番外編 お餅争奪戦
年が明けて新年の挨拶をしようと思いギルドへと赴いた。
去年は結構世話になったしセラさんに挨拶をしたかったからね。
そしてギルドに行くとどういうわけか同業者さんがギルドの中でひしめいていた。
むさ苦しっ!
その冒険者の群れを掻き分けて受付の方へと向かっていき、ある程度近づいた所で奥の方から声が聞こえた。
「参加券を受け取った方は速やかに離れて下さーい! 他の方のご迷惑になるので速やかに離れて下さーい!」
参加券?
なんの事だ?
よく分からんな。
更に掻き分けて進んでいき、ようやくセラさんのところにたどり着けた。
うぅ。
冒険者臭い。
「明けましておめでとうございます、セラさん。これは一体何なんですか?」
「明けましておめでとうございます、レントさん。これは新年のお祝い企画であるお餅争奪戦です。今は参加券を販売している所です。」
「お餅争奪戦? それって何をするんですか?」
「街中に散らばるお餅引換券を集めて回るというもので、場所によっては集めるのが大変な所もあります。ギルドの受付嬢が作るお餅を求めて冒険者がこぞって参加する一大イベントだったりするんですよ。」
相変わらず馬鹿すぎるな、冒険者。
「それで、レントさん達は参加しますか? 一応参加料として500リム払ってもらう事になりますが。」
「折角だし参加しようかな。みんなはどうする?」
後ろを振り返ったが、知らないおっさんしかいなかった。
………はぐれちゃった。
「えと、はぐれちゃったみたいなんでとりあえず1人分お願いします。」
「あ、はい。分かりました。開催は明日の午前9時からとなりますから、それまでに参加券を持って街の広場に集まって下さいね。」
「はい。分かりました。」
そして参加券を受け取った後再び冒険者を掻き分けてみんなを探し出す。
………みんなは門の所で待っていました。
むさ苦しい中必死に探したのに、無駄だったとか………泣きそう。
みんなにこの集団の理由を説明すると全員参加希望との事。
でも、この中に入っていくのは嫌だからと捌けるまで待つと言って適当に街中をぶらついて、そして2時間ほどしてから冒険者が捌けたギルドで参加券を購入した。
………本当に、俺の苦労はなんだったんだろう。
◇
そして翌日。
時間通りに街の広場まで向かうとそこには大量のおっさんが。
誰得だよ、この光景。
「冒険者の皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます。ただいまより冒険者ギルドカイン支部主催、新年お祝い企画お餅争奪戦開催いたします。まずはルールを説明させていただきます。街中に散らばるお餅引換券を集め、制限時間である12時までにこの広場に引換券と参加券を持って帰ってきてはじめてお餅を手に入れることができます。そして今年もお餅を作るのは私達ギルドの受付嬢。しかし、私達が用意できるお餅の量にも限りがあります。つまり、いかに速く、多くの引換券を持って来れるかが勝負の鍵となります。引換券の枚数によって手に入れることができるお餅の量は変わってきます。それはこちらの掲示板に書いてあるので参考にしてください。それと、場所によっては引換券を守るガーディアンがおり、そのガーディアンに勝つことで特別な引換券を手に入れることができるのでそちらの方も狙って見るのもありかもですね。それでは、お餅争奪戦スタートです!」
その宣言と共に多くの冒険者が街中へと駆け出していく。
それにしても、セラさん何気にノリノリだったなぁ。
「それじゃ、俺たちも行くか。」
「うん。」
「ん。」
「はい。」
ちなみに俺達はチームを二つに分けている。
一つは俺と嫁達。
もう一つがアカネ、レイダさん、蒼井だ。
だって7人だとちょっと多いし。
「結構見つかるもんだな。」
「そうだね。もっと難しいところにあると思ってた。」
「ん。簡単。」
リリンの言う通り、意外と簡単だった。
例えば、看板に引っかかっていたり店先に並んでたり、木に引っかかってたりと至る所にあってどれも探そうと思えば簡単に見つけられるところにある。
まあ、あんだけの人数が参加する以上は隠すにも限度があるのだろう。
だったらいっその事分かりやすいところに置いてしまえって事なのかもね。
でも、掲示板のレート表ではまだまだで、これだけでは50グラムしか貰えない。
「でもこれだけじゃ少ないしもっと集めるぞ!」
「うん!」
「もちろん!」
それから更に集めていき300グラムと引き換えれるだけの量を集めた。
4人で食べるには十分過ぎるほど集めたのでそろそろ帰ろうかなと思っていると、何やらむさ苦しい集団を発見した。
何かあるのかな? と思って近づく。
どうやらここでは例のガーディアンがいるようで、これはその対戦待ちの列らしい。
丁度いいしこれに挑戦してから広場に戻るか。
そして俺たちの番になる。
ガーディアンって誰だろう?
「よく来たわね。私はここのガーディアン。私が守る宝が欲しくば汝の力を証明するがいい。」
「……………………何してんの?」
「れれれ、レント!? 何でここに!?」
ガーディアンはシアだったよ。
「というか、さっきのセリフは何?」
「あ、あれは、台本にそう書いてあるのよ!」
「はぁ。ま、いいや。で、何やればいいの?」
「そそ、そうね。こほん。あなた達には私とこれで戦ってもらいます。」
「羽根つき?」
「そ。先に3勝した方の勝ち。私に勝てたら特別引換券をあげる。分かりやすいでしょ。」
「確かに分かりやすいな。よし。やろう。」
やろうとは言ったもののよくよく考えれば、羽根つきをやった事はなかったよ。
でも動体視力とかも上がってるし、何とかなるよね。
何ともなりませんでした。
打つ事は出来たけど、それだけでシアは回転させたり、フェイントを入れたりしてきてとてもじゃねぇけど、勝つ事なんて素人には無理だよ。
次に戦ったのはリリン。
2勝3敗でギリギリ勝てなかった。
リリンでも無理なのかよ。
となると勝てる人なんていないかも…………と思ってたらセフィアとルリエが勝ちました。
「悔しいわねー。あとちょっとだったのに。」
「えへへ。羽根つきにはちょっと自信あるんだ。」
「私も、昔から良くやってましたから。」
むぅ。
何だかちょっと寂しいかも。
居場所がない感じがして。
まあ、あれだ。
何はともあれ特別引換券を2枚手に入れたし結果よければすべて良しって事にしておこう。
◇
「お疲れ様でした。こちらが引換券62枚で引き換えれる景品お餅300グラムで、こちらが特別引換券の景品受付嬢特製のお雑煮です。」
わー。
お手製だって。
そりゃ冒険者がこぞって挑戦するわけだ。
「お疲れー。そっちはどうだった?」
「アカネか。まあまあかな。セフィアとルリエがシアに勝って特別引換券を手に入れてね。見ての通り雑煮を受け取ったところだよ。」
「へぇ。そっちは雑煮だったんだ。」
「そっちは?」
「こっちも特別引換券を2枚手に入れて内容はおしるこだったわ。」
「そうなのか。誰と何で戦ったんだ?」
「私達はコマ回しでカイルさんとだったわ。」
「黄昏さん達もやってたのか。」
「そうみたい。」
俺は負けてしまったが、嫁達と楽しく遊べて楽しかったな。
貰ったお餅と雑煮、おしるこをシェアし、雑談をしたりと楽しみながら、そんな事を思った。
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