第545話 ジェイルだしね。的なお話
ルキノさんのオロオロも収まり、ナタリアさんとランさんの言葉の応酬………というか、互いの気にしてるところの抉り合いは一旦終了して夕食を食べるのに戻る。
このままやっても埒があかないどころか精神的に傷つくだけだという結論に至ったからだ。
話を横で聞いてて知った事は、男は全てお断りなクランを作った所為でナタリアさんが男嫌いだと思われていて誰も近寄らないとか、ランさんはランさんで迷宮都市に来たばかりの頃に言い寄る男をバッサリと斬れ味良く振ったそうで、それが原因で今では女好きという噂が一人歩きしているとか。
後、ナタリアさんはクランメンバー全員とそういう関係という噂だとか。
実際は違うらしいが。
「うぅ……殿方の前で私は何を……。」
「あはは……売り言葉に買い言葉で白熱させちゃったね……ごめん。この事は出来れば内緒にしてくれないかな?」
「別にそれは構わないんですけど……既に周りには知られているのでは?」
「それはそうなんだけど、どこで尾ひれが付くか分からないから……もう、これ以上余計な噂は……。」
「わ、分かりました……。」
よっぽど嫌なことがあったのだろう。
あのランさんが顔を真っ青にしている。
まあ、あのなんて言っても接した時間なんてほんの少しなんだけどさ。
どんな噂が立ったのから気になるけど、多分地雷だから自重する。
夕食も終えて軽く話をしてから明日に備えて早めに寝る。
夜番の順番は俺達が最後なので速やかに寝るのだ。
だからアデラードさん。
今は寝かせてください。
お願いします。
◇
ルキノさんが交代を伝える声で目を覚ます。
「くぁ〜。まだ眠いな。」
みんなを起こして見張りをする。
魔物避けの魔道具を使ってても全ての魔物に効果があるわけではないし、人にも効かない。
なので盗賊がやって来る可能性も否定できないので夜番は必要なのだ。
今ここには女の人がたくさんいるのだから盗賊からしたら格好の獲物なのだ。
まあ、ここで盗賊をする馬鹿なんてそうそういないだろうけどさ。
ここ結構強い魔物が出るし。
だから基本暇。
あまりに暇なので嫁達が料理を始めてしまった。
魔物か何かが来てもリリンの気配察知で分かるからこそできることだけど、ギルド職員の仕事を取ってまでする事かな?
ま、セフィアもリリンも楽しそうだし別にいいか。
嫁の幸せが俺の幸せです。
「ふわぁ〜。あれ? セフィア達が朝ごはんの用意しているの?」
アデラードさんがやって来てそんなことを聞いて来る。
そのセリフ自体はおかしなところは何にもない。
おかしいのは……
「なんで……そんなところからやって来るんですか?」
森の奥からやって来た。
少なくとも、俺達が夜番をしている時に出掛けるなんて事はなかった。
つまり俺達の夜番の前に出ていた事になるんだけど……一体何をしていたんだ?
「ちょっと先の方を見てきたんだ。軽く見てきた範囲では見つからなかったからまだまだ先は長そうだね。本当は今日中にケリをつけたかったんだけど……。」
「そうなんですか。」
きっちりと仕事はしてたみたいだ。
「でも、そういうのって普通斥候の人がやりません? ランさんみたいな。」
「全ての原因がジェイル家とは限らないからさ。私が先に探っておけば後はそこに向かっていけばいいと思ったんだけど、そう上手くはいかないか。」
それは仕方ないと思う。
願ったら願った事がなんでも叶うなんてありはしないのだから。
「でも、アデラードさんが探した範囲は除外できるから今日は一気に探索が進みますよ。ひょっとしたら今日中にも終わるかもですし。」
「そうだね。」
「というわけで、今は朝食を食べましょう。もうそろそろできると思いますし。」
「うん。」
今日中に終わればいいな。
アカネも、こんな事さっさと終わらせたいだろうし。
アカネの為にも、さっさと牢獄に送ってやろう。
ジェイルだしね。
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