第286話 ついに巡り会えた的なお話

夕飯の買い物、仕事終わり、そんな時間帯な為なのか人の往来が予想よりも多く露店も幾つか出ている。

それでも、カインの方がもっと多いけどね。

人も、露店も。

そしてその露店も串焼きのような歩きながら食べれて食堂や酒場のようなところで一杯やる前にちょっとつまむみたいな感じの物しか売っていない。


「なんか露店の商品、偏ってるね。」

「そうだな。カインに近いからもう少しいろいろあると思ったんだけどな。」


カインに近い分交易を盛んにできると思ったんだけど……それ程でもないな。

近過ぎて交易する理由がないのかな?

環境も一緒だろうしそうなると収穫できる物に差はないだろうし、名物となる物も無さそうだし価値はないのだろう。

まあ、勝手な想像だけど。


「食べる?」

「いつの間に……でも、いただきます。」


リリンがいつの間にか手にたくさんの串焼きを持っておりその内の一つを渡してきた。

食べてみると意外な事に味噌味だった。

確かにヨージさんから味噌ダレ貰ってたから何処かにはあるかもとは思ってた。

ひょっとしたら自作かもとも思ったけど。

だから何処かで巡り合えるかもと思っていたら、まさかこんな近くで見つけることができるとは……


「リリン! この串焼き、何処で買ったの!?」

「? どうしたの?」

「いや、これに使われてる調味料が……」

「普通と少し違う?」

「いや、そうなんだけど……そうじゃなくて!」

「急にどうしたのよ?」

「いや、これが……とにかく、アカネも食えばわかるから。」

「? まあ、食べてみるけど。一本ちょうだいね。」

「ん。」

「ん!? これって、味噌!?」

「そうなんだよ! 後少しで味噌汁が飲めるようになるってことだよな!」

「そうね。懐かしいわ〜、私のお母さんはお麩派なんだけど、私は普通の豆腐が好きでね。それでよく喧嘩してたっけな〜。」

「あの、何の話してるの? 急に2人ともテンション上げたと思ったらアカネちゃんはしんみりしだしたし。ひょっとして、何か変なものでも入ってた?」

「「変なものじゃない!」」

「うわぁっ!?」

「「あ………」」

「ご、ごめん。でも、そんなに凄いものなの?」

「凄いってわけじゃないんだけど、日本では当たり前だった物だからつい、ね。」

「そっか。懐かしくなっちゃったんだね。」

「うん。」


なんせ、こっちに来てから味噌を使ったものなんて味噌ラーメンしか食べてないからな。

後は出汁を取れるものだ。

個人的にはやはり鰹節がいいけど、あるかな?

取り敢えず海の方に行かないとな。

でも、それはいずれ、ね。

今は味噌の確保が先だ。


リリンが買ったという串焼きを売っている露店に行って調味料が売ってる店を教えて欲しいと言ったが、やはりレシピに関することだからと言われなかなか教えてくれなかったが、串焼きを買い占めて、その上で店を開くつもりがないことを伝えてようやく教えてくれた。


その調味料、ミェショと微妙に変化してたが、どうせ勇者かなんかから伝わった時に訛ったんだろう。

だから俺は味噌と呼ぶ。

それに呼びづらいしね、ミェショ。

そしてその味噌は普通に売ってた。

これなら多少多めに確保しても問題ないかな。


たくさん買うことが出来てホクホク顏で宿に戻ることができた。

女将に睨まれた事もどうでもいいことに思えてきたよ。

それよりも、明日からの野営時のご飯が楽しみだな。

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