第4話

 設計図を書くことは簡単だが、それを実行するのは難しい。


 というのはドーリーの感想。

 知り合いに話せば「面白い計画だな」とは言ってくれる。

 ただ参加する、となると「他の仕事がある」「予定が会わない」という話ばかり。

 話に乗る気、という感じの人も「もっと具体的な話が決まったらもう一回来てくれよ。そしたら決めるから」という感じの言葉。

 確かにそれもそうだ。具体的な話も決まってないのにyesとは言えない。

 ということで仲間を集めるより先に計画を詰める方向性に変更。

 そういうわけで組合に問い合わせてダンジョンの情報を集めた。


「よ」

 ドーリーはもらった書類を片手にいつもどおり談話室へ。相変わらず人気はない。

「ドーリーさん。ちょうど良かった」

 ドーリーと並んで常連のVはそう言って挨拶。

 隣には目出し帽をかぶった騎士が座っている。

 軽装の鎧。隣には一般的な剣よりも長く厚い剣。

「そっちの方は?」

 親しいというわけではなさそうだが、仕事上の知り合いよりは仲がいいという距離感を醸し出している二人。

 そこでドーリーはVにこう聞く。

「前、ダンジョン探索をやるって話をしていたじゃないですか。ちょうどそのことを話したら乗ってもいいかなって話で。あぁ、名前はエヴァンス、鉄兜ってみんなはよんでます」

「よろ」

 短くそう言って軽く会釈。

「よろしく。具体的な計画が特に決まってないんだが、それでもいいか?というか、よかったらこれから詰めようかと思ってる」

「いい・・・温泉・・・ある・・・好き」

 短い言葉、というより掠れて声が聞き取りにくい。

「彼はダンジョン探索で重度のやけどになってこんな感じなんです。治りはしてますし、実力は何度か組んだ私が保証しますよ」

 鉄兜はVの言葉を証明する代わりに、目出し帽をすこしめくる。ひどい火傷のあと。

「うわ、痛そうだ。火傷はあとまで残るから辛いよな」

「北の方には温泉が一杯あるでしょう。あれが火傷に効くんで、軽く仕事してそれに入って来るつもりらしいですよ」

「温泉か。いいな。そのためには稼いで貰わないと困るぜ。」

 ドーリーは軽い調子でいいVもそれに合わせて鉄兜の目的を説明。そしてドーリーは二人が座っている席に座る。


 冒険者業でもこういうひどい傷は周りから引かれるので鉄兜もなかなか常設パーティーに入れない口。

 そして常設パーティーに入れず臨時パーティーや応援でいろんなところついて回るVやドーリーはあまり気にしない口。

 というよりも、品行がよく騎士団の世話にならないことのほうが重要である。見た目なんてわがままをいうのはその後。


「しかしダンジョン探索は3人だけじゃ話になりませんよ。5人、せめて4人はほしいです」

「俺もそれはわかってるが、計画が決まってないと仲間が集まらんのだよ。だから先に目的地決めちまぉうって思ってな」

 そう言ってもらってきた書類を並べているとき

「ヴィリアさん。ドーリーさん。ちょいと仕事の口があるんですが」

 そう声をかける女がいた。

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