第540話 一体、何が起きているんだ? 的なお話
「遅い!5分の遅刻だよ。」
「すみません。防具を受け取ってたので少し遅れました。」
「ふーん。………ま、日付を知らせてからあんまり時間がなかったし今回は仕方ないか。早くこっち来て。最終確認をするから。」
「はい。」
最終確認といっても点呼をしたり目的や依頼についての確認をしたり同伴するギルド職員の紹介とかをする。
情報のズレは時として命取りになるからな。
そして行軍前のトイレ休憩。
隊列を乱すので極力拠点となる場所に着くまでは行かないようにしないと。
用を済ませてみんなを待っているとランさんが話しかけて来た。
「ひょっとして、私のせいで受け取るのが遅れた?」
「へ?」
「いや、前にリスティーンで会ったからその時に防具のメンテを頼んだんだよね? だから私のを先にしたから遅れたのかなって。」
「そうです! ………………って言ったらどうします?」
「どうもしないよ。こういうのは早い者勝ちだからね。だから謝りはするけど、それでどうこうというつもりはないよ。」
「俺も何かしてもらうつもりなんてないです。それに、間に合わなくても仕方ないと思ってたのにアイリスさんが頑張って間に合わせてくれたんです。それなのにここで何かしてもらったらアイリスさんに申し訳ないです。」
「ん? んぅ? ………ま、まあ、気にしてないのなら別にいいんだ。(何あの慈しむような顔。ひょっとして……)」
ランさんが去っていくとタイミング良くみんなが戻って来た。
「誰かと話してた?」
「ランさんがね、遅れたのは自分のせいかなって言いに来たんだよ。」
「そうなんだ。……なんか、あの人ってよく分からないよね? 明るかったり、怖かったり謎があるっていうか……。」
「情報を集めたりしてるから本心を悟られないようにしてるんじゃないかな? 普段からそうしているから癖がついてるとかさ。」
「……そう、なのかな?」
「多分そう。」
「そうだよね。」
リリンが何やら柱の影を見てるがそこには誰もいないが……まあ、いいや。
「みんな揃ったし戻ろうか。」
「そうだね。」
みんなの元に戻るとその空気はピリリと引き締まっており、アデラードさんも普段の陽気な感じは微塵も感じられない。
そんな空気を感じて俺も引き締めてかからないとという気になる。
「それじゃ、行こうか。」
「「「「はい!」」」」
アデラードさんの掛け声にみんなが応えた。
◇
移動中、周囲を警戒しつつ森の中を進んでいく。
ひとまずの目的地は森の中を流れる川の付近。
なんらかの魔物が原因の場合はそこで痕跡が見つからないか? ということらしい。
生き物ならば水を摂らなければ生きていけないのだから。
しかし、ここで当たりが出るとは限らないことも理解している。
俺達はまだ行ったことはないが、奥の方にも川があり、湧き水が出てるところがあるらしい。
魔物の襲撃もそこそこに川辺へとたどり着く。
とりあえず上流下流に別れて痕跡を探す手筈だったが、その必要はなかった。
焚き火の跡があったから。
普通ならば冒険者が、と考えるところだが、生憎とここは迷宮都市で通常依頼で森に入る事は少ないし、何より、その焚き火の跡が踏み荒らされており、その周囲には血の跡が残っているのだから。
「これは一体……?」
「分からない。ひとまずアデラードさんに指示を仰ごう。」
一体、何が起きているんだ?
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