第171話 うどんです。的なお話

溶けている壁や焦げた地面なんかの土を撤去したり、焼き尽くされて残った的の僅かな灰なんかを掃除する。

隅の方にちょろっとだけ生えている雑草なんかも抜く。

そんな感じで訓練場の整備をするとお昼頃になった。

丁度いい時間になったし、仕事も終わったので解放された。


お昼ご飯は黄昏さんの結果発表を聞いてから食べることになった。

その結果だけど、アベルさんが言っていた通り無事に昇格した。

そしてお祝いに関しても予定通り今日やることになった。

場所はこの街でもトップクラスのお店だそうで、流石はAランク冒険者と言わざるをえないな。

ちなみに安くても一食一万くらいするような店らしい。

紅の帽子亭のお昼が百リムだからその百倍というのだから恐ろしい。


黄昏さん達と別れてシア達と一緒にギルドで昼食を食べる。

当然というべきか、みんなここのスープを頼んでいた。

やっぱり美味しいもんね。


昼食を終えるとみんなで街に繰り出す。

目的はアベルさん達黄昏さんへの祝いの品を買うためだ。

しかし、俺達は六人の好みなんかは分からない。

リィナさんなんかはリリンに聞けば分かるだろうが、それでも残りの五人の好みは分からないままだ。

だから六人が使える物とか食べ物の方がいいのでは、という話になった。

そこから更に絞り込む為に相談する。


「それで、六人が使える物や食べ物ってことだけど、どうする?」

「そうね、やっぱり冒険者なんだしポーションとかは?」

「でも、僕達が使う物よりも効果が高い物を普段から使ってるだろうし、そうなるとかなり高価だから……」

「六人分だとキツイ。」

「あの、食器、とかは?」

「冒険中に使う奴ってこと?」

「そ、そうです。」

「でも、高いのは使いづらいだろうし、安いのは渡しづらくない? それにそういうのは持ってそうだし。」

「やっぱり料理が良くないかな? それなら食べるだけだから使い易さも関係ないしさ。」

「でも、これから行く所ってかなりのお店よ。その後に渡すの?」

「そっかぁ。確かにそれは渡しづらいね。」

「うーん。じゃあ、うどんとかは?」

「「「「うどん?」」」」

「そう。俺の故郷の伝統的な料理だよ。作り方も知ってるし材料も単純だから。」

「それじゃあ、それで。」

「じゃあ、今から家で作るってこと?」

「そう。それにアベルさんがアイテムボックスを持ってるから携帯出来るから。」

「それじゃ、今から作ろう。」


そんなわけでうどんを作ることになった。

材料も小麦粉と水と塩だから手元にある。

唯一の問題がつゆだ。

別につゆでなくてもポン酢とかゴマだれとかでも食べれるけどその辺は街の店を見て考えよう。

最悪、ラーメンのタレと椎茸なんかから出汁を取ってそれを砂糖とかで味を整えるか。


そうして街中を巡ると酢が見つかった。

味噌やゴマだれなんかは見つからなかったけど、酢ならば他に柑橘系の汁を混ぜればいいかな? と思っていたらなんと、醤油が見つかった。

醤油の値段がそこそこ高いけどこれならば刺身が食える。……じゃなかった。醤油ならばここに出汁と砂糖で味を調えれば立派なめんつゆになるはずだ。


醤油が手に入ったことでホクホク顏をしながら家に帰る。

家に着くと早速作ろう。

まずは小麦粉と塩と水を用意して、塩を水に溶かす。

そして小麦粉に塩水を少しずつ入れて混ぜる。

最初はボソボソだが、捏ねていくうちに纏まり、それが一塊になったらコシを出す為に更に捏ねる。

これはステータスが高くなったのでかなり楽だ。

そして生地を寝かす間に椎茸のようなキノコで出汁を取り、醤油と砂糖を加えてめんつゆを作る。

本当は鰹節が良いんだけど見つからなかった。

それなりの味になった。

そして寝かしておいた生地を伸ばして切る。

後は茹でるだけだが、これはアベルさん達に任せよう。

それとは別に試食の為に少し茹でてみんなで食べると不思議な食感だが美味しいとなかなかに高評価だった。

これなら渡しても大丈夫かな。


それにしても、まさか某鉄腕な走るテレビの影響で作るようになったうどんが役に立つなんて。

なんか楽しそうだったんだよね、あれ。

料理はあんまりできないけどこういう力がいるのは覚えたんだよね。……覚えさせられたとも言うが。


なにはともあれこれで渡すものはできたことだし後はルリエ達が帰ってくるのを待つだけだな。

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