第517話 感謝ですね。的なお話

風呂から上がって部屋に戻ると何故かみんながいた。

なんで?

もう遅いし寝たいんだけど……まあ、いいや。

ちょうどみんな集まってるし指名依頼について話すか。


「何故みんながいるのかは分からないが、ちょうどいいんで指名依頼について話そうと思う。」

「でも、それって私達に話していいんですか?」

「ちゃんとアデラードさんに許可もらったから大丈夫だよ。」

「そうなんですか。」

「そうなんだ。だから安心していいよ。」


続けて依頼の内容を説明していく。

その際にセフィアがちょいちょい補足説明してくれる。

非常に助かります。


「5日も居ないんですね……ちょっと、寂しいです。」

「実はレントもね、それを聞いた時に同じように寂しいって言ってたんだよ。」

「そうなんですか!?」

「あー、まあ、な。」


ちょっと恥ずかしい。


「そ、それよりも、まだちょっと先だけど、俺達が居ない間の事だけど、どうするつもり?」

「どうって?」

「いや、やっぱり心配なわけで……危ない目に合わないかとか、変な奴らに絡まれないかとか、俺もアデラードさんも居ないから調子乗る奴らが出てくるかもしれないし。」

「大丈夫ですよ。いざとなったらエリーナさんを頼りますし。」

「まあ、普通に訓練とかしてるわよ。主力がいないのにダンジョンに潜ったりとか危なくてできないし。それよりも………なんで、私は呼ばれないのよ!」

「どうどう。」


吠える蒼井をシアがなだめる。

というかそれ、馬をなだめるやつじゃない?


「それは本人に聞いてみない事には………まあ、蒼井はうるさいから?」

「なんだとー!」

「ほら。」

「うぐっ!」

「でも、確かに気になるな。俺とセフィア、リリンはランクが高いからで、アカネはC+だからだろうけど、でもそれはシアもそうだし………なんでだろう?」

「あれ? 私は?」

「それにエルフであるシアなら森の中での調査には向いていると思うし……。」

「無視!?」

「え、ああ、うん。うるさいからじゃないかな?」

「天丼!?」

「まあ、冗談はさておき……。」

「置いとかれた!?」

「蒼井に関しては大方、武器が特殊だから天装さんと合わせにくいからだろうけど、シアはなんでだろうな?」

「マトモな理由キタ!」

「蒼井うるさい。」

「あ、ごめんなさい……。」


意外と素直だな。

まあ、こいつもただ騒ぐだけの馬鹿じゃないしな。

ただ騒ぐだけの馬鹿はクルトに任せよう。


「ちょっと気になるけど、もう遅いしそろそろ寝よう。ところでさ、なんでみんな揃ってたの?」

「ああ。それは指名依頼の事が気になってたからよ。」

「別にセフィア達に聞けばいいだろ。」

「そうだけど、リーダーはあんただしね。」

「そっか。」


蒼井がまともだ。

でも、普段はふざけられて認められてないかもとかちらっと考えたこともあったけど、認められてたんだな。


「それじゃ、また明日な。」

「また明日。」


みんなが自分達にあてがわれた部屋へと帰っていくと急に静かになる。

なんか、寂しい……。


「で、メイドさんはなんで部屋に入って来たのかな?」

「いえ、夜伽のお相手をと思いまして。」

「間に合ってます!!」


とんでもない理由だった!

そんなの望んでないよ!


「そうですか……残念です。もしも食いつくようならアデラード様には不適切として排除していたものを……。」

「あなたにそれをする権利があるのかどうかちょっと気になるけど、そんなのはどうでもいい。最初は勢いだったけど、言葉を違えるつもりはない。今は絶対にアデラードさんを迎えにいこうと考えてるから。だからもしも邪魔するなら、かかってこい。全部返り討ちにしてやる!」

「………そうですか。」


そして去っていくメイドさん………言っちゃったよー。

言ってしまったよー。

でも、気持ちに嘘偽りはない。



〜メイド視点〜


レント様の部屋を出た私はアデラード様に事の次第を報告します。


「だ、そうですよ。良かったですね、アデラード様。」

「うわわわわ……。」

「ちょっと本心を引き出そうとしたのですが、結果は最上でしたね。おめでとうございます。」

「う、うん。ありがとう。嫌な役やらせてごめんね。」

「いえ、これもメイドの務めですから。」


本当に嬉しそうなアデラード様。

焚き付けて本音を聞き出そうとして良かったです。

ずっと心配してましたから。

アデラード様は強すぎるが故に、その容姿故に異性と触れ合う機会が無かったですから。

レント・カザミ様には感謝ですね。

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