第2話Kについて

Kというは、ひとり

水のようなもの

指先、ひたしてみたら

Kは波打つ

耳までたっぷりと浸かると

Kの音が聞こえてくる

やがてKとの境をなくして

Kの一部になってしまえれば 私は涙を流さずにすむ

そうしてKの融点を探し

水のようなものの中でじっとしている

わたしもまた、ひとり


晴れの日にも雨の日にもKは在る

わたしはKと目を瞑る

鉛のように

目のない子どもになる

そうして瞼の裏を満たしていくKはあたたかい

眩しくて ちりちりと刺激するもの


Kはどこからやってくるのか

わたしというものを

感覚として知ったとき

わたしとわたし以外の世界の誰とも共有できないと知ったとき

世界の果てを考えたとき

Kという言葉の意味も たった一人だった

Kのふるさとはどこにもないし どこでもある


わたしのKを自由に持ち運べたなら

テーブルの上に生けて飾ろうか

わたしのK

Kは孤島のようなもの

そうそう

わたしたちの内臓にはランゲルハンス島という器官があるのよ

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