第386話 借りれるほど…的なお話
朝となりギルドに向かう。
イービルサーペントの依頼が残っているが、それとは別に依頼を受けるためだ。
折角行くのだからついでに依頼を受けた方がお得だからね。
そんで、出来ることなら蟹の依頼を。
そう思っていたんだが、残念なことに蟹の依頼がない。
他にはオークの納品とかブレードマンティスの鎌の納品とかそういうのがあるが………どれでもいいな。
蟹ないし。
って、そうだ。
依頼がないのならこっちが出せばいいんだ。
というわけでちょっと受付に……
「蟹が食べたいので依頼を出します。」
「え、依頼を出すのですか?」
「はい。」
「それで、蟹、でしたよね?」
「はい! この辺で取れる蟹の魔物ってなんですか?」
「え、知らないんですか?」
「カインにいた時に倒したことはあるんですけど、こっちにもいるかわからないですから。」
「なるほど。えーと、つまり依頼内容は食用で美味な蟹系魔物の納品ということですか?」
「そうなりますね。」
「話は聞かせてもらった! 私がその依頼受けよう!」
「ランクが高すぎるので無理です。」
「ぐはっ! そうだった!」
またギルドマスターであるアデラードさんがやってきた。
この人構ってちゃんなのか?
でも、SSランクが受けれる依頼なんて報酬は払えないし、そもそもそんな魔物がいる時点で騒動になってるから依頼なんて出してる暇なんてないだろう。
というわけでお引き取り願おう。
アデラードさん担当の人、出番ですよ。
「折角休みだったのに……まあ、いいや。じゃあ、この前言った模擬戦やろう!」
なん、だとぉ!?
休みってことはあの人の助けは期待できないってことじゃないですか!?
何か逃げ道はないか?
そうだ!
依頼があるじゃないか!
依頼を理由に断ろうとした時にふと思い出した。
模擬戦を受けてもいいと思ったことを。
それによくよく考えてみればシアとそういう関係になったし、ゆくゆくは結婚するだろうと考えている以上は今後もアデラードさんと関わって行くことになる。
なのに、今から逃げまくるのはあまり良くないだろう。
それにこの人はギルドマスターという権威ある地位に就いている以上は悪い人じゃないと思う。
ならば受けるべきだろう。
いい機会だし胸を借りるつもりでやろう。
…………借りれるほど胸ないけど。
ぺったんこだし。
「ん? 今何を考えたのかな?」
「いいえ、何も。」
鋭い。
これが、SSランク……………なんてね。
「わかりました。模擬戦、お願いします。」
「そうこなくちゃ! 訓練場で待ってるから依頼を済ませたら来てね。」
そう言ってアデラードさんは手をひらひらと振りながら歩いて行った。
さてと、さっさと依頼の処理を済ませよう。
「それじゃ、依頼の方ですけど…」
「…………え、あ、はい! そうですね。………………あの、ギルドマスターとどういう関係なんですか?」
「あー、えと、シアの……恋人のはとことかで、それで気にしてるみたいです。」
「なるほど………………って、えーーーー!! 恋人なんですか!? だって、その指輪、それにパーティメンバーの人達がつけてるやつとお揃いですよね!? それなのに恋人って……」
「違っ、いや、違わないんだけど、違うんだよ! 別にたらしとかそんなんじゃなくて、告白されてそれをみんなが受け入れる形でそういう関係になっただけだから! 自分から誰彼構わず手を出してるわけじゃないから!」
「いえいえ、別に何か悪いとかじゃないですよ。一夫多妻なんて珍しくないですし……ただ、まだ若いので、意外だな〜って…」
「はぁ………あの、依頼の話、早くしません?」
「あ………そうですね。」
そこから更に話した結果、依頼内容は蟹系魔物の納品で食用として美味なもの、種類は問わないがCランク以下の魔物であること。
報酬は1匹最大30万で3匹までとなった。
流石にポケットマネーからではこれが限度だった。
みんなにはアデラードさんと模擬戦することを伝えて依頼の方を任せた。
セフィア達は心配だから自分も行くと言ってたけど、依頼の方に期限があるのだからあまり休むべきではないと言って、探索に行ってもらった。
しぶしぶって感じだったから後で機嫌取らないとな。
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