第43話 脇役高校生は移動する

「はい。まずは今回こんな事態になった原因を教えるけど、どこが偽物って判断されたか分かる?」


 どこがと言われても、登録してアプリに促されるがままに投稿をしたら炎上したとしか言えない。だから正直言って全くわからない。というか、悪いのは俺の偽物では……?


「一つ目は画像。設定で変えるように言われるはずなんだけど、なんで初期画像のままなの?」


「え、だって最近個人情報とかうるさいし、SNSに投稿した画像から特定されるとかよく聞くからそういう画像だとダメかなと思ってさ」


 そういうと心なしか、涼風があきれた目をしたような気がする。


「えっとね、神代光生ってエゴサ……じゃなくてSNS内で検索してみて。ちなみに、こういう自分のことを調べることをエゴサーチっていうから覚えておいてね」


 涼風に言われたように検索してみる。検索、エゴサーチの結果は大量に俺の画像が出てきた。神代光生画像集とかいうアカウントまであるぞ……。


「分かった? 日裏静哉っていう名前でアカウントを作ったなら自分の画像にしなくて正解だったかもしれないけど、神代光生ならむしろ自分が写ってる画像をどんどん載せていいんだよ。というか支援者はそれを求めてる!」


「なるほど……じゃあ、この画像でいいかな? というか、これ位しかないし……」


 涼風に見せた画像は涼風が友達に見せる用と俺と二人で撮った写真だ。俺単体の画像なんて俺のスマホでは撮ったことは無いし、後は妹と一緒に写っているものしか残っていない。


 涼風なら同じ事務所に所属しているし、よく一緒に撮影もするから大丈夫だと思ったんだが……。


「だ、ダメだよ! こんなの……勘違いされちゃうよ!」


「ん? 同じ事務所だし大丈夫じゃないのか?」


「ち、違うくて……。……これじゃ付き合ってるみたいな噂が絶対立っちゃうよ……」


 違うということは聞こえたが、後半何と言ったのか聞こえなかった。


「すまん、もう一回言ってくれないか?」


「私と静哉が、そ、その……交際関係にあるって思われてしまうかもしれませんの!」


「交際関係……? あぁ! なるほど! それはいけないな。涼風に悪い」


 ネットニュースの半分は熱愛発覚の報道だし、世の中の人たちはそういう話題が好きだからな。例えモデルでもニュースに取り上げられはしなくてもファンの中で話題になってしまうのだろう。


 涼風はそういう噂で人気が下がってしまうということを危惧しているのだろう。自分だけでなく俺の人気に対しても。


「多分違うこと考えてると思うけどもうそれでいいよ……。とりあえず、静哉一人の写真を撮っちゃうからなんかいい感じにポーズ取ってくれる?」


「え? 今?」


「どうせバス内に誰もいないんだから良いと思うよ。それに、今日は髪も整ってるし服も撮影で使ったやつでその……かっこいいし……」


「そりゃあ雑誌に載せる服なんだからかっこいいだろ。涼風も可愛いぞ。素材が良いからな」


「か、かわっ!? ~~~~! と、とにかく撮るからあっち向いて! そうじゃなくて、頬杖をついて窓の外を眺める!」


「え? こ、こうか?」


 証明写真の笑顔バージョンのようなものを撮るのだと思ってきちっとした格好をしていたらポーズを指定された。


「よし。こんな感じになるんだけどどうかな?」


「お、なんかCDのジャケット写真にありそうだな」


 チャラくて格好つけてるような写真になると思ったが、意外と黄昏ている感じでかっこいい写真になっていた。これなら文句なしで設定に使うことができる。


「はい。メッセで送ったからその画像で登録しちゃって!」


「おっけ。……よし、これで大丈夫だと思う」


「うんうん。じゃあ次に二つ目って……あはははは! ねぇ静哉! 見てよこれ!」


「なんだよ突然笑いだして……って、なんじゃこりゃ!?」


 涼風が二つ目の問題点を説明しようとしたと思ったら突然笑いだしてしまった。何事かと見せられたスマホの画面を見ると、まとめ記事に俺のことが載っていた。


「えっと何々? SNS上最速で炎上したモデル、神代光生。炎上の原因となった投稿はSNS始めました。あまりの情報量の少なさに偽物と間違えられ……って、私の投稿も載ってんじゃん!」


「ん? なになに? 同じ事務所に所属するモデルである麻倉明華にすら信じられなかった。以下、SNSより抜粋『念のため聞きますが証拠を出すことは可能ですか? 信憑性がない場合即ブロックします。私は今急いでるので早くして欲しいんですけど。』『こんな画像があるんだが……。』『はあああ!? ちょっ!? 本物!? ってその画像去年のじゃない! それ失敗したから消してって言ったよね!? というか、よりにもよってなんで今日登録してんの!?』だってさ! ほぼ全部じゃねぇか!」


「いや、こっちも見てよ! このまとめ!」


「えっと、目を瞑った麻倉明華の画像は大きく反響を呼んでいる?」


 確かにすごい数の再投稿が来ていたが、まさか反響を呼ぶほどまでとは知らなかった。それにしても、一体どんな反響を呼んだのだろうか。


『【朗報】麻倉明華は加工人ではない。神代光生の加工なし画像によって判明』


『麻倉明華めちゃくちゃ可愛いんだけど加工なしであれってマジ?』


「ま、まぁいい感じの反響しかないし良いんじゃないか?……っと、そろそろ水族館に着きそうだな」


 いつの間にかバスは水族館の敷地内まではいっているし、到着までもう間もなくのようだ。


「じゃあ最後に二つ! 今日撮った写真の投稿は家に帰ってから! あと、行ってきましたっていう投稿は良いけど行ってくるはダメ! 最悪追っかけみたいな人が来るからね。他の注意時点は何か思い出したら言うね。じゃあいこう! ペンギンショー!」


「そうだな! イルカショー!」


「「え?」」

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