第224話 セフィアも馬鹿呼ばわりしてる的なお話
「それで、遠出すると言っていたが、どこに行くんだ?」
「それについてまずはこれを読ん………いいよな、セフィア? 」
「うん。」
「これを読んでもらってからで。」
「分かった。」
俺はセフィアに届いた手紙をリィナさんに渡して、まだ立っていたから俺は椅子に座って読み終わるのを待つ。
「なるほどな。所でセフィアの故郷というのはひょっとしてあそこなのか?」
「多分想像通りだと思います。」
「あそこ? それってどこ?」
「この世界には幾つもの国と町があってそのどこにでも獣人が住んでいるってのは知ってるよね。」
「ああ。」
「で、その獣人を取りまとめる集落というか自治領が各地にあるの。僕はこの国、グラキアリス王国にある自治領の出身なんだ。」
「自治領? でも族長の馬鹿息子がって言ってたのに?」
「その自治領では複数の種族が住んでいて、その種族を纏める族長が複数いて、その族長達によって治められてるの。」
「なるほどなぁ。つまりこの馬鹿は狸人族を纏める族長の息子ってことか。」
族長って言ってたからてっきり小数部族的なのかと思っていたよ。
狸人族オンリーの村見たいのをさ。
「それで、昨日になってその馬鹿の手の者が襲ってきて。もともと決着をつけようって事になってて暫く訓練とかしたらこちらから出向こうかなって話になってたから丁度いいし明日に出かけようとしてたんです。だから申し訳ないんですけど稽古の方はこの件が片付いたらでいいですか?」
セフィアの口から馬鹿という単語が出てくるなんて。
というかあの優しいセフィアから普通に馬鹿呼ばわりって、どんだけ馬鹿なんだよ。
「むぅ。そういう事情ならば、仕方ない……か。個人的にはついて行きたいと思うのだが家族の問題に部外者が立ち入るわけにもいかないしな。だが、絶対に無事に帰ってくるのだぞ。」
「それはもちろんです。」
「うむ。では私はそろそろ帰らせてもらうとするか。ああ、それとこれは土産だ。大切に使ってくれると嬉しい。」
何かが入っているのであろう風呂敷包みをテーブルに置くとそのままリィナさんは帰って行った。
リィナさんが帰って行ったので俺たちはお土産を開けてみる。
すると中にはハンカチやスカーフなどの布製品が入っていた。
これらは日常的に使うしありがたいな。
土産の定番の菓子類だが、流石に日持ちするような工夫はできないのだろう。
帰ってきた時には腐った何かにしかならないし、置物系も扱いに困るからいいチョイスだと思う。
土産物を分配し終わってまた暇になった。
外は以前雨が降っているし結局この日はラノベを読んだり、昼食の準備をしたり、ラノベを読んだり、昼寝をしたり、ラノベを読んだり、掃除や夕食準備をしたり、ラノベを読んだりして過ごした。
もちろんあっちの方も忘れてない。
◇
夜が明けてすっかりと快晴になっていた。
多少地面がぬかるんでいるが、雲ひとつない空はまさしくお出かけ日和という奴だ。
「そろそろ出掛けるか。」
「うん。」
「ん。」
「はい。」
「わかりました。」
「分かったわ。」
「オッケー。」
みんなも準備できているようだし、鍵をかけて家を出る。
「ねぇ、なんでここに来てるの? 街の外じゃないの?」
「その前にアメリタ義母さんに挨拶しないと。後、ギルドにも出かけることを伝えるから。」
「……そういうのは事前に済ませとくべきじゃない?」
「……分かってる。」
本当は昨日の時点でやっときたかったんだけど、雨降ってたし………というのは表向きの理由で実際はただ単に忘れてた。
そういえばフランの方は今どこにいるんだろう?
もしも俺達がいない時にやってきたらどうしよう。
あいつはこっちに知り合いなんていないし、ふらっとやって来られても応対できない。
書き置きでもしとくか?
いや、きっと大丈夫だろう。
夜になったら寝りに帰ってくるし、そもそもまだ遊びまわってるはずだ。
多分大丈夫だろうと思い込みながら、俺達は紅の帽子亭に入った。
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