第48話 進む道的なお話
リィナさんが不機嫌であまり近寄りたくないと思わせるオーラを感じるが声を掛けないわけにはいかない。
「おはようございます。」
「ん、ああ。おはよう。」
「えっと、なんでそんなに不機嫌なんですか?」
「いやな、昨日は買い物や武器と防具の整備等をして過ごしていたのだが、隣の部屋の奴等が長いこと盛っていたのだよ。それも6時半頃から12時近くまでな。」
なんかどっかで聞いたことあるような…というか昨日大体そんくらいだったような。
いや、まだそうと決まった訳じゃない。
「それってなんて名前の宿の事ですか?」
「赤い帽子亭という所だよ。ふっ、何度文句を言いに行こうかと思ったものだ。何のつもりの当てこすりだ!とね。」
やべえ。
どう考えてもそれ、俺らだ。
「すんませんっしたぁぁ!!!」
「うわっ!急にどうした。」
「いえ、それ、多分俺らです。今日から稽古で暫く疲れて出来ないと思って、それで…」
(つまり、昨日の声はリリン達だというのか。だとすると私は自分の弟子の声に当てられて自分で慰め…)
「自分で?」
「な、なんでもない。と、とにかくそういうことなら仕方が無い。さっさと稽古を始めるぞ。」
なんか小さな声で言ってたから良く聞こえなかったが、どうやら許してもらえたようだ。
「先ずは自身の装備を全て身につけてくれ。」
「「「分かりました。」」」
リィナさんに言われた通り装備を身につける。
「装備をつけ終わった者からランニングを開始してくれ。時間はそうだな…12時までにしておこう。」
いきなり2時間近くランニングをするらしい。
というかスパルタ過ぎる。
◇
それから2時間休み無しで走らされた。
ただ、テレビなんかで見た昭和の頃と違ってちゃんと水分補給させて貰えたのが救いだ。
「昼食にしよう。今日は私の奢りだ。」
「はぁ、はぁ、あ、ありがとう、はぁ、ございます。」
「うむ。」
昼食を食べた後、2時間も走らされた理由を聞いてみた。
「レントとセフィアはEランクではまだ無いだろうがDランク以上になると護衛依頼が出てくる。その際装備を身につけたまま移動する事になるからな。その為の体力作りだ。それに強敵が突然現れ撤退をせざるを得ない時に装備が重くて走れない…なんて事になれば待っているのは死だ。だから先ずは装備を身につけた状態でも走れるように体力をつける必要があるのだ。」
「そういう理由があったんですね。でも、最初から言ってくれても良かったんじゃないですか。」
「師の言うことを真っ直ぐ取り組めるか試したかったという理由もあったのだ。」
「なるほど。」
死なないようにという理由なら文句のつけようがない。
◇
食休みも終わり、午後の稽古を始める為に訓練所移動した。
「午後からは戦闘訓練だ。先ずは何を武器にするか教えてくれ。」
「俺は片手剣と棒です。」
「すまん。言い方が悪かったな。何か一つ得意なものはどうするか?という事だ。例えば、私やリリンならばスピードだ。君達二人は何を武器にするか。スピードや、近接戦闘、魔法の威力といったことだ。」
「そういう事ですか。」
「じゃあ僕は、スピードと手数です。」
「俺は……俺は、全距離に対応出来るオールラウンダーになりたいです。セフィア達を…護りたいから。」
「その道は険しいだろうが、いい答えだ。」
自身の成長方針を決めて、やっと本当の冒険者になった。
そんな気がした。
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