第102話 新しい微ユニーク的なお話

「アベルさん!なんすかあれ!?」

「あー、オークキング亜種か。よし。お前ら一遍戦って来い。」

「はい!……ってならないから!だってアレBランクじゃないですか!?勝てるわけないじゃないですか!?」


俺達がアベルさん達に詰め寄ると溜息を吐きながらこう言った。


「お前らな〜、普通の護衛依頼の時にイレギュラーが起きただけで逃げんのか?護衛対象に縋るのか?今戦わなかったら今後似たような事が起きた時に戦う事が出来なくなるぞ。大丈夫だ。本当にやばくなったら俺らが助けてやるから、ドンとぶつかって来い。」

「「「「はい!」」」」


助けてくれると言ってたし信頼してぶつかってくるぞ。

でも念の為にスキルガチャやっとこう。

いいのが出るかは分からないが出来る事はするべきだ。


「スキルガチャ!」


《スキル 重唱(微ユニーク)を取得しました。》


久し振りのユニークだ。……また微だけど。

一体どんなスキルなんだ、恐らく詠唱が関係しているだろうけど。

とはいえ、直ぐそこまでオークキングが来ている以上あまり悠長にしてられないし、急いで鑑定しないと。


〈重唱〉

言の葉を重ねることで魔法をより強固に強力にすることができる。

但し、言葉を重ねる毎に消費魔力は増大していく。

そしてもしも魔力が足りなかった場合、体力を魔力に変換して使用する。


これ、結構強力じゃね。最後のがちょっとこわいが、これなら奴も倒せるかも。


「アレクシアさん!悪いんだけど雑魚の相手をお願い!そしてセフィアとエルナさんには足止めをお願い。魔力を限界まで使って一番強いのをあいつに撃ち込むから!」

「了解。」

「分かった!」

「わ、わかりました。」


三人が賛成してくれた。

後はひたすらにイメージを固めるだけだ。

でもあいつを相手に長引かせるのはセフィア達には負担が大きいはずだ。

だから狙うのは一撃必殺。


使うのは火属性。

広範囲にばら撒く必要はない。

頭なら一撃で殺せるはずだ。

兎に角圧縮して貫通性を上げよう。

形状は槍だ。

ただひたすらに貫く事を追求した槍だ。


俺がイメージを固めてる間にセフィア達がオーク達と接敵し戦闘が始まった。

アレクシアさんは弓で確実にヘッドショットを決めていき次々にオークを沈めている。

セフィアは土魔法でオークキングを覆うようにして拘束している。

エルナさんは影縛りを使っているのか、影がオークキングに絡みついている。


俺も急がないと。

重唱に使うのは火力を上げる猛れという言葉、躱されないよう速度を上げる為に疾れという言葉、貫通性を上げる為に穿てという言葉を使おう。


あっ!オークの中にオークナイトが混じっている。

ヤバイかも……と思ったらアレクシアさんが発光しながら凄い射撃をしてる。

あの発光はなんだろうとは思うが、そんな余裕はない。


手を掲げて、詠唱を開始する。


『炎よ、槍となりて敵を撃ち貫け。フレアランス』

「スキル重唱発動!」

『猛れ猛れ、猛れ炎熱、炎猛りて業火となれ。疾れ疾れ、疾れ炎槍、音を超える閃きとなれ。穿て穿て、穿て、穿て全てを貫く閃光と成れ。今ここに言の葉を束ね大いなる力と成さん。魔法昇華! 完成!劣化炎槍フレイムガングニール!』


「レント!拘束が破られた!」

「こっちも、もう…無理。」


セフィア達がそう言ってきた。


「こっちも今完成した。」


俺の手の上には三メートルくらいある激しく燃えている炎の槍が浮いている。

その形状は普通のランス系の魔法と違い中央に大きな刃があり、下の部分に円形の装飾のようなものがありその装飾の左右からも切断可能な形状の刃がある。


「一瞬でいい。奴の気を引いてくれ!」

「分かった!」

「やって…みる。」


そう言ってセフィアは土魔法で壁を作るが、鉈で両断された。

しかしそこへすかさずエルナさんが火魔法で目眩しをした。


今だ!


そう思った俺は残った魔力をすべてつぎ込んで更に炎槍を大きくした後、投げつけるようにしてオークキングへと撃ち込んだ。


真っ直ぐ高速で突き進む炎槍。

ギリギリで反応したオークキングが鉈で防御する。

一瞬の拮抗の後、俺の炎槍が鉈を叩き折りそのままオークキングの頭を消し飛ばした。

そして炎槍はそのまま林の奥へと消えていった。


勝っ…た?

そう思った途端に身体から力が抜け俺は前のめりに倒れる。


ガサリ!という音と共に林からオークキング二匹に大量のオークと十匹以上のオークナイトが現れた。

その様子を一言で表すと、絶望。


そして俺達の心を絶望が黒く染め上げるが、俺達の前にアベルさん達が出てくる。


「良くやったな、お前達。後は俺らに任せろ。」


そのアベルさんのセリフを聞いた俺はそのまま意識を失ってしまった。


次に俺が目を覚ましたら全ては終わっており俺は馬車の中でセフィアに膝枕をされていた。

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