第370話 ぽいっと的なお話

さて、そろそろ夕食の準備でもしようかな。


「まって。」

「どうした、リリン?」

「人の気配。」


そう言ってリリンは水狼を出してどこかに向けて走らせた。

どこに? と思っているとどこからか悲鳴が。


「うわぁぁーーー!!」

「ちょっ! なんだこれ!?」

「おい、どこに連れてくんだよ!?」


どこからか声が聞こえてきて、すぐに声の主が現れる……………水狼に咥えられながら。

あ、こんな光景どっかで見たことある。


そしてその声の主だが、例のチャラい奴らの1人で、後ろからも残りが走ってきてる。

こいつらが近くにいたのか……なにをする気だったんだ?

事と次第によっては……


「なんでかくれてた?」

「いや、別に隠れてなんか……」

「うそはよくない。」


尋問しているリリンが新たに水狼を出して脅している。

しかも声が淡々としているというか、感情があまり込められてない感じが怖さを演出している。


「ヒッ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 別に俺達はあんたらを害しようと思ってるわけじゃないんだ!」

「そうだぜ。男が苦手だっていうからあまり近づかないように気をつけてただけだ。」

「それに俺達はただ女の子を愛でるのが好きなだけで、ぶっちゃけ近づかずに遠くから眺めてるだけでもいいんだよ。」


なんだそれ?

見た目チャラ男のくせにオタク気質だな、おい!


「ほぅ? それで遠くから監視していたと? お前ら、もしも尾けられていると知って、それがいつまでも離れないことに気づいたとき、女の子が怯えないと思ってるのか? 女の子を愛でるのが好きと言えるのか?」

「「「「……はっ!」」」」

「はっ! じゃねぇよ! 馬鹿かお前ら!?」


なんなんだこいつら。

アホすぎるだろ!


しかし、怪しさは拭えないな。

この台詞も全部演技で後から襲う際に油断させるための布石なのかもしれない。

こいつらは本当にただの馬鹿でそんなつもりはないのかもしれない。

だけど、僅かでも可能性があるなら警戒は解くべきじゃない。

まあ、ぶっちゃけ近くにいて欲しくないだけなんだけど。


「お前ら、ここのボスは倒せるよな?」

「は? そりゃ、これでもアイアンだし倒せる、けど…………まさか……?」

「リリン。こいつらこん中に放り込んどいて。」

「ん。」

「ちょっ!? マジで!?」

「まじで。」


俺が扉を開けて、リリンは咥えさせてる男を扉の中にぽいっと捨てた。

他の連中も同じようにしてぽいっと捨てていく。


「男苦手だって知ってるだろ? だから、下の階層に行ってくれ。」


そう告げると空気を読んでくれたのか、扉がギギギと音を立てながら閉じていった。


「チラチラと察知に引っかかってて不快だった。」


あ、ちょっとイライラしてたみたい。

でも、察知に引っかかってたのってボス部屋とここを行ったり来たりしてからじゃないかな?

まあ、それでも何をするでもなくずっと見られるというのは不快ではあるか。

蒼井は気づかなかったのかな?

……蒼井だし、気づかなかったんだろう。


「そんじゃ、改めて夕食の準備でもするか。」


邪魔者を排除してからみんなで…………うん。俺と蒼井、ユキノ以外のみんなが夕食の準備をして、美味しくいただきました。

ごめんね、手伝えるだけの技術がなくて。


夜は夜で奴らを警戒しつつ夜営に見張りなんかをしながら休んだ。

帰りはあんな感じのやつらと会いませんように。

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