第232話 見たかったな……的なお話

最近は嫁達と全然出来ていない。

それなのにこんなに近くに愛する嫁達の寝顔があるとか、拷問すぎる。

宿ならまだしも人の家となるの流石に気恥ずかしくて無理。

このままだと暴走しかねない自身の情欲を抑える為にも俺はお外で素振りをしている。

目を閉じて、精神統一。

悪霊退散! ……じゃなかった、煩悩退散!


ゴッ!


「うがっ!」


ん?

悪霊でも倒したか? それとも煩悩?

目を開けてみるとそこには茶髪にたぬ耳たぬ尻尾の男の人が倒れていた。


「あちゃ〜。」


「レント! すごい音したけど、大丈夫!?」

「セフィア。うん。俺は……大丈夫なんだけど……」

「グレン兄!?」

「知り合いか?」

「うん。知り合いっていうか、一番上の兄なんだけど……」


どうやら俺は義理の兄を倒したようだ。

テッテレー、れんとはぎりのあにをたおした。

………ってふざけている場合じゃ無いな。


とりあえずグレン兄? さんを家の中に運ぶ。

……家の中にしまうっていう表現が浮かんだのは内緒だ。


グレン兄? を家に運んだものの誰も起きてこないな。

まあ、いいや。

とりあえずソファーにでも寝かしといて、朝ごはんの準備でもしよう。

泊めてもらうわけだしこれくらいはしないとね。

食材の保管庫なんかに無いものはストレージから使う。

しかしここん所買い物をするわけにはいかなかったしな〜、そろそろ無くなる物も出てくるだろうし街を見て回る時にでも補充しよう。

まあ、それはセフィアも分かってるだろう。

そうしてセフィアのお手伝いをしているとハンナ義母さんが起きてきたようでパタパタという足音とともにやって来た。


「あら、いい匂いがすると思ったらセフィアが作ってたの?」

「うん。そうだよ。待っててね。もうすぐ出来るから。」

「それじゃあ、お言葉に甘えようかしら。ってあら? なんでグレンは寝てるのかしら?」

「あ、それは……」

「す、すみません。素振りしてたら、その、当たっちゃったみたいで……」

「あらそう。でも、あんまり気にしなくてもいいわよ。わざとじゃないんだし。」

「ありがとうございます。」

「それにしても、あのセフィアがこんなに朝早く起きれるようになるなんてね。昔はなかなか起きなくて、昼まで寝てることもあって「お母さんご飯は〜?」って言ってきたこともあったっけ。」

「わーわーわーー! ちょっ、なんでレントの前で言うの!?」

「そうなんだ。それは……見てみたかったかも。」


セフィアにもそんな時代があったのか……なんかそれはそれで見てみたいな。

きっとかわいいし。


そんなこんなありつつも朝食の準備をしていると次々と起きてきて朝食の時間となる。

そしてなかなか起きないグレンさん? を放置しつつ朝食を食べる。

レウィンさんは久しぶりの愛娘の手料理という事で感極まってなんだか泣いているが、みんなスルーしてる。

その後、朝食を食べ終えて今日これからどうしようかとまったりしながら相談していると道場破り? がやって来る。

律儀にたのもーとか言ってるし。

というかここって道場だっけ?


何事だと外に出ると何やら法被のようなものを着た20人くらいの男女が人だかりを作っていた。


えーと、アイドルのコンサート会場はここじゃないんですが………。

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