第397話 どこかで聞いたことある的なお話

査定を終えて受付カウンターに戻ると、何故かそこにはアデラードさんがいた。


「…………なんでいるんですか?」

「今日の仕事が終わったからだよ。それでちょっと酒場で飲もうと思ったらアレクシア達が見えたから一緒に飲もうと思って待ってた。」

「待ってたのはいいんですけど、ウチ、基本禁酒ですよ。よくない酔い方するのも居るんで外では飲まないせないようにしてるんですよ。」

「……………………え?」


そんなに驚くこと?

そういえば、アデラードさんはエルフとドワーフのハーフだったけ。

って事はやっぱりお酒が好きなのかな?


「あ、そういえばよくない酔い方をするのも居るって言ったよね。って事はレントは大丈夫なんだよね!」

「あんま飲んでないんで分からないです。でも醜態晒したくないんで飲みませんよ。」

「えーー! いーじゃん。飲もうよーー!」

「飲みません!」

「アデル義姉さん、そんなわがまま言わないで……」


なんか、義姉と呼ぶ400超えの人に10代の人がわがまま言わないでってよくよく考えるとすごい事だよな。

普通逆じゃない?

まあ、はとこなんだけどさ。

はとこって……祖父の弟の孫だっけ?


「アレクシアも飲もう!」

「飲まないわよ! (それに飲むならどうせならレントと雰囲気のいいレストランで2人っきりが……)」

「にゅふふー。可愛いねー。」

「なっ!?」


なんかごにょごにょ言ってたのをアデラードさんは聞いてたようだ。

俺も聞いてた。

だから今の俺はきっと顔が赤くなってるだろう。

……顔が熱い。


「あ、レントも赤くなってるー!」

「うるさいですよ!」


なんだこの人、子供かよ?

まあ、ちっさいけど。


「ん? 今何考えたのかな?」

「いえ、何も!」


それでも鋭いのは女だからか、それとも年ゆえかな。


「もー、分かったよ。無理強いはしないからー。一緒にご飯食べるだけでいいからー。」

「まあ、それなら……」

「そうね……」


というわけでアデラードさんと夕食を一緒に食べることになった。

といっても、まだ夕食には早いのでそこら辺で時間を潰してから食べることに。

アデラードさんは今から酒盛りをするそうだけど。

ドワーフって凄いな。



「それでどうしようか?」

「そうねー、私はそろそろ防具を買い替えたいかな。これ結構くたびれてきてるし。」

「言われてみれば……いつから使ってるの?」

「半年くらいかしら。でもこの間のでかなりガタがきてね。」

「あー、それなら仕方ないか。じゃあ、買うか。オーガでそれなりに稼げたし。」


そんなわけでシアの新しい防具を買い替えます。

ついでにルナにも新しいローブを買います。

とんがり帽子もセットにしたいな。

小柄だし可愛いはずだ。


「いらっしゃいっす。おや、確か以前……」

「ええ。前にここで財布を買いました。でも一度だけなのによく覚えてましたね?」

「まあ、お客さんは目立つっすから。イケメンだし女の人いっぱいだったっすから。」

「えと、ありがとうございます。それで今日はこの子の新しい防具を買おうと思ってて。何がいいのってないですかね?」

「お客さんは運がいいっすよー。この前何処かの冒険者パーティがイービルサーペントを討伐したとかで良質な皮を仕入れたところっすから。」


………なんか、どこかで聞いたことある話だな。


「そ、そうですか。それで、どんな感じになるんですか?」

「そっすね〜、エルフさんみたいですし得物は弓っすよね?」

「ええ。これを使ってるわ。」

「狩弓っすね。となると……うん。大体の構想は出来たっす。後は採寸と型紙を作って………仕入れ値と制作費も含めて……50万ってところっすかね。」

「ご、50万……」

「じゃあ、それでお願いします。」

「レント!?」

「うん? どうした?」

「どうしたって、50万よ、50万! 今着てるのだって5万なのにそんな急に高いのなんて……」

「お金よりも命の方が大事だし。というわけなんで、採寸お願いします。」

「ちょっ、私はまだこれでいいなんて……」

「了解っす。さ、こっち来て服を脱ぐっすよ。サイズにズレがあると動きを阻害するっすからね。」

「ちょっ、待ってって。」


シアが防具屋に連行されていく。

そういえば、オーダーメイドなんて初めてだな。


「あ、よければ皆さんの防具も手直しするっすよ。見た所調整はされてるみたいっすけど、まだ微妙に合ってないようっすから。」

「ちょっ、開けないで!」


突然個室の扉を開ける防具屋さん。

その結果服を脱いでいたシアの姿が見えた。

幸い他にお客が居なかったので俺たち以外の誰にも見られることはなかったが、うん。

見慣れてきてるけど、やっぱりいいものだ。

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