第26話

 辺境公が出したシンプルな妥協案は

「辺境公が冒険者を雇う」

というもの。


「宿はどうせ決まってないんだろう?ここに泊まっていきたまえ。それが報酬の変わりだ」


 辺境公はこの界隈の土地を持つ所有者。

 自分の土地で、自分が雇った冒険者が死んだ、正式には行方不明、のであればその死体や遺品の回収として冒険者を雇い、両国で結成される捜索隊に協力させても辺境公として悪いことではない。


「私は雇い主と辺境公のお二方に雇われることになります」

「良いんですか?それ」

「名目上ですからね。契約書は後日書き換えることになるでしょうが、まぁそれはこちらの都合です」


 マリー率いるV、ドーリー、鉄兜のパーティーは「民間の協力者」として両国の捜索隊に協力することになる。

 その際雇い主である辺境公の指示に基づき、両国の責任者の指示に従って協力することとする。


「私たちは雇い主である辺境公の意向に基づき捜索隊責任者の指示に基づき活動します。ですのでご自由に指示をお出しください」

「それならこちらとしてはありがたいですね」

 これで冒険者の一団と捜索隊の意識が同じ方向を向くことになる。

 それに名がある貴族が雇う形なら上層部は面倒なことを言われない。


「現地で捜索隊に参加しました。というのは依頼の内容とは結構違いますけど」

「まぁ文句は言われないだろう。働きの方向性としては同じだし」

 冒険者としては目的である遺品の回収を単独でやるわけではないが、方向性は同じ。

 誰が見つけたとしても自分たちで遺品、あと遺骨でも持っていけば雇い主が細かいこと言うということはないだろう。



「よろしいですか?」

 あとはA国側の反応。

 隊長と役人などは少し相談したが

「今回は基本人助けですし、土地の所有者である辺境公か誰かが雇った冒険者が捜索隊に参加したからと、上の方は特に騒がないと思います。ただ一応民間人ですから慣例通り入国の許可だけとってもらえますか。急がせますので」

 答えとしては「問題なし」


 全員納得したので問題は解決した。


「そういう事だったら、君たちに任せたいことがあるんだがいいかな」

 全員納得したということで、A国軍の隊長がまた別の提案。

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