第516話 大きかったです。的なお話

コース料理も残すはデザートのみとなった。

なったはいいのだが……ちょっと物足りない。

いや、美味しかったよ。

親戚の結婚式の時に出たホテルの料理と比べても遜色ないくらいに、ひょっとしたらそれ以上に美味しかったよ。

でも、冒険者の腹を満たすには量が足りない。

こりゃ帰ったら何か食ったほうがいいかな。

とか思ってたら、なんかいっぱい出て来た。


「物足りないって人もいると思うからね。ここからは好きな物を食べていいからね。」


まさかのバイキング形式。

でもどうせなら最初からそうすればいいのに。

とりあえず唐揚げから……


「どうかな、アイリスさん?」

「あ、どれもこれも美味しかったっすけど……なんで急にこんな?」

「美味しいお肉が手に入ったからね。」

「あ、そうなんすか。ところで、それってなんの肉っすか?」

「タイラントグランドレックス。」

「うぇえー!? れ、レックスっすか!? え、ひょっとしてこれも……?」

「うん。そうだね。ちなみにそれ、本来の生息域から外れた所で出て来たやつで今度調査隊を出す事になってるから。」


ちょっ!?

なんでここでそんなこと言うの!?


「な、なんで自分にそんなこと言うんっすか!?」

「いやだって、今度レックスの皮とか売りに出すし。その際にある程度売り出す先とか決めていた方が情報操作しやすいんだもん。」

「それって、つまり……」

「うん。だから、買ってね?」

「うぅ……わ、分かりましたっす。買わせていただくっす。」

「ありがとね。あ、表向きではどこかで情報を掴んだアイリスがいち早くギルドにやって来て交渉したって事にするから。」


事にするって、既に決めてるのかよ。

なんかアイリスさんが商品が売れるまでの食費どうしようとか言ってるんだけど……。

え、なに?

そんなにやばいの?

レックスは全部で大体2000万くらいで、その4分の1と仮定して500万。

それにギルドの手数料やらなんやらを含めて、そこからさらに値が上がるから………700万くらい?

いきなり700万くらいが無くなるとなると、確かにヤバイかも。

これ、俺が誘わなければこんな事にはならなかったのかな?

もしもそうならと考えると…………うん。

売れるまでの間援助しよう。

無利子無担保無期限で食費を貸そう。

大丈夫。

アイリスさんならきっと返してくれる。

最悪返ってこなくてもいい。


「えと、大丈夫ですか、アイリスさん。」

「大丈夫じゃないっす。お店の資金がごっそり無くなるっす…………明日から1日1食になる………。」

「あー、お金貸しましょうか?」

「え………い、いや、それは流石に申し訳ないっす。」

「でも、アイリスさんの店って、基本、受注してから作るから収益が出るまでに結構時間がかかりますよね?」

「うぐっ! ぜ、全部無くなるわけじゃないし………多分なんとか、なる……はずっす。」

「もう既にすごい心配なんだけど。というわけではいこれ。」

「うぅ………ありがとうっす。」


アイリスさんにお金入りの皮袋を渡す。

ちなみに中には50万リム入ってたりします。

制作にどのくらい時間かかるか分からないし、調査とか色々あるから次いつ会えるか分からないから多めにね。


その後、食べたり駄弁ったりゲームしたりしているうちに結構時間が経ってしまった。

というか、10時47分は長居しすぎな気がする。


「えーと、それじゃそろそろ……」

「あ、お風呂と部屋の準備は済んでるから案内してもらって。」


逃げれないようです。

いや、逃げるつもりがあるとかじゃないけど、なんかこう、心理的に。


メイドさんに案内された部屋は全員個室でベッドもふかふかでした。

え、なにこれ?

貴族って、こんな部屋に住んでんの?


「お風呂の用意は済んでいますが、申し訳ないのですが、小浴場でもよろしいでしょうか? 流石に男性と女性で同じ浴場というわけにはいかないものですから……。」

「え、あ、はい。大丈夫です。」


小浴場と言いつつ、カインの家の風呂よりも大きかったです。

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