第49話 超絶美少女は登録する

 その時私は、来週提出と指示があった課題を消化していました。本来ならまだ余裕があるためしなくてもいいのですが、次の週の課題は全て土日で終わらせてしまうと決めている私は机で課題と向かいあっていました。


 そうしてしばらくたった時、「ポワン」という音が聞こえてきました。それは私がメッセージに登録している通知音です。


 誰からの通知なのかと思い、開いてみることにしました。……といっても、私が通知を付けているのは家族と、明梨ちゃんと日裏くんと、その二人と白石さんが居るグループくらいなので誰が連絡してきたのかは限られてくるのですが……。


『ねぇ麗華! 見てこれ! 光生様がついにSNSを始めたよ! 遂に本物が現れたんだよ!』


 通知の相手は明梨ちゃん。その通知を見た瞬間、私はメッセージを開いていました。いつもなら勉強が一区切りついてから返信をするのですが、自分でも驚くようなスピードでスマートフォンを手に取っていました。


『本当に本物なんですか?』


『おっ、珍しく食いついたねぇ! 光生様の話題を振っても昔はそうですかの一言だったのに……』


 う、うるさいですね。どうしてそんな感傷に浸るような言い方をするのでしょう。というより……。


『本当に本物なんですか? 本物かと思ったのに偽物だったというのは聞き飽きましたよ?』


『本当の本当に本物なんだって! ほら見てよ! この写真が証拠だよ!』


 そういいながら明梨ちゃんが送ってきたのは目を瞑っている女性の写真。多分高校生だけど、かなり可愛い。でも、この写真と神代光生さんのSNSが本物だという話はどうつながるのでしょうか?


『誤送信ですか?』


『え!? 麗華、光生様を知ってるのにこの人知らないの!?』


『かなり可愛い方だとは思いましたが……存じあげないですね』


『この人は光生様と同じ事務所に入ってるモデルよ! 名前は麻倉明華で歳は光生様と同じつまり私たちと同い年! よく光生様と一緒のページにいるんだけど……』


 そう言われてこの前日裏くんと本屋さんに行った時に買った雑誌を開いてみます。……確かに一緒に写っていました。男性用コーデを光生さんがしているのに対して、女性用コーデを担当していたようです。


 ……どうして見覚えが無かったのでしょうか……。女性は普通このファッションを見るために買うはずなのに……。


『この沈黙……。もしかして麗華……光生様にしか目が行ってなかったせいで気がつかなかったの?笑』


 そういえばこの雑誌も光生さんが載っていたから買ったのでした。


『そうかもしれません……。それより、どうしてその写真が光生さんが本物だという証拠になるのですか?』


『そう! それなんだけどね! この写真を投稿したのが光生様のアカウントなのよ! 目は瞑ってるけど、明らかにカメラ目線のこの写真を撮るには正面から撮るしかない! つまりこの時点で麻倉明華の知り合い!』


『確かにそうですね』


『そして! 麻倉明華が着てる服は去年、光生様と麻倉明華が初めて一緒に撮影したときの物! つまりこの画像を送った光生様は本物なのよ! それに、これを見て!』


 続いて明梨ちゃんから送られてきたものはどこかのサイトのURL。とりあえず、明梨ちゃんが証拠というそれを開いてみることにしました。


 開いた先にあったものは、登録直後に炎上したモデルとして光生さんが特集されたまとめ記事でした。


 どうやら、名前とプロフィールを初期設定から少しいじっただけでSNS始めました。という投稿をしたところ、偽物だと叩かれたらしいです。


 その後、さっき明梨ちゃんが言っていた麻倉明華という同じ事務所のモデルに助けを求めたけれど、その相手にも偽物と疑われる。


 ……なんというか、光生さんが日裏くんだと確信している私からしてみれば、日裏くんらしいなと思ってしまいました。


 必ずどこかしらが抜けていて、小さなことが大きな失敗に繋がっている。私にバレた時もよく考えれば回避できたはずなのに、楽観的に考えてミスをしている。


 でもまぁ……そのおかげで友達になることができたと考えればそれまでなのですが、炎上して焦っている様子が簡単に想像できてしまいます。


『とりあえず、本物ということは分かりました。……SNSの登録って簡単ですか?』


『メールアドレスとかがあれば簡単にできるけど……もしかして登録するの?笑』


『はい。せっかくなので登録してみようかなと。その……少し気になりますし……』


『おっ! いいね~! じゃあ分からないところがあったら言ってね!』


 とりあえずアプリをダウンロードします。アカウント名は普通に本名で、IDも簡単なものにしました。光生さんのように変な失敗はせずに登録を完了します。


『登録してきました。@E_reika_1234 このIDなのでフォローしてもいいですよ?』


『はっ! させていただきました!笑 ついでにこれが光生様のIDね! @Kamishiro_1224』


『ありがとうございます。フォローしてきます……』


 検索して出てきたアカウントをフォローします。すでに2000人ほどいるフォロワーに彼がどれだけ人気なのかを実感しました。


「あれ……これは……」


 その時、新しく投稿された一つの呟き。水族館に行ってきた、次回出る雑誌の服の宣伝というだけの極シンプルなもの。


 だけど、その写真の一枚、光生さんと麻倉明華が一緒に写っている写真を見て、なぜかモヤモヤした気持ちになりました。


 こんな気持ちになる理由を私は知りません。

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