第317話 言いすぎた。的なお話
宝箱自体はカインの初心者ダンジョンで何度も見た。
そして罠に何度も引っかかった。
しかし今回のは宝箱から妙な反応がするとのことだ。
ゲームなんかだと定番のあいつに違いない。
本来ならば宝箱かあいつかとビクビクするのが普通なんだろうけど、どういうわけかうちの連中は生ミミックにワクワクしてる。
いや、理由は分かるか。
レイカーさんの本だ。
そしてワクワクしてるのは俺もなんだけど。
「じゃあ、開けるぞ。」
「う、うん。」
「早く開けなさいよ。」
「今開けるって。せーの!」
流石に正面からだと襲われるかもしれないので後ろから開ける。
残念な事はここからだと中の様子が見えないので、開けた後は正面に回らないといけないのが面倒くさいな。
「えっ!」
「あれ?」
「なんで!?」
「え? 何? 何があったの?」
なんかみんなが騒いでるんだけど、何があったんだろう?
ミミックじゃないの?
と、思っていたらみんなが驚いた理由が飛び出してきた。
「ばあっ!」
「って、フラン!? 何でここに!?」
「あははは。ダンジョンは私にとっては庭みたいなものだよ。そこにあんたが来ればすぐに分かるに決まってるじゃん。だからちょっと驚かそうと思ってこうして隠れてたの。あ、これこの中に入ってたのね。」
「お、おう。」
そうして渡されたのはただの石ころでした。
アイテム鑑定で調べてみてもやっぱりただの石ころでした。
「はあ〜。なんだ、フランかよ。」
「ちょっ!? なんだって何よ、なんだって!」
「こっちはさ、初ミミックを拝めるかと思ってたのに、フランとか。本当にがっかりだよ。」
「むぅ〜。何よその言い方。ちょっと驚かそうと思っただけなのにさ、そこまで言うことないじゃない。」
やべっ!
言いすぎた。
なんかちょっとフランが泣きそうになってる。
「す、すまん。流石に言い過ぎだよな。その、異世界だしミミックに会えると思ってたからちょっとワクワクしてたんだよ。フランも悪気があ…………………驚かそうとするのって悪気があったってことだよな?」
「い、いや、悪気なんてそんな事はないよ。そ、それよりもミミックを見たいんだよね。それなら三階層から出てくるよ。」
誤魔化したよ。
まあ、別にいいんだけどね。
そこまで怒ってないし。
ちょっと落胆したけど、フランから何処にいるか教えてもらえたし。
「そういえば、ここにはどうやって来たんだ?」
「ん? そんなのは普通にだけど。私はこれでも創造神アリシア様の眷属よ。この世界なら何処にでも転移出来るんだから。」
「おおーー! スゲー! それじゃあ、ちょっと何処か港町に連れてってくれない?」
「ごめん無理。私には誰かを連れて転移する権限がないのよ。」
「そうなのか。それじゃ、しょうがないな。この後お前はどうするんだ?」
「んー。とりあえず港町にでも行こうかな。魚料理が食べたくなっちゃったし。」
「ずるっ!」
「あははは。まあ、お土産くらいは買ってくるから。じゃあね〜。」
全く。
フランは本当に自由だな。
でも、500年ずっと寝ててようやく手に入れた自由だし、楽しんでるようでなによりだ。
帰りにちょっとした再会があったが、それ以降は特に問題もなく無事にダンジョンから帰還することができた。
その後はギルドに行って魔石を納品。
革製品の店で財布を受け取り、代金を払い。
そして宿に帰ってゆっくりと…………うん。
嫁に襲われたが、それ以外は本当にゆっくりと休むことができたよ。
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