第66話 超絶美少女の優雅で可憐な夏休み
Side:江橋麗華
夏休みに入って最初の日曜日、私は学校から出された宿題を進めていました。
私は長期休暇の宿題はすぐに終わらせるタイプで、遅くても二週間、休みが半分を過ぎる前にはすべての課題を終わらせておきます。
基本的に遊んだりするのはその後と決めていて、そういう理由ですべての誘いを断ってきました。……最低でも今年までは。
その時、メッセージが着信した音がスマートフォンからなりました。通知が鳴った時点で相手は日裏くんたちがいるグループか明梨ちゃんしかないのですが、今回の通知の相手は明梨ちゃんでした。
もしもこれがテスト勉強や次の授業の予習だったらメッセージを返すのはひと段落ついてからにするのですが、一学期の復習でしかない夏休みの宿題中の今はすぐに返すことにしています。
とりあえず、どう返信するにしても何のメッセージが来たのか確認してからですね。
『おはよう! 今暇ー?』
おはようと来ていますが、今はもう既に昼を過ぎて二時頃という一番暑い時間です。挨拶的なノリで書いているのならいいのですが、多分明梨ちゃんは今起きたのだと思います。
『おはようございます。今は夏休みの宿題をしていただけなので、忙しくはないです』
『え!? もう宿題を始めてるの?笑 私まだノータッチだよ!笑』
『まだ夏休み二日目ですから始めている人の方が少ないと思いますよ』
私も正直早く始めすぎているとは思っていますし、正直長期休暇の宿題を計画的にやる人というのはとても少ないのではないでしょうか。
半分以上は最後の一週間で焦って終わらせたり、誰かに答えを聞いたりして終わらせていると思っています。
私は逆に最初の一週間でほとんどを終わらせていますし、計画的にしていそうなのは、クラスメイトでは、三須無さんくらいだと思っています。
『やっぱそうだよね! 本当にヤバいと思ったら麗華に見せてもらうね!笑』
『分からないところを教えるのならいくらでもしますが、答えは見せませんよ』
『やっぱり?笑 冗談だから安心して!』
『でも、分からないところの質問が休みの最後の一週間にいっぱい来るような気がしますよ』
『うっ……それは否定できない……!』
明梨ちゃんは案外適当なところがありますし、多分いつの間にか休みの終盤になっていたということもありそうです。
でも、中学生の頃のように自由研究というものは存在しないし、読書感想文や弁論文も任意となっているため宿題の難易度はそんなに高くないと思います。
『それで、何の連絡だったのですか? 宿題を終わらせる予定なのでまだ遊べませんよ』
『ほほう……? それは次の情報を聞いてからでもいえることかな!?』
並大抵のことでは遊ぶ気はないのですが、明梨ちゃんは自信満々のようなので一応聞いてみましょう。
『その情報というものは何ですか?』
『ふふん、これはトップシークレットな秘密の極秘情報だよ! 心して聞くがよい!』
『シークレットと秘密と極秘が被ってますが、聞きましょう』
『それくらいすごい情報ってことだよ! なんと……!』
明梨ちゃんは随分溜めますね。そこまで私が興味を持つような話題は存在しないと思うのですが……。どこからその自信は沸いてくるのでしょうか。
『なんと! 光生様が外部で撮影を行うそうです! それも次の木曜日にモールの近くで行うとの情報を手に入れてしまいました!』
『それは……本当の情報なのですか? SNSの偽物に何度も騙されていたみたいな感じの落ちではないですよね……?』
『正直五分五分! 光生様について検索してたら偶然見つけただけだったから! その呟きも新着の波に流されてどっかに行っちゃったし……』
光生様。つまり神代光生こと日裏くんがもしかしたら木曜日に仕事をしているところを見ることができるかもしれないということです。
しかし、もし友達である私たちが日裏くんが仕事をしているところを見に行ったらどう思われるのでしょうか。あまりいい感情は向けられないのではないでしょうか。
いえ。私は日裏くんと神代光生を別々に考えることにしたのでした。つまり、仕事をしているところをファンに見られてしまうということは……どう思われるのか私には想像もつきません。
やはりこういう時は神代光生のファンをずっとしてきた明梨ちゃんに聞くのが一番なのではないでしょうか。
『その、もしも本当に撮影をしていたとしたら、私たちが行ったら嫌がられるのではないでしょうか』
『そんなことないはずだよ! 今までも何回か外で撮影をした時に偶然それを見ることができた人が居たらしいんだけど、迷惑とか言われるどころか握手までしてくれたらしいよ! 光生様マジ神……』
『それは……本当に迷惑と思っていなかったのでしょうか……?』
『私の中の光生様は笑顔で握手をしてるよ……!』
明梨ちゃんは神代光生が日裏くんだということを知らないので純粋にファン目線の意見を得ることができましたが、なんというか理想的なイメージです。
日裏くんだということを知っている私の中では、どうしても日裏くんの顔が浮かんできてしまいます。
なんというか、結局押し負けてしまって苦笑いで握手などをする。でもなんだかんだ楽しんでいそうなイメージが浮かんできます。
いえ、私は日裏くんと神代光生を別の人間として考えると決めたのだからこのイメージはあってはいけないものです。急いでイメージを振り払います。
『それで、一緒に見に行ってみない? 断られたら一人で見に行くけど!』
返信が遅くなってしまった私に明梨ちゃんはそう聞いてきます。
ですが、私の中ではもう既にその質問に対する答えは決まっていました。
『行きます』
即答です。
_____________
五分ほど次話を載せていました。
申し訳ありません。
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