第539話 ちょいと恥ずかしい。的なお話

それじゃ行くかと意気込んで宿を出る。

そしてギルド……………の前を通過して革製品のお店であるリスティーンへ。

防具、受け取るの忘れてた。

てへっ!


扉の所にはclosedの看板? なんかあの、回して開店と閉店を知らせる奴が閉店中をお知らせしている。

まあ、当然だよね。

こんな早朝に店を開けるなんてあり得ないし、早朝から防具を受け取ろうとするアホなんてそうそういないだろ。

まあ、そのアホは俺なのだが……。

流石に防具無しで行くなんて危ないのでここは申し訳ないが、起きてもらうしかないか。

中に入れれば楽なのだが……。


「あれ、開いてる?」

「あ、本当だ……。」

「不用心。」

「確かにそうね。でも、今は助かるし中に入らせてもらいましょ。この事については後できっちりと言うとしてもね。」


アカネの言う通りなので中に入る。

すると、工房部からは明かりが漏れ小さな声が聞こえてくる。


「もう時間が無いっす。急がないと。これが無いとレントさん達が困ってしまうっす。」


どうやら徹夜で作業していたようだ。

別に間に合わないならそれでも良かったんだけど……。

というか、ヤバイなこれ。


「よし! 後はここを縫って……完成っす! 急いで届けに行かないと……。」


あ、こっちに来る。


「れ、レントさん!? どうしてここに!?」

「いや、防具を受け取ろうと思って。で、ドアが開いてたから申し訳ないと思いつつも中に入ったら作業してたんでな。ちょっと待たせてもらってた。」

「あ、そ、そっすか……。ちょっと恥ずかしいっすね。こんな、頭もボサボサで……。」

「そうかな? 職人らしい姿だと思うけど。それに、そういう頑張っている人ってかっこいいよね。」

「あ……ありがとっす……。」

「それが頼んでいた奴?」

「そ、そっす! どうぞっす!」

「ありがとね。いくら?」

「いえいえ、そんなのいらないっすよ! 大体、既にレントさんから借りてるのにその上で代金貰うなんて出来ないっすよ!」

「え? 30万? 分かった。」

「言ってないっすよ!」

「まあまあ。実際アレを使った製品が出来るまでにどれだけかかるか分からないし、いつ売れるかも分からないんでしょ。だったら今は受け取っといてよ。無理されても困るし。」

「うぅ……そう言うのなら、受け取らせて貰うっす。でも、30万は貰いすぎっす。4人なので1人2万の8万っす。」

「了解。はいこれ。」

「確かに受け取ったっす。」

「あ、そうそう。鍵、掛けといたほうがいいよ。今回は俺達だったから良かったけど、ロクデモナイ奴が入り込んでくるかもしれないからさ。」

「それは、ちょっと慌ててて鍵をかけ忘れただけっす。普段はこんな事ないんすよ?」

「それならいいんだけど。アイリスさん、かわいいからちょっと心配になってね。」

「えうあへっ!? か、かわっ!?」

「じゃあ、そろそろ行くね。」

「あ……絶対、帰ってきてくださいっすよ!」

「当然!」


受け取った防具を着込んでギルドへと向かう。

その途中、セフィアが話しかけて来る。

なんだろ?


「ねぇ、レント。さっきアイリスさんと話してる時、ちょっと普段と違わなかった? 気さくというか……。ひょっとして、好きになっちゃった?」

「あー、うん。まあ、元から好感は持ててたし、その上であんなの聞いちゃったら、ね。我ながらちょろいとは思うんだけど、ああいうのに弱いんだよ、俺。」

「そっか。じゃあ、次はリナさんだね。」

「じゃあじゃないから! 大体、今はそんなこと考える場合じゃないだろ。」

「そうだね。そういうのは帰ってきてからだよね。あ、でも最初はシアちゃんからね。」

「何でシア?」

「だって、2人っきりでデートするんでしょ?」

「……………どこでそれを?」

「前にシアちゃんが嬉しそうに話してたよ?」

「マジで?」

「うん。マジマジ。」

「はぁ〜。まあ、隠すようなことじゃないんだけどさ。でも1人だけってのはなんかみんなに悪いような気がしてな。」

「気にすることないのに。でも、悪いと思うのならみんな一緒でいいから今度どっかに遊びに連れてってね。」

「分かった。頑張るよ。」

「うん!」

「コホン! あー、盛り上がってるところ悪いんだけど、ギルド通り過ぎてるわよ。」

「「あ……。」」


いつの間にか通り過ぎていたみたいでアカネがギルドの前で教えてくれた。

で、そそくさと戻るが、ちょいと恥ずかしい。

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