第383話 連れ去られてしまった。的なお話

朝食を食べ終え今日の仕事を探そうと宿レイランを出るとそこにはアデラードさんが仁王立ちしていた。

目の下のクマも相まって少々不気味だ。


「待っていたぞ、レント! さあ、昨日の続きをしよう!」

「続きって……アデラードさんが古いって話ですか?」

「なぐっ!? い、いや、そっちじゃなくて、アレクシアには相応しくないという話だよ。」

「相応しいも何も、そもそも親戚とはいえアデラードさんがとやかくいうことじゃないと思うんですけど。最終的に決めるのは当事者たちなんだし。」

「と、とにかく! そういうわけだから私と模擬戦してもらうから!」

「何がどうなればそうなるんですか……」


意味がわからない。

そう思っているとシアが近づいてきて小声で話しかけてくる。


「ごめんね、レント。アデル義姉さんこうなると長くて……適当に付き合ってあげて。」

「まあ、SSランクに相手してもらえるのは滅多にないだろうしそれはいいんだけど……負けたらシアと別れろとか言われると困るんだけど。」

「うぇっ!? い、いやそういってもらえるのはすごく嬉しいんだけど……きっと大丈夫だから。多分言ってて引っ込みがつかなくなってテンパってるだけだと思うから。」

「つまり落としどころを探してるって事?」

「多分。」

「分かった。シアがそういうなら。」


アデラードさんに向き直り模擬戦に応じる旨を伝えるとアデラードさんの顔がパァッと輝くけど、クマがあるからちょっと怖い。

そしてアデラードさんと共にギルドに行き模擬戦を…………出来ませんでした。

昨日も現れた女性がギルド前で仁王立ちをしていたからだ。

こっちはすごく怖い。


「アデラード様〜? 一体何をしてるのかな〜?」

「い、いや、これは、その〜。」

「昨日言いましたよね? 今日は太守様の使いの方が来るから今日はおとなしくしてくださいって。」

「で、でも、それは午後からのはずじゃ〜……」

「予定が早まる可能性があるから朝からと言いましたよね!?」

「ひっ!」

「ほら、早く来てください!」

「あぁ〜。」


連れ去られてしまった。

こんなんがギルマスで大丈夫なんだろうか……


えーと……うん。

気を取り直して依頼を受けよう。

……明日も来るのかな?



クマさんがドシャリと崩れ落ちる。


「ふぅ〜。ベアの依頼はこれで全部だっけ?」

「うん。あと残っているのはイービルサーペントだね。」

「蛇か……初めて戦うし気をつけないとね。」

「そうだね。」


アデラードさんの事はどうすることもできないのでとりあえず保留にしといて依頼を受けた。

受けたはいいんだが……モヤモヤするな。

やっぱりアデラードさんの事が気になってるんだろうな。

SSランクとの模擬戦なんて滅多にできることではないし、ここいらで自分の技術を見直したいと思ってたからな。

強敵と戦えば見直すところが見つかると思うんだが……


「レント? どうしたの?」

「あ、すまん。なんでもない。じゃ、蛇探すか。」

「うん。」


ところで、蛇ってどこにいるんだろう?

漫画だとこういう感じの木の上……に……っていたーーーーーー!


「みんな! 木の上にデカイ蛇がいるぞ!」


突然始まった蛇戦。

不意を突かれたが相手は格下だし毒のような状態異常を使うタイプじゃなかったので、初見故に少々戸惑ったが難なく倒す事ができた。


しかし……また、リリン達の気配察知に引っかからなかったな。

何故なんだ……

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