第39話 脇役高校生は変化を感じる
次の日、やっぱり学校に一時間早く着いた俺はいつものように本を読んでいた。
「おはよー静哉……」
「おはよう。……ん? なんか疲れてないか?」
「そうか? あー、溜まってたやつを一気見したせいかもしれん……」
「なるほど、疲れてると言うよりは眠いって感じか。まぁ、せいぜい授業では寝ないようにしろよ?」
「大丈夫だ! 今日の授業はいつも寝てるから!」
ええっと、今日の授業は……座学しかないし英語がないのか。って。
「英語が無いから寝るのかよ!」
「甘いな! 英語でも寝てるぜ! 寝ないのは国語だけだ!」
「英語も寝るのかよ! 国語で寝ないのは先生が厳しくて眠れないからじゃねぇか!」
「分別のついてる人間ってか? そんなに褒めんなよ……」
「褒めてねぇから!」
馬鹿な話をしていたら教室が騒がしくなった。江橋さんが教室に入ってきたようだ。
「おはよう江橋さん、実は俺スマホ変えたんだよね。このカメラすごく画質良いらしくて、江橋さんを撮ってみてもいいかな?」
「おはようございます。写真を撮るなら風景とかにしたほうが良いと思いますよ」
確か土曜日に新しいスマートフォンが発売されたはずだ。江橋さんに変なことを言ってるのはいつも取り巻こうとしているやつか?
ダメかー。とか言ってるけれど、最悪訴えられるようなことしてるからな?……もしかしてあれが面白いことをしようとして滑ってるっていうやつか?あれより面白いってこの前言われたのか?
なんだ……なんか、なんか嫌だなぁ。うまく言い表せないけれど、ヤバいやつじゃん。あんな人クラスに居たのかよ……。ん?教室を出て行ったがもしかして別のクラスから来てたのか?
「おっはよー麗華! こっち見て!」
「おはようございます。明梨ちゃ……きゃっ!」
「へっへー、パパラッチもびっくりな撮影速度! 見てみて! 今麗華のこと至近距離で撮ったのにちゃんと写ってるの! 超広域カメラっていうんだって! すごいでしょ!」
振り向いた江橋さんを一ノ瀬さんが写真で撮ったみたいだ。
「もう、撮るならせめてフラッシュはやめてください! ……って、明梨ちゃん携帯変えたんですか?」
「正解! いや~、なんかさ! テストの順位を凄い上げたから褒められて新しいのにしてもらったの! ボタンが一つなくなって少し慣れないけど、ロックの解除も簡単だし画面が大きくて良いね!」
「うーん、私は去年変えたのでもし変えるとしても来年ですね。……それより、さっきの写真を消してください! いきなりだったから絶対に変な顔をしています!」
「えー。可愛く撮れてるし大丈夫だよ! 消したくない!」
「ダメです! 消さないと怒りますよ!」
「ふっふー。もし何かしてきたらこのままグループに送っちゃうもんね!」
……なんというか、江橋さんは一ノ瀬さんに引っ張られている感じはするけれど、学校でもイメージと全く違う行動をとるようになってきた。
今までなら一ノ瀬さんに撮ったって言われてもそうですかって感じで流していたのに、今じゃもうあの様子だ。
周りでその様子を見ている人たちも少し固まっているし、俺のように外野?から見ると言っちゃ悪いがすごく面白い。
ポカーンとした人の中心でスマホを……ん?メッセージ?
『明梨が写真を送信しました』
「あ! 送られちゃった!」
「ちょっと! どこのグループですか!?」
「ちょまって! えっと、日裏くんと白木君のグループ!」
うん、送られてきているな。画質も上がって範囲も広くなったカメラで撮られた江橋さんはカメラに目線が行ってなくても可愛いと思った。
あ、送信取り消しされた。保存は間に合わなかった。って……なんかこっちにすごく視線が集まってる気がする。というか、最近こんなことしか起きていない気がするんだが。
「日裏くん写真見ましたか!?」
「え、み、見た」
「見たんですか!?」
「急に写真が来たら開くだろ! 送った一ノ瀬さんが悪いと思うぞ!」
「た、確かに写真はすぐに開いちゃう……」
一ノ瀬さんが肯定する。そうだ、良いぞ、もっと言うんだ。
「わ、忘れてください!」
「え、も、もう見ちゃったし別に変じゃなかったし可愛かったから大丈夫だぞ!」
「~~~! そんなことがすらすらと考えつく頭はここですか! ここを叩けば記憶は消えてくれますか!?」
「ちょっ! 江橋さん落ち着いて! アホな子みたいになってるから! 俺は昔のテレビじゃないから!」
テンパりすぎて俺の机の周りがわちゃわちゃしている。江橋さんは俺に掴みかかるような勢いだし、一ノ瀬さんはよくわからないけれど、クラスの人たちもいつの間にか集まっていてよくわからない空間が形成されている。
ちなみに、まだ靴に画びょうが入っていたり椅子に濡れた雑巾が置かれるような事態にはなっていないし、逆に誰かに話しかけられることも起きていない。
クラスでの俺の立ち位置って、今どんな感じなんだ?モブではないと思うから、友人Aみたいな感じか?
「ほらそこのやつらー。集まってないでホームルーム始めるぞー」
先生がやってきてやっと人が居なくなった。まぁ、俺の扱いはそのうち耳に入るだろう。
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