第88話 ナンパは亡くなった的なお話
ギルドに着いた。
今日これから試験だと思うと少し緊張する。
深呼吸をして心を落ち着かせてからギルドへと足を踏み入れた。
ギルドの中は相変わらず賑やかだが、とある一角だけは静寂と緊張感が場を支配していた。
そこには男女は勿論、種族もいくつか別れている。
パッと見男8:女2の割合か。
俺もセフィアも基本前衛というか、ぶっちゃけ三人とも前衛だ。
一応三人とも魔法を使えるから前衛、後衛分ける事もあるけどやっぱり専任の人がいた方が安定すると思うんだよな。
それに回復魔法や支援魔法を使える人も欲しいし。
そう考えて集まっている人達を見てそれっぽい格好の人を探そうとしたところでふと思った。
誰がEランクで誰がDランクなんだ…と。
うーん。こんな事ならもう少し他の冒険者と仲良くしとくべきだった。失敗した。
結局、職員さんがやって来ても臨時パーティ候補を決められなかった。
どうしよう。
なんて考えている間にも話は進む。
いかんいかん。話をちゃんと聞かないと。
話を纏めるとこうなる。
今回のDランク昇格試験の依頼は聞いていた通り護衛依頼だ。
護衛対象はなんと黄昏の獅子のメンバーさん。
護衛依頼といってもこれが試験である以上ちゃんとした依頼を斡旋するのは流石に不安という事で、護衛対象を実力十分の冒険者を試験官兼護衛対象とする事で護衛依頼として扱うのだそうだ。
因みに依頼目的は最近有名になって来た麺料理を食べたいからだそうだ。
そして目的地はここ、カインの街があるドラーエン伯爵領の首都ラングエルトで、二日掛けて行き二日滞在したのち、二日掛けて帰るという日程。
Cランク昇格試験依頼は初心者ダンジョンのクリア報酬だそうだ。それもソロアタック時のみの特別なもの。
初心者ダンジョンに入れない人は別の依頼を斡旋するとのこと。
まあ、リリンには関係無いが。
そして何故この二つのランクの試験を同時にやるのかというと模擬戦の相手をするのが黄昏の獅子の人達。
実力を十分に見る為にはCランクでは不足な為Bランクの冒険者がやる必要がある。
護衛対象の方は最悪一人で受験者を守れる実力が欲しいということでBランク以上がやること…とギルドの規約にあるそうだ。
この二つを同時にやった方が効率が良いということで、どこのギルドでもCランクDランク昇格試験は同時にやっている。
これらの説明が終わった後は前回と同じように訓練所とギルドホールで別れるが、今回は護衛依頼ということで人数による不利がある為、模擬戦の申し込みは今から一時間後まで猶予があると最後に教えてくれた。
うん。これなら最悪の結果にはならないだろう。
セフィアに手を出そうとしてこんにゃく人間が増えるみたいな結果には。
あ、これまでのこんにゃく人間は背骨を模した金属パーツを内蔵した特注の防具を着て漢女生活をしていると風の噂で聞いたぞ。
◇
一時間の猶予があるからか、ギルドホールに多くの受験者が集まっている。
既に模擬戦を申し込む者は訓練所に行き、Cランク試験依頼組は受付の方に向かっている為ここに残っているのは現在Eランクで護衛依頼を悩んでいる人達だ。
つまり、今から臨時パーティを組むことになるのだが……な、ナンパ男共がうぜぇ。
お前ら最初の緊張感はどこ行った。
確かにセフィアはかわいいし、腰もウエストも脚もスラリとしててそれでいて胸もバストもその存在を確かに主張しており、全体のバランスがとれた最高の美少女だよ。
だからって俺を無視してナンパしまくるかな(怒)。
ムカついたのでセフィアは俺のものだと主張する為にセフィアと白昼堂々、公衆の面前でキスをする。
セフィアは最初驚いていたけどすぐに応じてくれる。
嫉妬の視線が俺に突き刺さるが知ったことじゃない。
キスをしたらナンパは亡くなった…じゃない無くなっただ。
けど、俺たちの周りから冒険者がいなくなってしまった。
いきなりキスしたことを謝るが「僕も誘いに辟易していたし、ちょっと恥ずかしかったけど、気にしてないよ。」とのお言葉を貰った。
とはいえ、これでは護衛依頼どころではないので訓練所に向かおうとしたら後ろから声を掛けられた。
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