第174話 余興です。的なお話
気を引き締めたがそれでも、パーティーは続く。
立食パーティーで料理を食べてるが、手元の皿の料理が無くなったので少し離れたところの料理を取りに行くとそこには綺麗な女性と小さな女の子がいた。
冒険者という荒事主体の職業の人が開くパーティーにはおよそ無縁そうな二人だ。
いや、まあ俺の嫁も美少女だし今の服装が初見ならいいところのお嬢様に見えるけど。
でも、子供連れという時点で冒険者ではないだろう。
そして、なんとなく、この組み合わせに心当たりがある。
そう思って声をかけてみた。
「あの、ひょっとしてカイルさんの奥さんですか?」
「そうですけど、貴方は?」
「あ、俺はカイルさんのパーティメンバーのリィナさんに教わってたりしてて、その縁で知り合って。」
「そうなんですか〜。私はカイルの妻のアンナと言います。こちらは娘のシュリと言います。」
「Aランク昇格おめでとうございます。カイルさんと前に話した時に随分と自慢してたので少し会ってみたかったんですよ。」
「自慢ですか〜。どんな事を言ってたんですか〜?」
「そうですね、美人で優しくて料理がとても美味しいと。後、怒るとすごく怖いとも言ってましたけど、すごく幸せで、だから頑張れるって。」
「怒ると怖いですか〜。これは帰ったら問いたださないとですね〜。」
あ、なんかマズった?
ごめんなさいカイルさん。
「お兄ちゃんも冒険者さんですか?」
「そうだよ。ほらこれ。」
シュリちゃんが聞いてきたからギルドカードを見せる。
「パパと同じカードだ。」
「そうだね。でもシュリちゃんのパパの方が強いんだよ。」
「そうなんだ。」
「そうだよー。シュリちゃんのパパはこの街でもとても強くて人気者なんだよ。」
「さすがパパ。」
シュリちゃんと話してるとセラさんが奥の方にある壇上に立ち声を出す。
こんな騒がしいところまで届くなんて、あの持っているマイクっぽい道具の効果かな?
「場も温まってきた所でちょっとした余興をしましょう。黄昏の獅子のメインアタッカーのアベルとタンカーであるダインと腕相撲をしてもらいます。もしもこの二人に勝てたら特別な料理が食べられるこの店の優待券を進呈します。流石にこの場の全員となると疲労がたまるのでそれぞれ五人ずつ、計十人までとしますね。我こそはという方はこちらに来てください。」
特別な料理が食べられる……か。
なんだろう。
この店の料理は美味しいから興味があるのだが、流石にあの二人に勝てるかというと無理としか言えない。
しかし、なんだろう?
この、側から感じる期待の眼差しは?
「お兄ちゃん、頑張って。」
これは頑張るしかないでしょう。
無理でもやるしかない。
壇上には十八人。
流石にAランク相手に勝てると思う人は少ないようだが、それでも十人は超えている。
さて、どうするのかな?
「どうやら少し多いようなので……え、はい。分かりました。えー、お二人の許可が出たのでこの十八人が挑戦します。」
二人が大丈夫と言って全員がやるようだ。
疲れてる方がいいから後の方にやりたいな。
しかし、そう思うのは他の人も同じで、やる気に満ち溢れている三人以外は誰が先に行くかと牽制し合っている。
やる気に満ちている三人はあっさり負けたしね。
その状態に焦れたのかアベルさん達が次の挑戦者を指名しだした。
そして次々に打ち倒していき次に指名されたのはクルトだ。
あ、足が地面から離れてる。
そしてクルトの次が俺なんだが、勝てる気がしない。
いや、俺のステータスは恩恵のおかげでなかなかのものだ。
それにこれまでの連戦で疲れてるだろうからイケる。
イケませんでした。
他の人よりかは多少は粘れたと思うけど、簡単に負けてしまった。
Aランクって凄いんだな。
そのまま全ての人に勝ってしまうアベルさんとダインさん。
これって企画倒れじゃないのか?
まあ、盛り上がってはいるけど。
「えー、どうやらアベルとダインの完封で終わったようですね。流石はAランクといぅたところでしょうか。勝者がいないとなればこの優待券はお二人に進呈した方がいいのでしょうか?」
「それなんだが、こいつにもやってくれねぇか? 一番粘ってたしよ。」
「それもそうですね。では、この優待券はアベルとダイン、そしてオークキング亜種を一撃で屠ったこともある冒険者レントに進呈します。」
はい?
なんで?
というか、ここには当分来ないと思うから、貰っても困るんですけど。
いや、挑戦したのは俺だけど……まあ、いっか。
貰えるんなら貰っとけば。
ハードジャイアントの依頼が終わったら祝勝会もしくは残念会みたいな感じで来ればいいし。
その後もパーティーは続き、他の冒険者にもみくちゃにされたり、シュリちゃんに凄いと言われたりとそれなりに楽しんだ後、明日のこともあるので、アベルさんにうどんとめんつゆを調理方法を伝えつつ渡してから家に帰る。
明日から移動でしばらく帰れないから三人の内ルリエと特に愛し合ってから眠りについた。
おやすみなさい。
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