第315話 ホルスターが欲しい。的なお話

「時間、結構余ったな。」

「そうだね。これからどうする?」


グラハムさんの店を出て適当な店で昼食を食べている。

移動時間や選ぶ時間もあるから武器屋は午後からと考えていたんだけど、予想以上にスムーズに済んでしまい時間が余ってしまった。

ちなみに蒼井は何も買わなかった。


「私、ホルスターが欲しい。」

「ホルスター?」

「うん。ほら、私が使ってる魔法銃ってさ、今はアイテムボックスから直接取り出して使ってるけど、やっぱりこういうのは見えるところに装備しといたほうがいいと思うんだよね。後、カッコいいし。」


後の奴が本命だろう、それ。

まあ、ホルスターからバッ! って取り出して早撃ちってのはやってみたい気もするし、ホルスターってカッコいいしね。

でも、この世界で銃なんて見たことないしホルスターなんて取り扱ってないと思うんだよね。


「でも、売ってるの?」

「うっ! い、いや、行ってみない事にはわからないし。それに、ここなら銃も出土してるかもしれないし。」


グラハムさんの店で何も買わなかったのは魔法銃が無かったからなのか。

でも確かにここならダンジョンの宝箱から魔法銃が見つかっててもおかしくないよな。

それにアリシアさんがこの世界にはないものを持ってくるとは思えない。

↑ 絶対なる信頼


「それもそうだな。それじゃ午後は革製品を取り扱っているお店でも探すか。みんなもそれでいいかな?」

「いいよ。」

「ん。」

「はい。」

「もちろんです。」

「問題ないわ。」

「みんなありがとね。」


午後の予定も決まったので食事を楽しむ。

やっぱりフロッシュ肉は美味いな。


昼食を終えた後は話し合った通り革製品の店を探す。

それにしても、迷宮都市なだけあって冒険者向けの店が多いな。

あっちにあるのは魔道具の店かな?

あっちは………しょ、娼館。

酒場も多いな。

あれは………奴隷商か。

お、あれは防具屋、それもお目当の革製品を取り扱っている店だ。

あそこに入ってみるか。


「いらっしゃいっす。本日はどんな物をお求めっすか?」

「え、えーと、その、さ、財布。財布とかってありますか?」

「財布っすか? まあ、ありますけど、防具じゃないんすか?」

「え、ええ。まだ困ってないですから。」


まさか入ってすぐに声をかけられるとは思ってなかった。

適当に店の中を見て探そうと思ってたから動揺してしまったよ。

でも、確かに防具屋で財布はちょっとおかしいよな。


「これなんてどうっすかね?」

「あれ? 柄とかないんですね。」

「これは原型っす。この後幾つかのデザイン案を見てもらってそれから掘るようにしてるっすから。人それぞれ好みがあるし、オーダーメイドを求める客にも対応できるようにしてるっす。」

「なるほど。ちょっとデザイン案を見せてもらってもいいかな?」

「オッケーっす。これがそのデザイン案っす。」

「これなんていいな。」

「お目が高いっすね。これは私の新作で昨日出来たばっかっすよ。」

「それじゃ、これで。値段は?」

「1万2000リムっす。掘るのに少し時間がかかるから支払いは明日以降でいいっすよ。」

「明日以降? 前払いじゃないのか?」

「今ちょっと手持ちがなくて買えないって人対策にそうしてるっす。そうすれば客は逃げないっすから。」

「な、なるほど。分かりました。」

「あ、これが引換書になるっす。次来るときに持ってきてもらえればお渡しするっすよ。」


ふぅ。

気付いたら購入する事になってたよ。

まあ、俺の財布はただの袋だしな。

新調するのも悪くないかな。


それと、俺が商談している間に蒼井の奴はちゃんとホルスターを探していた。

でも、どうやら見当たらなかったようで少し落ち込んでる。


「まあ、他にも店はあるし探せばきっとあるよ。」

「……うん。そうだよね。」


結局、その後も陽が傾くまで探してみたが、結局ホルスターは見つからなかった。

仕方ないので今日はそのまま宿に帰った。

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