第258話 必須スキルです。的なお話

帰るとなると一つ問題がある。

ユーリだ。

あいつは前に帰ろうとした時についてこようとした。

今回もまたついてこないとも限らない。

別にあいつのことを嫌いなわけではないがついてこられると面倒な事になりそうだと思うしセフィア達といちゃつく事も出来ない。

というわけで撒くことにした。

具体的には早朝………というよりも夜明け少し前に街を出る。

それと、出ることはハンナ義母さん、ヨーリスさん、グレンさんに既に伝えてある。

レウィンさんはうるさそうだしユーリ達に伝えないとも限らないのでこっちには明後日出ると嘘の日時を伝えてある。

だから気付かれないようにこっそりと寝ている内にエルカを出た。


「こちらスネーク。無事にエルカを出た。次の指示は?」

「……何やってるのよ?」

「いや、今暗いし、なんか、こう、気分で。まあ、MGSはやったこと無いから喋り方とか合ってるか分かんないんだけどね。」

「こんな隠れる場所の無い所でスネークごっこしてもなんの意味も無いでしょ。」

「………そうだね。」


ふざけるのはこれくらいにして真面目に行こう。



夜が明けて朝日を眺める。

異世界の日の出は初めて見るが広大な大地の奥から見える太陽が壮大で凄く綺麗だ。

これもある意味初日の出かな?


「ここら辺で朝ごはんにしようよ。」

「そうだな。じゃあ……あそこで。」


セフィアから朝食の提案を受けたので街道から少し外れたところで食べる事にする。

食器や調理器具を出して準備に取り掛かる。

俺はいつも通り薪拾い。

少し離れて拾っていると初めて見る魔物と遭遇する。

根っこが脚のようになっていてそれで移動するラフレシアのような大きな花の魔物。

というか、臭っ!

めっちゃ臭い!

ラフレシアは臭いって聞くけど異世界でも臭いのかよ!


「燃えとけ! ファイヤーボール!」

「ピギィィィ!」

「花の癖に鳴いてんじゃねぇよ! つかまだ臭い。さっさとここを離れよう。」


そうして臭いものを焼いて逃げるが残念な事に服とかに臭いが少し移ってしまった。

……モンスターとかドラゴンを狩るゲームの消臭できるアレが欲しい。

服をこっそりと着替えてセフィア達の所に戻る。

ルリエならなんとか出来たりしないかな、これ。


「ルリエ、ちょっといい?」

「なんですか?」

「いや、さっき魔物と遭遇したんだけどそいつがかなり臭い奴で服に臭いが付いちゃって……何とかならないかな?」

「ちょっと貸してください。」

「はい。」

「うっ! 確かにこれは臭いですね。デオドラント。」


ルリエが何かを言うと服が少し光る。


「これで匂いは消えましたよ。」

「今何したの?」

「今のは生活魔法のデオドラントと言って消臭する効果があるんですよ。」

「生活魔法?」

「無属性の生活系スキルの一つで生活に役立つ事を魔力を用いて行う魔法なんです。他にはクリーンとかピュアウォーターとかがありますね。」

「へー。そんなのがあるんだ。」

「宿屋の娘としては必須スキルです。」


えへんと胸を張るルリエがかわいい。


「それじゃあ、この防具もお願いできるかな? 防具は替えが無かったから我慢してたけどやっぱり臭くってさ。」

「分かりました。それじゃあ、いったん脱いで渡してください。」

「え? 着たままで出来ないの?」

「出来なくはないですが……その、お、お兄さんの匂いまで消えてしまうので……」

「あ、うん。分かった。」


どうやらルリエは匂いフェチの気があるみたい。

でも、俺も嫁達の匂いは安心できるし似た者同士ということか。


無事に消臭できたのでセフィア達に薪を渡して残りの調理を終わらせてもらう。

そして、全員に行き渡らせたらみんなでいただきますをして食べる。

今日のも美味しいです。

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