第321話 抱きしめてしまった的なお話
「お前、さっき俺の魔物をけしかけてるって言ってたよな。さっさと魔物を引かせろ。」
「へっ! 誰がテメェのいう事なんて聞くか。どうせ捕まれば鉱山か処刑されるのがオチだ。だったらあいつらを道づれにして死んでやる!」
「なんだと?」
「更にいい事を教えてやるよ。俺の従魔はオークキング。しかも統率、同族支配のスキルを持っている。それがどういう事か、もう分かるよな?」
それ、ヤバくね?
同族支配って事はつまりオーク系の魔物を支配出来るって事だろ。
それを統率する事が出来る。
そしてここはダンジョンでオークは沢山いる。
今現在はダンジョンの一室に陣取って抵抗しているようだけど、どれだけ持つかわからない。
場所も……教えてはくれないだろうな。
心中を図ってるし。
「蒼井! 気配察知を最大展開して魔物が多く集まってるところを探ってくれ!」
「………………………あっち! あっちの方からたくさんの気配がする!」
「リリン、水狼を。」
「ん。」
リリンが出した水狼に全員が跨る。
「蒼井はそのまま察知を継続。様子に変化があったら教えてくれ。セフィアは指示出しを。」
「分かった。」
「了解。」
蒼井が示した方向に向かうようにセフィアが指示を出し、それに従って進んでいく。
リリンの水狼による高速移動とセフィアの指示、そして蒼井の気配察知のお陰で4分ほどで異常なほどに魔物の気配が密集している地点に到達出来た。
しかし、通路にひしめいているオークの群れは無視して突破する事は出来そうになく、魔法で一掃しようにも奥から人の気配が2つするという話でそんな危険な事はできない。
となればする事は1つ。
蹂躙するしかない。
俺は水狼から飛び降りるとそのままオークの群れに突撃する。
まずは最後尾の一体を斬り捨てる。
その時点でオーク共は俺の存在に気づいた。
しかし、そんな事は関係ない。
幸い、通路の関係上一度にかかって来れる数はそう多くはない。
右側の奴が手に持つ剣を振り下ろしてきたので、それを避けつつ左側のオークを一刀で斬り伏せる。
次のオークが横薙ぎに斬撃を放ってきたのでバックステップで回避し、直ぐさま接近して斬り捨てる。
と、ここでセフィアと蒼井が助太刀に来た。
人数とバランスを考えての事だろう。
最も長く一緒に戦ってきたセフィアと魔法銃による精密射撃が出来る蒼井。
この2人が狭い通路で戦うのに適してると判断したようだ。
囲まれているわけではないため背中合わせではないが、セフィアと共に倒していく。
ここはダンジョンの中で、ここにいる魔物の多くはダンジョン産な為、倒したそばから魔石とドロップアイテムを残して遺体は残ろらない。
だから遺体が邪魔でうまく攻撃できないなんて事にはならない。
俺が右のオークを倒せばセフィアが左のオークを倒す。
不意打ちをしようとしたオークがいればすかさず蒼井がヘッドショットを決め倒していく。
そうして倒し続ける事6分。
そう言葉にすると短く感じるが、ずっと戦い続けていると結構疲れる。
けどその甲斐あって雑魚が数匹とオークキングのみとなった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。あ、後少しだ! 蒼井は雑魚の殲滅、セフィアは俺と一緒にオークキングを倒すぞ!」
「はぁ、はぁ……うん!」
「了解!」
雑魚は蒼井がやってくれる。
だから俺はオークキングにのみ集中する事ができる。
振り下ろしてきたオークキングの剣の側面を打って弾く、その隙にセフィアが胴体に2連。
そして俺は呻くオークキングに接近し跳ね斬りで剣を持つ右腕を斬りとばす。
そのままバク宙して着地した俺は叫ぶオークキングの胴に向けて閃火を放ち、反転して来たセフィアとタイミングが合い、交叉するような形で胴体を分断、オークキングを倒した。
倒した事を喜ぶのは後にしてシア達がいるであろう部屋の前に行くと木が入り口を塞ぐようにして生えている。
多分シアが何かしたんだろうけど、声をかけてどうにかしてもらう時間すら惜しい。
だから斬り倒す事にした。
「断罪炎覇!」
炎の刃によって抵抗なく斬り倒した木の切り株を飛び越えて中に入ると弱々しく杖を構えるルナと、矢が無くなってしまったのか短剣を握るシアの姿があった。
それを見た俺は2人が無事な事に心から喜び、駆け寄って2人同時に抱きしめてしまった。
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