第424話 厳しかった…的なお話
「じゃ、早速どう戦ったか教えてくれるかな?」
「いきなりですか?」
「うん。だってあんま時間ないし。」
どうやら仕事があるらしい。
なら後にすればいいのに……まあ、別にいいけどさ。
だから最初のブラックローラーから始めて最後の盗賊まで話していく。
盗賊は剣を使ったけど数に差があるし無茶するところじゃないからそこは問題なかったようだ。
そう。
問題はそこじゃなかった。
「はぁ〜〜〜。がっかりだよ。」
え?
何が?
確かに手こずったりしたけど、そこまであからさまに落胆されること?
「魔法の使い方が全然なってない。それでよくやってこれたね?」
すみません。
基本的に武器使ってきてました。
「いい。魔法はイメージが大事。これは基本。それは理解しているよね?」
首を縦に振って答える。
「うん。それはつまりイメージさえ出来れば大抵のことは何でもできるってことなんだよ。例えばこんな風に。」
アデラードさんはそう言うとまず右手を突き出して火を出す。
ファイヤーボールかな? なんて思っていたらその火がいきなり地面に埋まっていった。
は!?
何事?
もしかして失敗?
「ふふん。」
と、思っていたら突然ボコッて音を立てながら地面から火が出てきた。
さっきの自慢げな表情はこれか。
しかもその火は小さな蛇のような形をしている。
その蛇が二つに分かれると2匹の小さなウサギになって追いかけっこを始める。
じゃれあっていたウサギが再び一つになると上空に飛んでいってバァーンと弾けて火の粉をキラキラと煌めかせる。
「どう? 今のはただ単に火を出しただけで攻撃魔法でも何でもないんだよ。魔法を使う時って大抵既存の魔法から練習するよね? 火ならファイヤーボール、風ならウインドカッター、土ならサンドショット、水ならウォーターボールかな。でも、最初に覚えた魔法がベースになっちゃうからどうしても攻撃の方に考えが固まってるんだと思う。そのせいでみんな柔軟性に欠けるんだよ。魔杖もその原因の一端かな。属性を増やす分には使い勝手はいいんだけどね。」
言われてみれば、スキルがレベルアップして覚えたのはともかく、自分で開発したのも全部ファイヤーボールが基礎となっていた。
攻撃魔法がベースだからどうしても攻撃に、それも似たようになってしまってるかも。
冒険者だから攻撃手段を増やすのは悪くはないけど、それが攻撃一辺倒になってる原因の一端を担っているのは否めない。
「魔法を使えている気になっているけど、実際は魔法の可能性のごく一部しか使えてないんだよ。」
「つまり、魔法でウサギを作れと?」
「………何でそうなるの?」
「まあ、それは冗談ですけど、それくらい出来るようになれって事ですか?」
「うん。といってもまずは身体強化からだけどね。魔法は基本的に魔力を練り、集め、操作、変質、変形、放出っていう手順を踏む。その内の練りは出来てる。で、身体強化は集めて操作するまでだからそれを完璧に……とはいかないまでもある程度出来るようになるだけで大分変わってくる。それはもう実感してるよね? これの練度を高めれば自然と変質にも変形にも活かせるようになる。身体強化は全身を薄く覆うから魔力を精密に操れないとうまく発動しないからね。精密に操ることができれば自然と魔法を自由に操れるようになる。自由に操れればそれだけ実戦でも応用が利く。避けられても追いかけたりとかさ。だから、まずは身体強化を頑張ってね。」
「結局そこですか……」
「まあ、実質的には魔力を操作するだけの魔法だからね。」
「分かりました。」
「エリーナは厳しいから頑張ってね。」
「はい?」
「ギルドマスターは仕事があるので代わりに私が指導させていただきます。」
突然現れたエリーナさん。
いつの間に……全然分からなかった。
そして、お昼になるまでひたすら訓練することになったんだけど…………本当に、厳しかった……
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