第314話 初ドワーフ的なお話
グラハム武具店。
ギルドの受付にて教えてもらったギルド公認店。
そういえば、公認店だと何かあるのかな?
と、それは今はいい。
重要なのはそこではなく、店主が異世界の武器屋の定番であるドワーフだという事だ。
背がかなり低いが筋骨隆々な肉体を持ち、イスラムとかその辺の人たちみたいな随分と豊かな髭を持つ店主。
何処からどう見てもドワーフな人が店主をしている。
これでこそ、異世界の武器屋だよ!
そしてそのラインナップも今まで見たどの武器屋よりも充実している。
そしてその中でも目を引くのがショーケースのようなものに入れらて飾られている剣。
どうやら非売品のようで飾られているだけだが、そこには蒼炎竜の王剣と書かれていた。
試しにアイテム鑑定をしてみるが解析不能と出て何一つわからなかった。
凄いんだけど、そこに名前が書いてあるしせめて名前くらいは表記してほしい。
「どうだ、スゲーだろう。こいつは俺の師匠が昔勇者の仲間のために打ったって言っていた剣だ。」
「勇者の仲間!?」
「そうだ。と、紹介が遅れたな。俺はこの店主をしているグラハムっつーもんだ。お前新人だな? 初めて見る顔だし。」
「そうです。」
なんかイメージと少し違うキャラだな。
ドワーフっていうと酒好きで頑固で寡黙で自分の認めた相手にしか武器は打たないとか言いそうなイメージがあったんだけど、この人は積極的に話しかけてきてイメージと真逆だ。
「ドワーフのイメージと違うって顔してるな。」
「えっ!? いや、その、はい。ちょっと思いました。」
「ははっ! よく言われるよ。でもな、そうやって客を選んでいたら店を維持できなくて店潰すなんて奴もそれなりにいるからな。そんなんじゃ店やっている意味なんてない。むしろ俺は相手がベテラン冒険者だろうが新人冒険者だろうが関係なく商売する。ベテランがそのままギルド1の冒険者になるかもしれない。新人が才能を開花させて一躍有名になるかもしれない。そんな奴にいい剣を打てたかもしれないのに、それを選り好みして逃すなんて馬鹿らしいじゃねぇか。だったら俺は相手を選ばずに平等に相手をしようって思ったんだよ。ま、犯罪者には鈍一本売る気はねぇがな。」
うーむ。
どうやらこの人が特別なようだ。
でも、だからこそギルドに公認店として認められたのだろう。
選り好みするような人の店が公認店になるわけないしな。
「で、坊主はどんなのがお望みだ。大抵のものなら揃ってるぞ。」
「じゃあ、杖術とか棒術に使える物はないですか?」
「随分と変わった物を選ぶな。ちょっと待ってな。」
なんか俺の方に来てるんだけど、ここに来たいって言ったのはレイダさんなんだよね。
まあ、そのレイダさんは槍を眺めて目を輝かせてるけど。
と、そこでグラハムさんが一本の棒を持ってきた。
「こいつを振ってみろ。」
「はい。」
何やら黒光りして見た目は重そうなのに実際はそんな事なくむしろ軽い奴を渡され、振ってみろと言われる。
なので、一旦店の外に出て振ってみる。
店の中で振って商品に傷をつけて弁償なんて勘弁だからね。
で、振ってみるとやはりというか、少々重さが心許ない。
その事をそのまま伝えると、ふむ。と少しだけ考える素振りを見せると一本の棒を新たに持ってきた。
「こいつはどうだ?」
新たに持ってきた棒を受け取り振ってみるとしっくりときた。
これがいい。
「これがいいです。」
「そうか。そいつはヘビィメタルビートルの角を使った奴でな強靭さが売りだ。値段は56万………と、言いたいが特別価格で47万でどうだ?」
「いいんですか!? 買います。」
得た報酬の半分をパーティ用の資金としており、馬車や魔道具とかはそこから出しているがこれは個人的な買い物だから残った半分を分けた所謂小遣い的なお金から出す。
レイダさんもそういうお金でレッドスティンガーを買ったのだ。
とはいえ、結構減ったな。
また稼がないと。
俺は武器をあまり見る事が出来なかったけど、新しい武器を変えてホクホク顏になってる。
レイダさんはこの前買ったばかりで流石に新しく買うという事は出来なかったようだが、たくさんの槍に囲まれることができて嬉しそうだ。
行ってみてよかったよ。
たとえ、セフィアが新しい釘バットを物色してようとも、リリンがバールのようなものを試し振りしてたとしても、行ってよかったんだよ………きっと。
というか、そういう事にしよう。
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