双子の親になっちまった!? その1

『フリフリとエカテリナの子供 名前を決めてください』


 ……うん


 何度見返してみてもそう書いてある。

 ポロッカの肩の上から顔を出している男の子と女の子の頭上に表示されているウインドウを見つめながら腕組みしている俺。


 目をこすって、改めてウインドウへ視線を向ける。


『フリフリとエカテリナの子供 名前を決めてください』


 ……うん


 やっぱり見間違いじゃないみたいだ……


 そんな行為を繰り返していると、背後に人の気配を感じた。

 振り返ると、そこにエカテリナの姿があった。


「あ、あの……だ、旦那様……そ、その……な、なんて言うか……ふ、二人の愛の結晶なんだからね!」


 口調こそいつものツンデレなのだが、声は甘ったるいし、モジモジしているしで……一体どこのエカテリナさんですか? みたいな状態になっているんだが……


 ……しかし……


 改めて、ポロッカの双肩へ視線を向ける。

 俺のことを見つめている男の子と女の子は、嬉しそうに笑顔を浮かべている。

 見た目的には3歳くらいだろうか……昨日ログインした時にはいなかったから、今日誕生したってことなんだろうけど、ってことは、この世界で産まれた赤ちゃんってのは、あれくらい成長した状態で出現するってことなんだろう。


「しかしなんだな……ゲームの中とはいえ、嬉しいもんだな」


 ポロッカが、二人を俺の方に差し出してくる。

 床に降り立った2人は、


「パパ!」

「お父様!」


 嬉しそうな声をあげながら、俺に抱きついてきた。

 そんな2人を抱き留める。

 あぁ……これが幸せってやつなのか……


 感動しながら2人を抱きしめていると、


「あ、あの……その……えっと……」


 2人の後方で、エカテリナがすっごくモジモジしていたんだけど……どうやら抱っこの輪に加わりたいみたいだな。


「おいでエカテリナ」

「だ、旦那様ぁ!」


 俺の言葉に、ぱぁっと笑顔を輝かせながら駆け寄ってくるエカテリナ。

 ほどなくして、子供達2人を間に挟んで抱き合っている俺とエカテリナのサンドイッチが出来上がっていた。


 ……なんか、いいな……こういうのって


 そんな感動に浸っていた俺なんだけど……


「あらあらあら、なんて可愛らしいお子様なのでしょう。これはもうリサナ教の洗礼を受けて頂くしかありませんわね」

「あ? 何寝ぼけた事言ってるのよ! フリフリ村長の子供だったら、アタシのクレイントーラ教の洗礼を受けるに決まってるでしょう!」


 いつの間にか後方に現れたリサナ神様とクレイントーラ神様が言い合いを始めてしまって……部屋の中に微妙な空気が流れてしまったのは、ご愛敬というか……なんか、すっかり芸人枠になってるよな、最近の駄女神様コンビってば……


 苦笑しながらも、エカテリナと子供達を抱きしめていた俺。

 そんな俺を、エカテリナが見つめてきた。


「旦那様、私達の愛の結晶に素敵な名前を付けてもいいんだからね!」


 相変わらず甘ったるい、舌っ足らずな声でツンデレ口調をかましてくるエカテリナなんだけど……い、いやちょっと待ってくれ……俺のネーミングセンスが壊滅的なのはエカテリナも知っているはずだろう?


 ラミアでラミコだぞ?

 ブラックドラゴンでブランだぞ?

 土竜でモグオだぞ?

 鳥人でトリミだぞ?


 そんな事を考えている俺だんだが……そんな俺の事を潤んだ瞳で……しかも上目使いで見つめてくるエカテリナ。

 そんなエカテリナの前では、子供達が目を輝かせながら俺の事を見つめている。

 3人からキラキラしたオーラをぶつけられて、タジタジになっている俺……も、もう少しネーミングセンスを磨いておくべきだった、と、今更ながらに後悔していたのだが、完全に手遅れだよな……


 そんなわけで……逃げ場を失った俺は、頭を振り絞りまくった結果……


 男の子……栗色の髪の毛なので「クーリ」

 女の子……エカテリナと俺の名前をもじって「フリテリナ」


 ……うん……やはり俺のネーミングセンスではこれが限界か……


 そう思った俺だったんだけど……


「クーたんとフーたん……素敵すぎるんだからね!」


 って……あ、あのさエカテリナ……感動に打ちひしがれた声をあげながら、無理してツンデレ口調をする必要はないんだからな?

 苦笑している俺を、感涙を流しながら見つめているエカテリナ。

 そんな俺とエカテリナの間では、


 フリテリナが、

「クーたん!」

 クーリが、

「フーたん!」

 お互いを指さしながら、嬉しそうに名前を呼び合っていた。

 とりあえず、みんな気に入ってくれているみたいだし、とりあえずよかったかな……


 そんな事を考えていると、窓からテテが顔を出した。


「フリフリ村長さん! お子様の誕生おめでとうございます!」


 笑顔で拍手をしてくれているテテ。

 そういえば……昨日新しい仲間キャラを連れ帰った時、


「2人多い……あ、そういうことですか」


 みたいな事を言っていたテテなんだけど……あれって、エカテリナが双子を妊娠していたのに気がついたからなのかもしれないな。


 そんな事を考えていると……テテの後方から、


「「「フリフリ村長さん! おめでとうございます!!」」」


 大歓声が沸き起こった。

 よく見ると、テテの後方に村人達が山のように集まっていた。

 拍手をし、歓声をあげ、中には感涙を流している人までいたりして……なんか、すっごいカオスな状態なんだけど……

 でも、こうしてみんなにお祝いされると悪い気はしないっていうか……


「みんなありがとう。2人と仲良くしてやってくれ」


 笑顔を浮かべながら、俺はみんなに向かって手を振った。


 その時だった。


 パンパカパーン!


 俺の頭上でファンファーレが鳴り響いた。

 同時に、紙吹雪と花火のエフェクトが出現していく。


「な、なんだぁ!?」


 思わず目を丸くする俺。

 そんな俺の目の前に、ウインドウが出現した。


『子供に名前をつけたことにより、フリフリとエカテリナの機能が開放されました


 ・別荘所持機能


 フリフリが子供を持ったことにより、フリフリが村長を務めるメタポンタ村に以下の施設を建設することが可能になりました


 ・学校

 ・教会                      』

  

「へぇ……こんな機能が……」


 そういえば、テテが前に言ってたな……俺が子供を作ったらいいことがあるって……そのいい事っていうのがこれなのかもしれないな。


「ちょ!? べ、別荘ですって!?」


 ウインドウを眺めながら腕組みしていた俺の後方で、エカテリナが目を丸くしていた。


「ど、どうしたんだエカテリナ?」

「ど、どうしたもこうしたもないんだからね! 別荘って、結婚機能が実装された時に同時に実装されたんだけど、所持条件が分からなくていまだに誰も所持出来ていないはずなんだから!」

「へぇ、そうなんだ……」


 エカテリナの言葉で、この別荘機能っていうのがなんだかすごい機能だということはわかったんだけど……正直いまいち実感が沸かないというか……『あぁ、持てるようになったんだ』的な気持ちくらいしか沸かないというか……


 そんな事を考えていると、


「すすす、すごいです、フリフリ村長さん!」


 いつの間にか部屋の中に駆け込んでいたエナーサちゃんまで目を輝かせていた。

 

「こ、これってそんなにすごい事なのかい?」

「そそそ、それはそうですよ! 別荘が持てたら、イベントエリアの近くにログインポイントを所持出来るわけですから、それだけイベントを有利に進める事が出来るようになるんです!」

「家に、ならいくらでもドロップアイテムを収納することが出来るから、いつまでも狩りを続けることが出来るし、野宿よりも短時間でHPを回復させる事が出来るし、しかも別荘はアイテムとして持ち運びが出来るうえにいくら荷物を運びこんでも所持枠を「1」しか使用しないっていう、夢のようなアイテムなんだからね!」


 エナーサちゃんとエカテリナの説明で、別荘機能っていうのがすごいって事はわかったんだけど……どっちかっていうと、モンスター討伐に有利な機能みたいだな……


 とはいえ、俺的には、エカテリナと子供達を連れて遊びに行ける場所を設置出来たらそれでいいかな……くらいにしか考えていなかったわけで……


 ……そんなわけで


 今日はログインするなり、大賑わいになった俺の家だった。

 ちなみに、駄女神様コンビは今も漫才を続けていた……



 

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