第431話 ファンタジーな変装的なお話

どう説明すべきか悩んでいると、頭を悩ませている当の本人が喋り出した。


「はじめまして。私はアリシア。レントさんの友人で師匠でもあります。」

「し、師匠………ですか?」

「はい。鍛治を教えています。まあ、私も鍛治自体はヘパイストスに習ったんですけどね。」


うん。

分かってたけどね。

いつもいつも俺以外の人が説明してたし。


「た、確かに、創造神ならば刀の正しい製法を知っていても不思議ではないか…………というかですね、それはひょっとして神剣ということになりませんか?」

「そんな大層なものではありませんよ。私が個人的に打った物ですし、付いている効果も斬れ味向上と衝撃耐性ですから。素材も黒鉄です。」

「いや、それでも十分凄いですから! 神が打った剣なんて………そんな、恐れ多いです。」

「でも、レントさん達が使っているのは全部私が打ちましたよ?」

「っ!?」


アリシアさんがそう言った瞬間バッて効果音が付きそうな勢いでこっちを見てきた。

その顔は驚愕一色だ。


「あ、うん。そうだけど?」


俺がそう言うとユキノの顔は驚愕一色から信じられないといった顔になった。

なんか、言葉も出ないって感じだな。

よく見ればシアとルナも驚いているな。

まあ、この2人はアリシアさんのことを知っていたからユキノほどではなかったけど。


「そんなことよりも、レイカーさんはどうしたんですか?」

「彼女なら今は別の世界にいます。なんか、好きな著者の本が発売するとかで。」

「あ、なるほど。読書家ですもんね。」

「ええ。」


後ろでなんかユキノがそんなこと……とか言ってるけど無視しよう。


「それよりも、立ち話もなんですから、俺達が泊まってる宿に行きませんか?」

「それもそうですね。では、案内していただけますか?」

「分かりました。」


「………………………はっ!? そそそ、創造神様を安宿に呼ぶと言うのか!?」

「………安宿は言い過ぎだろ。」


覚醒したユキノがそんなことを叫ぶ。

確かに安いけどさ。

でも、結構質はいいぞ。


「ふふふ。これはまた、随分と楽しそうな方が入りましたね。」

「まあ、そうですね。」


騒ぐユキノはシア達に任せて俺はアリシアさんと雑談を交えながら宿に向かう。

そうして歩いていきもうすぐ宿だということを伝えるとアリシアさんが指パッチンをする。

すると、綺麗な金髪が茶髪に変わり瞳の色も琥珀色に変化した。

服もいつの間にか変わっている。

そして何処からか帽子を取り出してそれを被った。

かなりファンタジーな変装だけど………なんで最初からやらなかったのかな?


「あの、そんなことができるのならなんで最初からそうしなかったんですか?」


そうすればユキノが慌てることもなかったし。


「最初からこれでは私だと分かりませんよね?」

「見た目だけじゃ似た人だなくらいだと思いますけど、流石に声を聞けば分かりますよ。」

「そうですか?」

「そうですよ。」


鍛治修行で1日中一緒だったこともあるし何度も聞いた声だからな。

間違えようがない。


「まあ、それだけではなくこの変装は宿の人対策用で、先程のはレントさんのパーティメンバーに対する顔見せの意味もあったんですよ。今後も関わる可能性がありますから。」

「なるほど。でも、やっぱり迂闊じゃないですか? ひょっとしたら別れる事があるかもしれないんだし。」

「その時はその時ですよ。誓約してもらったり記憶を改竄したり。」

「…………そうならないことを祈ります。」

「私もです。あまり気分のいいものではないですから。」


ユキノがぶるりと体を震わせてそうだな。

悪寒を感じて。

そしてついに宿レイランへとたどり着いた。

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