第295話 丁寧な対応的なお話
あの村を出てから……なんて名前の村だっけ? 名前聞いてなかったわ。
まあ、いいや。
あの村を出てから4日が経った。
その間、一度も人が住んでいるところには出会わず、ずっと野営が続いた。
1日置きにベッドで寝てるとはいえ野営ばかりだと心休まらないし、そろそろ宿なりでゆっくりと休みたいものだ。
その思いが通じたのか道の先に大きな街が見える。
街の前にたどり着くと数組の馬車が街に入るための審査を待っていた。
今の内に荷物を出して、と。
丁度この前燻製肉を貰っているからそれも出して保存食感をさらに強める。
そして前の組が終わって俺たちの番になった。
ふふふ。
保存食に野営道具、それに武器を立てかけていかにも冒険者感を出した今の俺たちに死角はない。
「ようこそ、商業都市クルスラウトへ。乗ってる人はちょっと顔出して身分証を提示してくれ。うん。問題なさそうだな。それじゃ通っていいぞ。あ、宿なら大通りを進んで真ん中の広場を右に曲がったところに集中してるから。馬車はどこの宿も置けるから好きなところに泊まってくれ。」
あれ?
中見ないの?
折角色々出したのに。
レイダさんに馬車を動かしてもらい、俺はいそいそと出した物を仕舞っていく。
馬車が曲がり宿が集まっていると言っていた場所に出た。
大きな建物から普通の宿屋まで色々あり、呼びこみしている人が声をかけてくる。
しかし、どうせ泊まるなら風呂付きの方がいいなと思い大きめの建物の中から適当に選ぶ。
「風来亭へようこそ。宿泊ですか?」
「そのつもりだけど、一泊いくらかな?」
大きめの建物だから余りにも高かったら止めときたいので値段を聞く。
「お一人様、一泊4000リムからになります。一番高い部屋ですと2万リムとなりますけど、どうしますか?」
「……普通の部屋でいいです。ここってお風呂はありますか?」
「ありますよ。当宿自慢の大浴場が。」
「じゃあ、7人なんで3人部屋と4人部屋でお願いします。」
1人2万は高いです。
その分サービスはいいんだろうけど、一泊だけで14万も飛ぶのは勘弁してくれ。
「それですと、1万4000と1万8000で合わせて3万2000リムとなります。」
「じゃあ、それで。」
「では、当宿の説明をさせていただきます。」
「お願いします。」
「朝食と夕食はそれぞれ午前7時と午後7時にお部屋へとお持ちしますが、時間指定していただければその時間にお持ちさせていただきます。昼食は前日までに注文していただければご用意いたします。こちらは有料となります。そして先程質問していただいたお風呂は一階奥に男湯と女湯で別れております。場所については各フロアにある案内板か、受付にご聴き下さい。最後に馬車に関してですが、孤児院からの奉仕活動として子供が派遣されていますが、それがお嫌でしたら申し訳ないのですが、ご自分で管理してもらっております。移動もこちらでさせていただきますが、よろしいですか?」
「はい。お願いします。」
「分かりました。フィン、こちらの方の馬車を移動させておいてください。」
「分かりました。」
「では、こちらがお客様の部屋の鍵となります。それぞれ306号室と402号室となります。306号室が3人部屋で402号室が4人部屋となっております。それではご案内しますので、どうぞこちらへ。」
そう言って受付をしてくれたスーツっぽい格好をした女性が案内してくれる。
というか、凄いな。
ここまでのサービスがあるとは思わなかったよ。
まるで地球のホテルみたいな対応だな。
説明も丁寧だしビックリしたが、でも個人的にはルリエの実家の宿の方が気楽でいいと思う。
だからルリエ、少し落ち着こうか。
なんか、悔しそうにしてるから頭を撫でて落ち着かせる。
そしてそれぞれの部屋へと案内されたので最後に一番高い部屋はどう違うかを聞いてみた。
「一番高い部屋では、専属の者が付き、簡単な事なら対応させていただきます。それと、部屋と食事が豪華になり、部屋にお風呂が付きます。」
「そうなんですか。」
凄そうだな。
もう普通の部屋で泊まることになっているけど、帰る時にちょっと泊まってみたいかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます