第387話 実力に差があるな。的なお話

依頼に行くセフィア達をギルドから見送る。

セフィア達はやはり心配なのかしきりにこちらを振り向いているけど、相手は一応シアのはとこだよ?

今後も関わるだろうに、それはちょっとどうかと思う。

…………俺もちょっと不安だけど。


さてと。

それじゃ行くとしますか。

大丈夫。

流石にギルド内で大怪我するようなことはないはずだ。

手加減苦手そうだけど、大丈夫なはずだ。

……………大丈夫だよね?


そんな不安を抱きつつ訓練場に行くと他に人はいなく訓練場中央でアデラードさんが腕を組んで仁王立ちしていた。

ちっちゃいせいで威厳なんてものはなく、お山の大将というか、ガキ大将的な雰囲気がある。

要するに微笑ましい感じだ。

顔が緩みそうだ。


「よく来たな!」

「そりゃ来ますよ。受けたからには来ますよ。それとも来ない方が良かったですか?」

「いやいや、来てくれて嬉しいよ! それに今日しか予定空いてないし。」

「そういえば、前から気になってたんですけど、アデラードさんを連行する人って何者なんですか? アデラードさんってSSランクなんですよね?」

「あー、あの子はね一応副ギルドマスターなんだよね。エリーナっていうだけど、あの子がギルドマスターやればいいって思わない?」

「いや、まあ、そう思わなくもないけど……」

「あ、やっぱり?」

「でも、ギルドマスターはアデラードさんなんだから、やっぱりアデラードさんしかいないと思います。」

「あ、ありがと………えと、それじゃ、模擬戦始めよっか。」

「はい。」

「じゃ、どっからでもかかって来て。私はしばらく攻撃はしないから。ほら、私が攻撃するとすぐ終わっちゃうからね。」

「油断して怪我しても知りませんからね!」


そうは言うものの、別に調子に乗っているわけでも怒っているわけでもない。

攻撃されたら間違いなく瞬殺だろう。

だから攻撃されないというのはこちらとしてもありがたい。

全力で攻撃できるから少しでも当たる可能性が上がるしね。

後は、とにかく全力で攻撃して攻撃の捌き方なんかを盗みとろう。


「ハアッ!」

「うん。いい攻撃だね。」


木刀による斬りあげをあっさりと避けての発言だ。

あっさり避けといてよく言うよ。

やはり実力に差があるな。

まあ、400超えてんだし数百年のキャリアは伊達じゃないって事だよね。


9種類ある斬撃を淀みなく繋げて連続で攻撃するが全てを躱されている。

しかも全て紙一重で、だ。

つまりは全部見切られているということ。

そこまで分かりやすいのだろうか?

アーツなんかは多分知られているだろうから使えないし、どうすれば当てられるのだろうか?


「うん。基本はしっかりしているようだね。Bランクになるのも頷けるよ。でも対人戦はあまり慣れてないのかな? 攻撃が素直だよ。」


攻撃が素直ってどういうこと?

分かりやすいってことなのか?


「なら、これでどうだ!」


木刀を地面に刺して土を飛ばす。

目潰しをしつつ初動が早い突きを放つ。

しかし、飛ばした土をあっさりと回避され突きを放つ時には狙った場所にはアデラードさんはいなかった。


「だからって短絡的な攻撃は良くないよ。そんな破れかぶれじゃ格上には通用しないよ。」


一応、土◯閃って技があって破れかぶれってわけじゃないんだけど……

しかし、これもダメか。

だったら、こいつでどうだ!


「うーん。それもあまりやり慣れてないよね。逆手で持ってるから対応し辛いだろうけどやっている本人が慣れてなきゃ意味ないよ。」


逆手での斬撃をしつつ体術を絡めてみたけどやっぱり慣れてないからバレバレだった。

やっぱり慣れている攻撃が一番のようだ。


「うん。そうそう。それが一番いいよ。」


しかし、全て躱されている。

アーツではない俺だけの必殺技とかそういうのがあれば少しは可能性があるのだろうか?

どれだけ攻撃しても当たらないからそんなことばかり考えてしまう。


「それじゃ、そろそろ私も行くね。」


そう言われた瞬間、意識がなくなった。

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