第535話 言ってくるんだろうなぁ。的なお話
先ずはセフィア達のお見舞いの品。
何がいいかな………こういう時の定番ってやっぱり果物だよね。
奇をてらってスベるよりかは定番の品の方がいいよね?
でも、普通だと呆れられたらどうしよう………い、いや、セフィア達はそんな事で呆れたりしない!
というわけで果物にしよう。
さて、何がいいかな?
カルムかアカゴかグレープにアポー、バナナもあるな。
リプの実も売ってるのか。
うーん………よし。
全部買おう。
果物の盛り合わせみたいでいい感じだな。
「ふんふんふふ〜ん♪ おばちゃーん、いつものちょうだーい!」
「あいよ! 今日も可愛いね、ランちゃん。」
「でしょー。えへへ。って、あ、また会ったねーレント。」
「どうも。」
なんで突然頻繁に会うようになったのだろうか?
「なんだい、2人は知り合いかい?」
「前に仕事でね。」
「そうなのか………そういえば、いつものセフィアちゃん達はどうしたんだい? 今日は何故かギルドマスターも一緒にいるし。」
「レントもよく来るの?」
「時々さね。いつも女の子を沢山連れてるから覚えちゃったのさ。」
ランさんからの視線が痛い……。
「い、いや、パーティメンバーと一緒ってだけで……別に不特定多数の人とってわけじゃないですよ?」
「ふーん。」
「……………。」
「ま、分かってたけどね。レントがどういう人間かは、この前の仕事でなんとなく分かったし。それに色々調べたし。」
「………………ん? 調べた?」
今何やら不穏な単語が聞こえたんだけど、気のせいだよね?
「ああ、うん。お嬢が貴族様だからね。変な輩が近づくこともあるからそれなりには調べてるよ。顔を合わせてその場で仕事って時以外は一緒に仕事する相手は調べるようにしてる。」
今俺はどんな顔をしているのだろうか。
そういう情報を集めるのは大事だし、斥候であるランさんもそういう事をしててもおかしくはない。
しかし、いざ実際にそういう事をされたと聞かされると、どう対応していいか……。
「でも、レントってなんか普通の冒険者と比べて情報が少ないんだよね。なんでかな?」
ランさんが笑顔を向けて聞いてくるが、その目は全然笑ってなかった。
「情報が少ないも何も、この迷宮都市に来たのだってまだ半年も経ってないですし、それにダンジョンにも全然潜ってないから冒険者としてあまり名が売れないんでしょ。」
「そうだとしても、その若さでBランクなのに初めて会うまでは女を侍らす新人が現れたくらいしか情報がなかった。それはおかしいよね? Bランク冒険者がやって来たのに、どういう風にしてBランクになったのか、そういう情報は集まらなかった。出身地すら出てこなかったしね。」
「え? それはおかしいですよ。だって、俺が昇格したのって毎回イレギュラーが起きてるから、情報がないなんて……ありえない。」
「へ? なんで、レントがそう言うの?」
「だって別に隠してるつもりもなかったですし。オークキング亜種が現れたとか、モンスターパレードに巻き込まれたとか、どう考えても隠せるものでもないですし。」
「どういうこと……? なんでそれで情報が何もないの? そんなの、絶対噂くらいにはなっててもおかしくないのに……。」
それだけじゃない。
エルカでは親衛隊に勝負を挑まれてそれなりに耳目を集めていただろうし、昇格試験の試験官だってやった事もある。
リリンはカインの初心者ダンジョンで最速レコードを更新した。
それでなんで何も情報がないんだ?
まるで、誰かが意図的に情報を隠蔽しているような…………………………あれ?
なんか、1人心当たりがあるんだけど?
あの人、アリシアさんなら記憶に残らないようになんらかの処置を施すくらいわけないだろうし。
多分、そうなのだろう。
加護や恩恵がばれないようにという配慮なのかな。
「ランちゃんがクランの為に情報を集めているのは知っているけど、店先ではやめてくれないかね?」
「あ、ごめんねおばちゃん。それとレントも。色々と困惑させちゃったよね?」
「気にしてませんよ。それよりも、今度何か気になることがあったら調べてくれません? 俺達って情報収集はあまり得意じゃないので、そういう繋がりがあるとすごく助かるんです。もちろんその時は代金を払いますし。」
「君、変わってるね。」
「へ?」
「ううん。なんでも。それと、その話はいざという時になったらその時に聞いて。仲良くなってたら聞くかもだからさ。」
「分かりました。それじゃ、俺達はこれで。」
「うん。じゃあ、また明日ね。」
その後、レイちゃんの為のお土産も買って帰った。
セフィア達も薬が効いたのかだいぶ良くなっていたし、これなら明日は問題ないかな。
でも、アデラードさんは今日もまた飲もうとか言ってくるんだろうなぁ。
〜ラン視点〜
本当に、変な子。
普通、自分の事を調べられたら嫌な顔をするのに、レントは驚いてはいても、嫌だって感じはしなかったし、何より、自分の情報がないことにおかしいって……。
本当に、面白い子だ。
今度の依頼ではもう少し、仲良くなれないかな。
あんな面白い子、そうそう会えるもんじゃないしね。
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