第497話 美味しいからね。的なお話
「う〜、雨の日なんて誰もこないし暇だよ〜。こんな日に仕事なんて完全に貧乏くじだよ〜。」
ギルドに入って早々、リナさんがだれてた。
受付カウンターにつっぷしてぐでーってしてる。
完全につっぷしてるから、こっちに気づいてないようだ。
よし。
ここはちょいと、からかおうかな。
「そっか〜、俺の担当は貧乏くじなのか〜。残念だな〜。というか、貧乏くじってことはもう俺のことなんか好きでもなんでもないんだ〜。」
「れれれれ、れれれんとさん!?」
だれがれれれんとだ。
「レントさんの担当は全然貧乏くじじゃないです。むしろ大当たり! 一等賞3億キャリーオーバー付きです!」
「ぷっ! なんですか、それ。」
「あ、あははは……。」
テンパって訳のわからないことを言ってる。
この世界にもキャリーオーバーって概念あるんですね。
「えと、それで今日はなんの御用でしょうか?」
「アデラードさんは今大丈夫かな?」
ギルドマスターを気軽に呼ぶ一般冒険者ってどうかと思うけど。
「あ、それが、朝から幹部クラスの人達を連れて会議をしていて、いつ戻ってくるかは……。」
「あ、そうなんですか……。うーん。どうしようかな。」
「どうしたんですか?」
「いや、昨日は雨天時での戦闘訓練をするってアデラードさんが来てやってたんだけど、ちょっと色々あって途中で切り上げることになって、ろくにできなかったから今日もやろうと思ったんだよ。でも、分からないことだらけだから色々聞いときたかったんだけど……残念ながら無理そうだね。」
「はー………凄いですね。」
「え? 何が?」
「いえ、ここの冒険者の皆様はどこか無鉄砲というか、命知らずというか、そんな感じな人も多いのでそこまで慎重になるのは、凄いなーって。」
「死にたくないですし、死なせたくないですからね。」
「そうですよね。それが普通ですよね。」
まあ、それじゃあなんで冒険者なんてやってるんだってなるんだけどね。
その辺は、夢とか憧れとか身分証明とか色々あるんだけど。
中世系ファンタジーで良かったよ。
現代、近未来系だったら身分証がないなんて怪しい奴めで速攻お縄だったろうから。
「あ、そうでした。言い忘れるところでした。」
「? なんですか?」
「レントさんは以前、依頼を出していますよね。」
「はい。それがなに………って、まさか!?」
「はい。昨日持ち込まれました。今はギルドのアイテムバッグに収納してあります。今持って来ますね。」
「お願いします。」
そうか〜。
ついにカニが手に入ったのか〜。
いや〜。
ニヤニヤが止まりませんな〜。
今夜はカニパだカニパ。
カニパーティー、略してカニパ。
「お待たせしました。このアイテムバッグに入ってますが……ここで出してもいいですか?」
「はい。他に人もいませんし誰かに迷惑をかけるわけじゃないですからね。」
「いえ、持ち帰るのならそれ用の準備がいるかと思ったのですが……。」
あ、そっちか。
でも、ストレージは容量無限なので問題ないです。
金銭的な問題があったので少しだけだったけど、絶滅させる勢いで狩ってきたとしても全部入る。
だからなんの問題ない。
「大丈夫です。アイテムボックス持ちですから。」
「あ、そうなんですか。では出しますね。」
リナさんがごそっと取り出したカニは何故かタラバガニのような見た目だった。
もちろん、サイズは普通のよりもかなり大きい。
「かなり大きいですね。」
「そうですね。」
今夜はこれでカニパしたい。
でも、調理の方は自信がないからセフィア達に聞かないとだな。
後、調理場を貸してもらえないか聞かないと。
場所に関しては部屋を使えばいいと思う。
まあ、結構手狭だけど。
10人も集まって偶にみんなで寝てたりするから。
何人か椅子にもベッドで寝れずに床で寝ることになってるけど。
うーん。
もう少し広い部屋とかないだろうか?
と、今は部屋よりもカニパだな。
「なあ、今夜はこれでカニパしたいんだけど、どうかな?」
「いいんじゃないかな。みんなもいいよね?」
「ん。」
「はい。」
セフィアが最初に同意し、続いてリリン、ルリエが、そしてみんなも賛成していく。
美味しいからね。
「今決めたんですけど、今夜はこれでカニパをしようということになりまして、リナさんもどうですか?」
「いいんですか!?」
「はい。」
「ぜひ行かせていただきます!」
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