなったのもお嬢が食べ歩きしたいって言って11時にクランホームを出たせいなんだけどね。」

「なっ!? ランだって乗り気だったじゃありませんか!」

「だってお嬢が奢ってくれるって言ってたし〜。」

「あ、あれはあなたが…」

「落ち着いて、ナタリア。ランも煽らないで。紅玉のみなさんも揃ったんですから。」


ナタリアさんを宥めるルキノさんを見て助け舟を出す。


「ちょっと時間が早いですが、全員揃ったんですし、受け取りに行きましょうか。ただ待つのも時間がもったいないですからね。」

「それもそうですわね。」


そうして天装さん達と一緒に受付の方に向かうが、その際にルキノさんが小さく頭を下げていた。

相変わらず苦労してるんだなぁ。

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