第447話 お、怯んだ。的なお話

「えー、あー、とりあえず、セフィアとリリンは1時間後くらいからお昼の準備お願いね。それまでは休んでていいから。レントは後少ししたら本部の歩哨みたいなことをしてもらうから。」

「歩哨?」

「簡単に言うと見張りかな。後は連絡要員と戻ってきた冒険者が喧嘩した時の仲裁とかもやってもらうから。」

「そこに整列とかもするんですよね? なんか、俺だけ仕事多くないですか?」

「まあ、連絡自体ほとんどないだろうし、喧嘩の仲裁もひょっとしたらという可能性の話だからね。戻ってきたタイミングがかち合って喧嘩するなんてそうそうないと思うし。」

「それなら……」

「それじゃよろしくね。それ飲み終わってからでいいから。」


飲み終わってからという事なのでこれを飲み終わる前にお菓子をいくつか食べとこ。

勿体ないしね。


食べ終わって飲み終わったので早速仕事に移る。

えーと、歩哨ってのは見張りだって言ってたな。

現代日本じゃあんまり見ないしラノベでもなんとなくでしか理解していなかったからな。

まあ、そのなんとなくで合ってたけど。

でも、見張りって何を見張るの?

とりあえず、他の人達の配置でも覚えといた方がいいかな。

えーと………農地の方にはルーカスさんじゃない男の人がいるな。

男の人だから黒狼の爪牙の人達か。

あれ?

そういえば黒狼の人達にはアンネさん以外にもう1人女の人がいたような気がするんだけど。

斥候とか言ってたから調べに行ったのかな。

いるのは3人だけだ。

まあ、農地だし魔物なんて居ないだろうし、紛れ込んでたのがいても3人で十分ってことか。

で、森側には天装の姫が三方向に展開している。

その天装の姫と本部の中間部にルーカスさんとアンネさんがいる。

2人はサポートかな。


にしても、暇だな。

魔物なんて来ないし精々農民が畑の様子を見てるくらいだ。

長閑なのはいいんだけど、こんだけ暇なのはちょっと辛いかな。

そんなこんなで1時間ほど。

セフィアとリリンが包丁や鍋などの調理器具を取りに来た。

食材はギルド持ちらしい。

調理器具もギルドが用意してくれてるけど自分の奴のが使いたいそうだ。

俺が作ったからってのもあるって言ってくれる。

嬉しい。

セフィア達に調理器具を渡して見送ると、森の方が少し騒がしくなった。

なんだ?

魔物か?


「だからスライムなんてやめようって言ったのよ!」

「でも、折角見つけたんだから倒さなきゃもったいないだろ。」

「そんなのはあんたが男だから言えるのよ!」


現れたのは3人組の冒険者。

男1人に女2人の両手に花状態のパーティ。

まあ、今は男の方が一方的に責められてるけど。

聞こえた話からしてスライムと戦闘をしたようだ。

スライムって基本的に女を優先的に狙うんだよね。

繁殖目的で。

多分それだろうな。

女の1人の下半身がぬめってる。

スライムに捕まりかけてああなったんだろう。

嫁達はお呪いのお陰で襲われてもスライムが速攻で弾けるからああはならないけど、普通だとあんな感じになるのか。

お呪いあってよかったよ。


「あーもー、こんな事ならやっぱり天装の姫に入れてもらえばよかった!」

「ちょっ、それだけは勘弁してくれ! この通りだ!」


そういえば、喧嘩の仲裁も俺の仕事の一つだったな。

これも、それの範囲に入るのか?

とりあえず応対するか。


「ほら、喧嘩はそこまで。そっちの人はとりあえずこれで拭いて。」

「アイテムボックス………あ、ありがと。」


粘液がまとわりついている人にストレージからタオルを取り出して手渡す。


「なんだお前は?」

「俺は冒険者パーティ「紅玉の絆」のリーダーをしているレント。一応Bランクだ。」


男の方が誰何してきたから答えた。

名乗る必要は無いかもだけど、なんか下に見てるような雰囲気があってムカついたからランクまで教えてあげた。


「B、Bランク……」


お、怯んだ。

まあ、この狩猟大会に今日参加してるんだからEランクなのは当たり前。

それなのに喧嘩腰でいってしまえばまずいと思うのは当たり前か。


「若くてかっこいいのに、既にBランク……おまけに優しいなんて。」


おや?

粘液がまとわりついて人の様子が。


「あ、あの、私、レミナって言います。タオル、ありがとうございます。」


なんか、顔を赤らめてるんだけど、ひょっとしてこの人惚れっぽい人?

ま、いいか。

それでどうこうということなんてないし。


「とりあえず、あんたとあんたは本部で査定してもらいなよ。アイテムボックスもアイテムバッグも無いからカバンに入れて戻って来たんだろ。」

「あ、ああ。」

「分かりました。」

「で、レミナさんだけど、ちょっと待ってて。」

「あ、はい。」


セフィアとリリンを連れて戻る。

既に事情は説明してある。


「リリンはこれに水を入れて。」

「ん。」

「じゃ、これとこれ、あとこれを持って。」

「あの……」


レミナさんに水を張った木桶とタオル、それに着替えを渡す。

着替えはアカネのを勝手に借りた。

ヤバかったら後で服とか買ってあげよう。


「セフィア、お願い。」

「任せて。」


セフィアに土壁でレミナさんを囲ってもらう。


「仲間のだからサイズが合わないかもだけど、無いよりはマシだろうからそれに着替えて。ベタついて不快だっていうならそのタオルと水で拭いていいから。」


囲いの外から声をかける。


「ありがとうございます!」


スライムってのはオークに続く女性が嫌いな魔物だからな。

そんなのの粘液が付いたままなんて可哀想だ。

惚れっぽい人かもだけど、セフィア達がいるし大丈夫だろ。

セフィア達、超美少女だからな。

惚れっぽいなら乗り換えたり諦めるのも早いだろうし。

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