第284話 村に辿り着いた的なお話
「セフィア、大丈夫か?」
「へ? 今日にどうしたの?」
「いや、さっきなんだか元気が無いように思えたから。」
「気づいてたの?」
「まあ、ね。アカネの事?」
「……うん。相手の事も考えずに自分の都合だけであんな事言っちゃってさ、僕って自分勝手だなぁ、って思っちゃって。アカネちゃんの事情もちゃんと知ってたはずなのにね。」
「アカネも言ってたけど、気にすることないと思う。少なくとも、セフィアは嫌がらせとか当てつけのつもりは全くなかったんだろう? 悪意が無いし、傷つけたわけじゃ無いんだったら謝れば済む話だよ。それにセフィアがむやみやたらと人を傷つける子じゃないって俺もアカネも知ってる。だからそんなに気にする必要はないよ。それでも気になるならアカネに謝って何かお詫びでもすれば良いんじゃないかな? それにそれでセフィアが気にして暗くなってるって知ったらむしろアカネの方が気にしちゃうよ。」
「う、うん。そうだね。ちょっとアカネちゃんに謝ってくる。」
ふぅ。
これで大丈夫だろう。
あ、ついでに他の子をお嫁さんにって誘うのも止めれば良かったよ。
セフィアがアカネに謝って、デコピンをもらうという事があったが、それ以外は平和そのもので、のんびりとした時間が過ぎていく。
そうして3時間が過ぎた頃に道の先に村が見えてきた。
「今日はあの村に泊まろうか。あそこなら夜営する必要もないだろうし。」
「そうだね。それがいいよ。」
そして村の前に着くのに30分程かけて門の前に辿り着いた。
その村は裕福とはいえないが貧しいというほどでもない平凡な村だった。
ラングエルトに行く時も、エルカに行く時も村には遭遇しなかったし異世界で始めての村だ。
ちょっとだけワクワクするな。
「そこで止まれ。済まないが中を検めさせてもらうぞ。」
「どうぞ。」
門の前にいた門番さんが馬車の中を見せてくれと言ったので正直に見せる。
なんせ、人しか乗ってないからね。
見られて困るなんて事は全く無い。
「は? え? なんだこれ? えっと、済まないが君達は何も持たずに何の用でこの村に来たのだ? 正直に言って意味がわからないんだが。」
「迷宮都市に行く途中に通りかかったから今日はここに泊めてもらおうって思っただけですが……」
「食料も何も持たずにか?」
「え、あー。えっと俺はアイテムボックスのスキルを持ってるんですよ。だから食料も野営道具も全部そこに入ってるんですよ。だから馬車は人を乗せるだけで済んでるんですよ。」
確かに何も持たずに馬車で移動って異様だよな。
ここから一番近いであろうカインも馬車で2日かかるし、その間何も飲まず食わずってのはどう考えてもおかしいからな。
というわけで素直にアイテムボックス持ちという事を伝える。
この状況で隠して変な疑いを持たれるのは面倒だしね。
「という事は、君達は冒険者か?」
「そうです。」
「そうか。それじゃ、一応ギルドカードを見せてくれ。身分証明として必要だからな。」
「分かりました。」
そうして全員がギルドカードを見せる。
「確かに本物のよ……う………ってBランクだと!? その歳でBとかマジかよ!?」
「マジなんです。ちょっと色々ありまして。」
本当に色々あったよ。
昇格試験の試験官に襲われたり、オークキング亜種とオークの群れに襲われたり、モンスターパレードに巻き込まれたり。
その所為でスピード出世だからな。
個人的にはもう少しゆっくりでも良かったんだけどね。
だって面倒な事に巻き込まれたくないから。
幸い、昇格したのがエルカだからカインでは何も起きてないし。
エルカの宴会では大変だったけど……
「驚いてすまない。その若さでBとかあまり聞かないからつい、な。それで全部本物のようだし、通行を許可しよう。」
「ありがとうございます。」
ギルドカードの確認も無事に済んで、通っていいとの許可を貰ったので馬を走らせて村の中に入っていく。
さて、宿はどこにあるのかな?
馬車を置けるといいんだけど……
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