第89話 断崖絶ぺ…げふんげふん。的なお話
振り返って声の主を確認すると絶賛キス中のバカップルだった。
え?なんだろう。
「君たちもなかなかのラブニストじゃな〜い。でも、まだまだじゃな〜い。僕たちの様なザ・ラブネストを目指してもっと精進した方がいいんじゃな〜い。」
「だしだし〜。」
そう言って頭のおかしいバカップルが去っていった。
え?本当に一体なんなの?
ていうかニストがネストに変わっていたんだけど。
ネストって巣って意味じゃなかったっけ?
なんていうか、本当、なんだろう。
上手く言葉にできないし、本当になんだろう。
セフィアの様子を見てみるとやっぱり上手く言葉にできないようで呆れてるようなほうけてるような微妙な表情をしていた。
よくわかんない感情を上手く飲み込めないでいると二人組の女性に声を掛けられた。
「ちょっといいかしら。」
「ふえ?」
「ふえ?って。随分と気の抜けた声を出すわね。でもまあ、あんなのに遭ったばかりだとそうなるのも仕方ないかもね。」
「えっと、それでなんのご用でしょうか?」
「用なんて一つに決まって…なかったわね。さっきの変な連中がいたわね。それで用というのは、私達と組まないかしら?っていうお誘いよ。」
そう言われて改めて二人組を見てみる。
声を掛けてきた女性は金色の長い髪に翡翠のような瞳をし、冒険者です。という感じな服装をしている。
胸は絶ぺ…げふん、慎ましい。
そして何よりも特徴的なのはその尖った長い耳。
そう伝説のエルフ耳だ。
草っぽい服は着ていないがかの有名なエルフさんだ。
もう一人は浅黒い肌と黒い髪に額に宝石のようなもの。
こちらもザ・冒険者な格好をしている。
胸は断崖絶ぺ……何も言うまい。
そしてこちらも特徴的な部位を持つ。それは頭部に沿う様に生えている角にコウモリのような翼に先端がハート型の尻尾。
所謂魔族的な人だ。
主人公の仲間の定番と敵の定番という独特な組み合わせ。
この世界にも魔族っていたんだなぁ。
「それで、どうなのよ。組むの、組まないの?」
「ちょっと相談する時間を下さい。」
「分かったわ。」
魔族的な人が普通にいるから多分何も問題は無いんだろうけど、一応聞いといた方がいいよな。
ゲームやラノベでは基本敵だし。
「セフィア。こっちの世界で魔族ってどういう種族なんだ?」
「どうって言われても、普通、かな。」
そりゃそうだ。
こっちの世界の魔族しか知らないんだもん。
レイカーさんに借りたラノベには魔族って出てこないしな。
「えっと、俺の世界には言葉を持つのが人族しか居なくてな。その分空想で色々な種族や生物を物語に出したりしてて、それで魔族って世界征服を企む魔王の配下っていうストーリーが多くて、だからこっちの世界の魔族はどうかなって思って。」
「う〜ん。百三十年くらい前までは当時の魔王様が戦争を仕掛けてたけど、それだって食糧不足からだったし今は交易も盛んでそういう感じじゃないよ。」
「そうなのか。それじゃ特に問題はないな。セフィアはどう?彼女達と臨時パーティを組むのに反対だったりする?」
「全然。問題ないよ。」
「そうか。それじゃ彼女達と臨時パーティを組むってことでいいんだね。」
「うん。」
セフィアとの相談も終わったので彼女達に向き合う。
「で、どうなの?」
「よろしく頼むよ。」
「そう。こちらこそよろしくね。私はアレクシア。こっちの子はエルナ。」
「レントだ。」
「セフィアです。よろしくね。」
エルフさんのアレクシアに魔族のエルナさんね。
なんか凄いな。
臨時パーティだけど、人間(異世界人)に獣人にエルフに魔族。
物によっては排他的なエルフと描かれたり、敵になっていたであろう魔族とおなじパーティになれるんだもん。
きっとアリシアさんの管理がしっかりしてるからなんだろう。
どうしよう。
これから試験なんだけど、凄いワクワクしてる。
エルフと魔族と同じパーティを組むなんて考えたこともなかったし仕方ないかもだけど、落ち着かないと。
結局、心を落ち着けられたのは護衛対象の人が来てからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます