クリスマスパーティー2017 前編

「ジングルベール、ジングルベール、すっずが〜鳴る〜♪」

「随分と楽しそうだな、蒼井。」

「そりゃそうでしょ〜。何たって、もう直ぐクリスマスなんだから!」


今日は12月16日。

クリスマスまで1週間と少し。

俺も結構楽しみにしてるわけだし、こういうイベントが好きそうな蒼井が浮かれるのも当然といえば当然か。


「浮かれるのもいいが、ちゃんと仕事しないと。パーティーをするにしても金が必要なんだしさ。」

「えっ!? パーティーするの!?」

「さあな。街の方で何かしらのイベントがなければ多分やるだろ。」

「何してんの? 早く依頼を受けるわよ!」

「はえーよ! というか、ベタだな、おい!」


興味のある事には速攻で動くキャラっているけど、実際にこの目で見る事になるとは……。

人生いろんなことが起こるもんだな。



「ちょっ!? 何これ!? すごーい!」

「おぉ〜、飛んでるな〜。」


受けた依頼はスノウファウルという鶏の魔物の納品。

多分鶏だろう。

何故か飛んでるけど……。

この時期になるとこの鶏は大量発生するらしく、ランク関係なしに誰でも受けられるようになっている。

その報酬も1羽につき、1000リムなのでよっぽど狩らなければ生活資金にはできないが、今回はパーティー資金にするのでお手頃な依頼なのだ。


「しっかし、なんでだろうな。」

「ん? 何が?」

「なんか、この光景がすっごく馴染み深いような感覚に襲われるんだよ。」

「漫画かなんかで見たんじゃない?」

「それは無いと思うけど……ダメだ。思い出せん。まあ、どうでもいいか。既視感なんて大体そんなもんだしな。」

「ところでさ、あれって鶏よね?」

「見た限りはそうだな。」

「なら、沢山獲ろう! そんで余った分で沢山フライドチキンを作ろう!」


クリスマスにはフライドチキンってのは、某フライドチキン店がCMでやって広めたという噂があるが……まあ、言う必要はないよね。

美味ければそれでよしなのだ。


納品は50羽で自分達用が10羽。

蒼井の魔法銃が相性が良かったのかバンバン撃ち落としてかなり効率よく進めることができた。


ギルドに納品してこれからどうしようかと考えていたら、アデラードさんがやって来た。


「や。調子はどう?」

「どうもしませんよ。簡単な依頼ですから。」

「それもそっか。それで、さ。レント達って、クリスマスの予定とか、ある?」

「まだ決めてはいませんけど、ギルドや街で何かイベントをやらないんですか? ほら、前の七夕の時みたいな。」

「あー、うん。あるっちゃあるんだけど……。」

「へー。どんなのです?」

「えーと、貢ぎ合戦、かな。」

「貢ぎ合戦!?」

「うん。ギルドでパーティーを毎年してるんだけど……参加者って冒険者が大半なわけで、そうなると男性比率が多くなるんだよね。しかも恋人とかがいたらそっちの方を優先するから参加するのが独り身の冒険者ばっかりなんだよ。だから運営側として参加してる受付嬢と仲良くなろうとこの機会にプレゼントの雨あられなんだよ。」

「プレゼントする口実もありますしね。普段世話になってるとかそういうの。」

「うん。だから人によってはプレゼント額が合計で500万相当になったりする子もいるんだよ。」

「うっわ。冒険者が本気すぎる。」

「ちなみにそれって、アデラードさんも貰ったりしてるの?」

「セフィアちゃん。貰ってるような人間がいつまでも独り身だと思う?」

「ごめんなさい。」

「ま、まあ。今年は違うけどね! なんてったって私にはレントがいるから!」

「あ、はい。」

「それでさ、そういうイベントなわけだから一応既婚者や恋人がいたりすると参加は自粛するようにしてるんだよ。不倫や浮気はあんまり良くないからさ。いくら重婚が認められていても遊びでそういうのは、ね。」

「つまり、今年のアデラードさんは……。」

「うん。ギルマスになってから初めて抜けられるよ。………本当に辛かった。周りの子が貰ってるのを毎年見せつけられるのは……。」

「………今年のクリスマス、楽しみましょう。パーティーはアデラードさんの家でいいですか?」

「うん! うんうん! 勿論だよ! 絶対に楽しいものにしようね!」

「何か持ってくものってありますか? 例えば、ツリー用のオーナメントとか、料理とか。」

「プレゼント交換もするよね!?」

「それいいよ、ユウキ! プレゼント交換もやろう!」

「じゃあ、プレゼント交換用のプレゼントは用意するとして、料理とかはどうしますか?」

「うーん。ウチのメイド達が作ってくれるとは思うけど、どうせなら自分達で準備した方が楽しいよね! だから材料だけは用意しておくからみんなで楽しく作ろう!」

「分かりました。集合時間は何時くらいにしますか?」

「午後2時で。準備もするわけだしさ。」

「そうですね。では、24日の2時に向かいますね。」

「うん! あー、楽しみだなー。」

「あ、リナさんとか、アイリスさんとか、他にも人を呼んでもいいですか?」

「いいよ! 多い方が楽しいもんね!」


アデラードさんがとてもはしゃいでいるし、これまでで1番大人数でパーティーになるな。

うん。

今年のクリスマスはこれまで以上に楽しくなりそうだ。

早くクリスマスにならないかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る