五百話突破記念特別編 (1)

宿レイランの部屋のドアを開けるとそこは、よく分からないパーティー会場だった。

!?!?!?

え、なにこれ?

どゆこと?


「ささ、レントさん。こちらへ。既にみなさん集まってますし、早く着替えてください。」

「え、なに? どゆことなの!? ねぇ、アリシアさん? 本当にどういうことなのさ!?」


混乱し、状況を把握しようとする俺を無視して衣装部屋と思しき場所へと連行された。


「本当になんなの!?」

「今日は五百話突破記念パーティーですよ。」

「なんの!?」

「なんのって、この作品のですよ。それにそんな細かいことなんてどうでもいいじゃないですか。」

「全然細かくなん……か……」


あれ、なんか、アリシアさんの目が……怪しく……光って……


「ソウデスヨネ。細かいことなんてどうでもいいですよね。」

「そうですよ。はい、着替えますよー。ばんざーい。」

「ばんざーい。」


あれ、なんで俺、アリシアさんに着替えさせられてるんだろう。

ま、いっか。


(最近はタイミングが合わなくてなかなか見ることができませんでしたからね。この機会にたっぷりと、レントさんの成長具合を確かめましょう。)


「あれ、何か言いました?」

「いいえ、何も。」



着替え終わった俺はパーティー会場へ入る。

しっかし、よく見てみればすげーな、ここ。

天井はすごく高いし、シャンデリアはぶら下がってるし、テーブルもたくさんあって料理は充実。

壁際には給仕の人が控えててお盆の上にお酒のようなものを載せた人が会場内を歩いてる。

あんなの、映画とかでしか見たことねぇぞ。


「シャンパンをどうぞ。」

「俺は酒は…………いや、折角だし、頂こうかな。」

「かしこまりました。」


へぇー。

初めて飲んだけど、シャンパンってこんな味なんだな。


「よお、レント。遅かったじゃねぇか。」

「アベルさん? なんでここに?」

「なんでって、こんなめでたい日に来ないなんてあるわけないだろ。」

「それもそうですよね。」

「それでどうだ、最近は。嫁さんと仲良くやってるか?」

「勿論ですよ。」

「そうか。俺もこの間結婚してよ、トリアと一緒に帰って飯食って、くつろいでる時にふと思うんだ。こういう事が幸せなんだって。お前も分かるか?」

「分かりますよ。ただいまって言うと大好きな人がおかえりって言ってくれるのって、いいですよね。」

「ああ。そうだな。」


そうか。

アベルさん、ついに結婚したんだ。


「レ〜ン〜ト〜。ここにいたのか〜。ヒック。」

「げっ、リィナ。わ、悪い、レント。俺ちょーっと、挨拶してない人がいることを思い出した。というわけで、じゃあな!」

「ちょっ、アベルさん!? じゃあなじゃないですよ!?」


アベルさんが突然逃げ出した。

というか、リィナさん酒臭っ!


「見つけたぞレント〜。お前〜、私と結婚しろー。」

「はいぃ!?」

「お前がいなくなってからも、私には良い出会いなどなかった。Aランクとなった今ではゴリラですら近づいて来ぬようになり、豚も現れなかった。そんな時にふと思ったのだ。ヒック。私は良い出会いに恵まれていないのではない。既に出会っているのだと。その時に浮かんだのがお前だ。ウイッ。弟子の旦那というのもどうかと思うが、お前以上の相手は浮かばなかった。」

「いえ、あの、そういう事は酔った勢いではなく……そ、それにみんなに聞かないと……。」

「なんだと!? お前も私は行き遅れだと言うつもりなのか!」

「言ってませーーん!!」


まごう事なき酔っ払いだ。

この人とまともな対話なんて出来るわけない。


「ぐすっ! どうせ私なんて、こそこそと魔物を追い回すしか取り柄なんてないんだ……。」


情緒不安定すぎる……


「そ、そんな事ないですよ。リィナさん美人だしスタイルいいじゃないですか。」

「ヒック。じゃあ、抱いてくれるか?」

「ええーーー!? なんでそうなるんですか!?」

「なんだとぉ!? お前は私を抱けないと……………………。」

「リィナさん? っちょ、大丈夫ですか!?」

「すー、すー。」

「………寝てるし。」


突然糸が切れたように倒れたので慌てて駆け寄ってみれば、寝ていた。

色々言いたい事はあるが、取り敢えず、今はこれだけ。

お胸さんが柔らかいです。


「どうしたのレント?」

「あ、セフィア。」

「って、リィナさん? レント……………がんばってね!」

「ちょっ、セフィア!? 何言ってんの!?」


抱きとめている格好の俺。

普通の嫁なら何してる!? って怒るところだが、俺の嫁は一味違う。

リィナさんはある程度身内として見られているからか嫉妬はせず、むしろそういう関係になれというスタンスのようだ。

いや、違うからね。

全然そういう………うん。

そういうのじゃないからね。

抱いてくれとか言われたけど、そういうのじゃないからね。


「実はかくかくしかじかで。」

「そっか。酔っ払っていたリィナさんに絡まれたけど、途中で寝ちゃったと。」

「通じた!?」


以前はまだと言っていたけど、まさか本当に通じるようになるとは……。


「というのは冗談で、本当は見てたんだけどね。」

「なぁんだ…………いや、それならなんであんなことを?」

「んー。あのまま行くのならそれでもいいかなって思って。」

「いや、止めてよ。」

「あははは。まあ、このままというのもあまり良くないし……すみません。この人を休ませたいんですけど。」

「ああ。そういう事ならこちらへどうぞ。」

「じゃあ、僕はリィナさんを休ませてくるから、また後でね。」

「おう。」


リィナさんを連れて行くセフィア。

それはいいんだが、まだパーティーも始まってないのに、なんかもう疲れたよ。

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