第225話 いってきます的なお話
「おや、今日はどうしたんだい?」
紅の帽子亭に入った直後にアメリタ義母さんがいて声をかけてきた。
「ちょっとセフィアの故郷に行くことになったからその挨拶をしようと思って。」
「おや、そうかい。それじゃあ家の管理とかしてあげるよ。」
どうしよう。
転移で毎回帰ってくる予定だから管理とか必要ないんだよね。
でもそれを言うべきか否か。
まあ、言わなくてもいいか。
夜だし流石にそんな時間まではいないだろう。
鉢合わせしたらその時考えよう。
………って宿屋の仕事もあるのにさらにそんな面倒なこと任せられるか!
「いえ、大丈夫ですよ。リリンが転移魔法を覚えたから夜は帰ってくるので。わざわざ危険な夜にそのまま居座る必要ないですから。」
「なんだ。そうなのか………い………転移魔法!? レア中のレアじゃないか。どうやっておぼえたんだ!?」
「近い近い。」
「す、すまん。でも、それ程珍しいスキルなんだよ、転移魔法は。」
「そうなんですか。えっと、そんなわけなんで管理はしなくていいですよ。それに宿の仕事で忙しいのにそんなことまでさせられませんよ。」
「そうかね。それじゃあ、お土産でも期待しながら帰ってくるのを待ってるよ。」
途中冒険者の顔が出てたな。
まあ、挨拶も終わったし次に行くか。
◇
「そうですか。まだこの街に来て半年も経ってないので恐らくないとは思いますが、一応指名依頼が来ないようにしておきますね。」
「ありがとうございます。」
ギルド………というかセラさんに事情を説明して離れることを伝えると色々と手配してくれるようだ。
でも、指名依頼をしてくれそうな知り合いなんてアメリタ義母さんくらいしか思い浮かばないんで必要ないと思う。
「それと、不在を伝えておきたい方はいますか? もしいるのなら伝えておきますが。」
「そうですね、ではもしもシア……アレクシアとエルナが聞いてきた時には事情を説明してくれますか?」
「分かりました。では、お気をつけて。後、お土産は大歓迎です。」
「あはは。分かりました。」
まさかそんなことを言うなんて。
でも、親しみ易いからこっちの方がいいかな。
「それじゃ、挨拶も終わったしそろそろ行くか。」
「シアとルナは?」
「さっきも言ってたけど、なんで直接言わないの?」
「いや、どこに泊まってるのか知らないし。」
「あ〜。そういえば聞いてなかったね。」
「そういうこと。それじゃあ、行こっか。」
「うん。」
「ん。」
一通り挨拶を終えたので街の門へと向かう。
誰か忘れてる気がするけど、思い出せないんならそれ程重要じゃないし、気にしなくてもいいよね。
「あ、蓮斗さん、セフィアさん、リリンさん、ルリエさん、レイダさん、アカネさん、蒼井さん。待っていましたよ。」
「アリシアさん! どうしてここに?」
「いえ、セフィアさんの故郷に向かうというのでお見送りをと思いまして。」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
「いえ。こういう時に見送りがないと寂しいですからね。それとこれを。お弁当を作ったので途中で食べてください。」
「わあ。ありがとうございます。」
「アリシアさん。ところでレイカーさんはどうしたんですか? 姿が見えないけれど、何かあったんですか?」
「気になる。」
セフィアがレイカーさんはどうしたのか聞いた。
それは俺も気になってたんだよね。
お見送りなら来てくれてもいいと思うんだけど。
「彼女は今忙しくて手が離せないんですよ。その代わりと言ってはなんですが、こちらを。あの子が用意したアクセサリーです。こちらはスピードが上がるので身につけてあげてくださいね。」
「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」
スピードが上がればそれだけでは移動が早くなるし、盗賊やら馬鹿の手先がやってきても逃げやすいし非常にありがたい。
「それじゃあ、そろそろ行きますね。」
「はい。ちゃんとケリをつけるんですよ。こういった禍根を無くすのも、お嫁さんを大切にするには必要なことですから。」
「はい! 頑張ります。」
「いってらっしゃい。」
「「「「「「「いってきます。」」」」」」」
アリシアさんと別れて俺達は街を出る。
次はセフィアの故郷だ。
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