第331話 ふざけんなっ!!! 的なお話

ユキノだっけ?

シア達の仲間っていう、ダンジョン前で2人のピンチを教えてくれた人がたくさんの冒険者を引き連れてやってきた。

どうやら捜索隊のようだが、来るの少し遅くない?

だってもう3泊してんだぞ。

あ、そういえば俺達の捜索隊も編成されてたりするかも。

だってそろそろ予定をオーバーしそうだし。


俺達の捜索隊に関しては今はどうする事もできないので置いといて、無事を確認して抱擁しているシア達の代わりに捜索隊と思しき人たちに声をかける。

内容は大所帯の理由と捜索隊が遅かった理由だ。

あの後にあのユキノって人を休ませるのに1日かけるとしてもその翌日に出ていればこんなところではなくもう少し下の階層で出会っている筈だからな。


その理由が、酷かった。

こいつらは、シア達の捜索は二の次であのオークの大群を討伐する為に編成された討伐隊だった。

もちろん、あのユキノって人はまだ生きてるかもしれないと言って自分だけでも助けに行こうとしたそうだ。

だが、見渡す限りのオークの群れで百を優に超えている状況では生存は難しいと判断され、これ以上増えて街の中にやって来られるわけにはいかないとして討伐隊を編成し、対処する事が決定した。

そこにまだ死んだと決まったわけではないと、ほんの僅かな可能性にかけてユキノは道案内としてこの討伐隊に参加した。

遅かった理由も大群を相手にする為の準備と、Cランク以上の冒険者を集めていたからだ、との事。

確かにあれだけの魔物がいたら生存は絶望的な状況だろう。

死ぬと思っても不思議じゃない。

だからって、最初から死んでるものとして行動するなんておかしいだろ!

リリンのような魔法を使える奴や、騎獣系の魔物をテイムしてる冒険者だっているかもしれない。

なのにそいつらに捜させないなんて、あんまりだろ。


「ふざけんなっ!!!」


助けるつもりはなかったというあんまりな説明に気持ちを抑えられず、叫んでしまった。


「お前さんの気持ちもわかる。だが、捜索の為に少数を先行させても殺されるだけだったんだ。2人を助ける為だろうと、死にに行かせるわけにはいかないんだよ。分かってくれ。」


他人の為に命はかけられない。

知らない人の為に命はかけられない。

それは分かる。

頭では理解できる。

でも、理解したくないと、2人を失いたくないと、心が拒絶している。


「落ち着いて、レント。私は大丈夫だから。ほら、ちゃんと無事だったんだからさ。」


シアが憤る俺を落ち着かせようとしてくる。


「ああ。」


長い間会えなかったから。

2人がピンチだと知ったから。

もしも………もう少しだけ早くダンジョンに潜ってあのユキノという人から2人のピンチを聞けずに失っていたらと思うと、言いようのない恐怖が心を掻き立てるから。

やっぱり俺は2人を友達以上に、特別な存在だと思っているようだ。

でも、やっぱり動くわけにはいかない。

たとえ、俺が2人をどんなに大切だと思っていても、セフィア達を蔑ろにはできない。

倫理的にも、精神的にも。


俺が叫んだりしたもんだからなんともいえない空気が周囲に漂うが、こんなところにい続けるわけにもいかない。


「すぅ、はぁ。……あの、オークは全て俺らが倒しました。なので、皆さんの仕事はありません。ですが、そのオークを操っていた迷賊がいて、そいつらは移動の足手まといになると八階層の階段前に置いてきました。生きているかはわかりませんが、事情を説明する時に使えるかもしれませんし、あなた方もこのまま手ぶらで帰るよりかはいいと思いますので、連れてきてもらえませんか? もちろん生きていたらでいいので。」

「そうか。分かった。まだ生き残りがいるかもしれないから、調査をするついでに見てみるよ。」

「お願いします。」


なんとも気まずいので早々に別れて、俺達は地上を目指し、討伐隊の連中は下を目指す。

ユキノはシア達を捜していたし、本人もまだ怪我の関係で本調子ではないということで俺達と共に地上に帰るそうだ。

残りの階層で俺達を脅かすような存在はおらず、若干気まずい空気があるが、それ以外は問題なく無事に地上へと帰還することができた。

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