第25話
二人が相談している間、冒険者とA国の一団、そして騎士団の団長とその従者はしばしの歓談。
話題はどうしてもあの未確定地域の話。
「そこら辺を責められると反論のしようがないのですが、実際として問題何があるわけでもない土地でしょう。だから上の方も腰が重くて」
隊長と騎士団長の「首都の役人どもはここいらに興味もねぇ」を意味するストレートな皮肉に役人はそう言い訳のように言った。
「確かにそうですけどね」
「いやいや、旦那様、あの辺には奇妙な藻がはえておるでしょう。私はあれを首都の賢い人達に渡したら、何かいい商売のタネができるのではないかと昔から思っているのですよ」
団長の相槌に隣に座る従者がそう言った。
考えてみると帝国側の従者もA国の小間使いみたいな人間も同じテーブルに座って話している。身分を気にしないお方なのだろうとはドーリーの思い付き。
「藻ですか?」
「確かに奇妙で珍しくはあるが、体に悪そうだからな。やめときなさいよ」
従者に答えてA国の隊長は愛想よく笑いながら従者にそう言って、事情を知らないよそから来た冒険者と役人にちょっとした説明を始める。
「藻、そもそもあれは藻なのかね?」
「わかりませんね。カビにも見えるがキノコみたいに固まったものも見たことがあります。なんかの菌なんじゃないでしょうか?」
隊長の疑問に存在をしっている団長が答える。
「まぁ藻みたいな物があの川の間の地域にだけ生息してるんだ。川を越えられないんだろうな。こっち側ではまったく見たことがない。そいつは気色悪い緑色をしてて、夜になると光ったりもする」
「キノコや藻類には夜に光るものも結構ありますかから、そこまで珍しい物じゃありませんよ」
中退とはいえ薬学などを学校で納めてきたVの知識。
「話はここからだ。首都の人間はせっかちだから駄目だな。この藻の妙な効能、効能でいいのかね、として、死体にとりつくと一切腐敗させないってものがあるんだよ」
「腐敗させないというのは、つまり腐らないって事ですか?」
興味をひかれた役人の言葉。
「そうさ。獣だのモンスターだのが死ぬだろ?どっかから藻が湧いてきてその死体にとりつく。そうするとその死体は数年外に放置しても腐らない。もちろん燃やしたりしたら骨と灰になるがな」
「葬儀屋や騎士団が喜びそうだ。遺体の管理が楽になる」
ドーリーの一言。
これは結構大きな問題。葬儀まで時間がかかると遺体が腐り始めるので、葬儀屋や戦死者を運ぶ騎士団にとって死体の維持、管理は至上命題。
最後は埋めるか焼くだけだが、できる限り遺族のもとに遺体を返して国葬を執り行うのも騎士団の一つの任務。
「まぁ、そうなんだがな」
隊長はそう言って笑い、団長が続きを答える。
「全身の肌が緑になるんですよ。気色悪い緑色。しかもその藻みたいに夜中光りだすんです。イノシシの死骸に取り付いているのをこの間みましたが、死んであぁなるくらいならそのまま腐った死体になった方がいいと思えますよ」
鉄兜は想像しようとするが、イメージがわかない。しかし気色悪いということはわかる。
「以前の派遣された団長も死体の管理に使えないかと個人的に実験してたらしいですが、使えば肉も肌も緑色なので人間には使えないであきらめたらしいです」
「肉の・・・保存とか・・・」
「色味はさておき腐らない肉は食料として魅力的ですね。保存食なんかにいいかもしれない」
Vと鉄兜の意見。
冒険者として非常食や保存食をいろいろ買ってる立場なので、そういったアイテムはかなりありがたい。
「それも考えたらしいんですけどね。なんか毒を発生させるらしいんですよ。食べると死ぬってわけじゃないが腹をこわすようで。だから動物も相当追い詰められていないと食べない。そうなると緑色の死体だけ残る。あの土地も何もせず放置という訳にはいかないのでA国軍と持ち回りで見回りをしているのですが、気色悪いですよ。緑色に変色した光る死体が転がってるんです」
「あの土地の領有がはっきりしたら調査も進むだろうが、あんなよくわからんものを外に持ち出すのはトラブルの元になる未来しか見えんよ。どっちの国の物になっても、調査が終わるまで持ち出し禁止のルールを作るべきだろうな」
そんな話をしていると二人が部屋に戻ってきた。
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