第507話 気のせいだろうか…的なお話

頑張ると意気込んだはいいものの、やる事は地味だよなぁ。

水をちゃぷんと生み出す。

そのままバシャリと落ちる。

それをひたすらに繰り返す。

今必要なのは魔力のロスなく魔法を構築する事。

だから一番最初の水を作るのを繰り返している。


ーーバシャリ、バシャン、バシャッ、バシャッ、バシャン、バシャッ、バシャリ


退屈だ。

魔力効率を上げる為に集中しなければいけないのだが、やる事が単調な為に集中力が持続しない。

……………ちょっと、攻撃魔法の練習しちゃダメかな?

いや、やろう。

だってつまんないしこのままじゃ魔力だけを無駄にするだけだ。

だったら、少しくらいやってもいいよね。


「は!」


ーーバシャン


ダメだこりゃ。

全然スピードが出なくて的を破壊するまでには至らない。

火魔法なら多少遅くとも燃やせるから攻撃できる。

でも、水魔法は燃やせないからスピードを上げて威力を上げないといけない。

うーむ。

どうしたらいいのかな。

蒼井は、どうしてるのかな? と、思って横を見てみれば首をひねってた。

ああ。

流石のこいつも上手くいってないのか。


再び自分の訓練に戻るも、上手くいかない。

的に当たるたびに鳴るバシャンという音のせいで気が滅入るし。

なんかね、バシャンって鳴るたびに、はい、しっぱーい! って突きつけられているみたいでやる気が削がれていくんだよ。

うん。

このまま続けてもいい結果には繋がらないと思うしちょっと休もう。

具体的に何分とか決めてないけど、ちょっとだけ。


ギルドの中に入って雨具を脱ぐ。

とりあえず、雨と風で少し下がった体温を上げる為にギルド特製スープを飲もう。

ふぅ。

あったまる〜。

やっぱり美味しい。



しっかりと休んだ事だし、訓練を再開しようかね。

まず用意するのは木桶。

そこに生み出した水を入れます。

そして取り出したるは金属製のフォーク。

これを木桶の中にちゃぽんと。

金属製だから沈むので、それを水を操って浮かせたり回したり、出来たらなぁ。

全然上手くいかない。

浮いたと思ったら木桶を飛び出したり、回そうと思ったら水がバッチャバッチャとこぼれたり。


……………訓練の内容に一貫性がないと言われそう。

でも仕方ないじゃないか。

目に見えて成果が出ないとモチベーションは上がらないし、気だけが滅入ってくるんだから。

だったら、一貫性がなくとも訓練ができるだけマシ。

ということにしとこう。


「ちょっと、今度はサボり………って、何してんの?」

「いや、遊びながら出来ないかと思って。」

「はぁ。つまらないのは分かるけど、ちゃんとやらないと……ほら。外に行くよ。」


アデラードさんに連行される俺。

圧倒的ステータス差の前には抵抗なんて無理。

というわけでまた雨の降るお外へ。


「最初は発動速度とか考えなくていいから魔力効率を上げることを考えて。ユウキも力を溜めることを意識して。」


俺が真面目に不真面目な感じで訓練をしていたからか、アデラードさんが付きっきりで教えてくれる。


「レントは魔力を抑えて。ただでさえロスがあるのに増やしてどうするの! ユウキは範囲が大きすぎ。それじゃ力が分散して効果が出ないよ!」


いい加減な時が多いものの、やはりギルドマスターなんかしてるだけあってその教えは的確。

メキメキと上達……なんてのは物語の中だが、少しずつ良くなっていってるというのは実感できる。

それに教えられてるからダレるわけにはいかないから集中できてるし、やっぱり教わってる方が効率いいな。


その後、訓練が終わるまでアデラードさんはこっちでしばらく教えたかと思えばセフィアルリエ達のところに向かったり、セフィア達を教えたりとせわしなく動いていた。

お疲れ様です。


でもさ、ギルマスの仕事よりも働いてるような気がするのは気のせいだろうか…

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