女神様×女神様 その2
レベルがあがってなかったら一発即死レベルの攻撃をエカテリナにくらってしまった俺なんだけど、
「べ、別に悪気があったわけじゃないんだからね!」
大慌てしながらも、いつものツンデレ口調を崩さないエカテリナから回復ポーションをかけてもらって回復することが出来た俺。
「へぇ、ポーションって飲まなくても効果があるんだな」
「戦っている最中に、いちいち飲んでいたらモンスターのいい標的になってしまうから、改修されたんだからね!」
いや……説明にツンデレはいらないんだが、エカテリナ……しかしまぁ、これもモンスター狩りのための機能ってみたいだな。
体力が回復したことを確認しながら、改めて店内へ視線を向けていく。
店内の棚には、商品が満載になっていた。
ただ、満載といっても、棚に並んでいるのは1商品1つだけで、その商品の上に『×10』といった具合にウインドウが表示されていて、その商品の在庫数を表示している。
リザード族やエルフ族の武具は、ウインドウが極彩色に光り輝いていたんだけど、
「S級以上のアイテムのウインドウは、こんなエフェクトがかかるんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
ファムさんの言葉に、頷く俺。
改めて見回してみると……俺の店って、結構すごいアイテムをかなりの数扱っているんだな……極彩色のウインドウが結構な数並んでいるし……
感心というか、感動しながら店内を見回している俺の元に、リトリサが歩み寄ってきた。
「フリフリ村長さん。店内の在庫は把握いたしましたので、そろそろ開店してもいいですか?」
そう言うと、その視線を窓の外へ向けるリトリサ。
その視線の先、窓の外には……すでに、結構な数のプレイヤーが列を成して待っているのが見えた。
「そ、そうだね……じゃあ、すぐに開店するか。みんなもよろしく頼むな」
「「「はい!」」」
俺の言葉に、エカテリナをはじめとした同行しているみんなが笑顔で返事を返してくれた。
◇◇
開店したものの、一気に全員が店内に入ることは出来ないわけで、
「リサナ神様、いつものをお願いします」
「えぇ、お任せくださいな」
僕の声を受けて、ワニの被り物を被ったリサナ神様が店の外へと出て行く。
すると、
「おぉ! 女神様だ!」
「あぁ! 女神様! 神々しい!」
「女神様降臨!」
列を成しているプレイヤー達から一斉に歓声が沸き上がっていき、その歓声はやがて大リサナコールへと発展していった。
……なんか、すごいノリだよね、これって
その一体感を前にして、思わず苦笑してしまう俺なんだけど……リサナ神様は、優雅な所作で、その歓声に応えながら、
「皆様、盛大なる歓喜の声ありがとうございます。私の前にできちんと整列なさってくださいね。ここで先を争っても意味がございませんわ。みなさんは買い物に来られたはずです。店内に入ることが目的ではありませんよね。さぁ、店内へ入るまでの間、私のお話を……」
言葉巧みにプレイヤーの列を誘導し、店内に殺到しないように誘導しているんだけど……相変わらず、その統率力には感心してしまう。
そんなリサナ神様のおかげで、店内もギュウギュウ詰めにならずに済んでいる。
「やれやれ、リサナ神様のおかげでどうにか……」
安堵していた俺なんだけど……そんな俺の視界の端に、妙な光景が飛び込んできた。
リサナ神様は、店の入り口の左側に立っているんだけど、入り口の左側に黄金の被り物を被ったクレイントーラが……
「プレイヤーの皆さん! 我が名はクレイントーラ。地下帝国の守護女神クレイントーラです!」
両腕を広げながら、プレイヤーを見回していくクレイントーラ……って、そういえば、この人も女神様だったっけ……エカテリナに蹂躙されまくっていたもんだからすっかり忘れていたよ。
そんな事を考えている俺の視線の先で、クレイントーラ……おっと、クレイントーラ神様は、リサナ神様を指さした。
「どこかで聞いたことがあるような台詞で皆さんをたぶらかすような駄女神と違って、私は真の言葉で皆様を導くのよ! さぁ、私の前にひれ伏しなさい!」
「あら? どこかで聞いたことがあるような台詞ですか? それは名言を遺してくださった先人に対する冒涜と言えますわ」
……なんか、店の入り口を挟んで、いきなり言葉のバトルを始めてしまったリサナ神様とクレイントーラ神様。
最初は、
「旦那様、私がちょっと黙らせてきますわ」
エカテリナが剣を抜きながら向かっていきかけたんだけど……列を成しているプレイヤーの皆さんを見てみると、
「あ、新しい女神様だと!?」
「うわ! マジ感動!」
「あぁ、女神様! あぁ、女神様!!」
「……駄女神臭がする……だが、そこがいい」
「うぉぉぉぉぉ!どっちも頑張ってぇぇぇぇぇぇ!」
……とりあえず、皆さんもリサナ神様とクレイントーラ神様の言い合いを楽しんでいるというか、大女神コールを送りながら楽しんでいるみたいなので、
「……とりあえず、様子見ってことで」
苦笑しながら、店内の接客業務に専念することにした。
◇◇
延々と続けられる女神様2人の言い争いなんだけど、
「そもそもクレイントーラはですね……あ、前から10人のプレイヤーの方は入店くださいな」
的確に誘導もしてくれていたわけだし、何より女神様2人の掛け合いを、プレイヤーの皆さんも楽しんでいるみたいで、店の前は良い意味で賑わい続けていた。
とはいえ、今日一番のサプライズは、他ならぬリトリサだった。
はじめての接客なので、最初はぎこちなかったリトリサなんだけど接客をこなしていると、その頭上に、
『リトリサのレベルがあがりました』
『リトリサのレベルがあがりました』
『リトリサのレベルがあがりました』
そんなウインドウが何度も表示されていき、その度に接客レベルがあがっていた。
しかも、レベル5になると、
「あ、ようやくコピーマジックを使用出来るようになりました」
なんか、そんな言葉を口にしたかと思うと、俺の目の前でリトリサが分裂していって、あっという間に5人になったんだ。
「あ、あの、リトリサ……それは?」
「あ、はい。私は女神見習いですので、レベルアップして真の女神に近づく度に使用出来るスキルが増えていくんです」
嬉しそうに微笑んでいるリトリサなんだけど……言葉遣いも丁寧になってきた気がするし、何より、その容姿も変化していて……うん、その……主にプロポーションがすごく良くなって来ていて、胸の膨ら……
「旦那様? どこをみているのかしら?」
そんな事を考えていた俺の背後に、絶望のオーラモーションを発動させているエカテリナがジト目で張り付いてきたもんだから、大慌てした俺だったわけで……
と、とにもかくにも……そんなリトリサのおかげもあって、今日はメタポンタ村のアンテナショップを滞りなく営業することが出来た。
地下トンネルを使って商品補充もしていたんだけど、ものの2時間もすると店内在庫も村の在庫も空っぽになってしまったので、その旨をプレイヤーの皆さんに伝えて閉店することにした。
商品を購入出来なかったプレイヤーの方も結構いたんだけど、
「いやぁ、駄女神様の漫才を見れただけで満足したよ」
「あれを見れただけでも、ここに来た甲斐があったよな」
皆さん、そんな感じで満足してくれていたので胸を撫で下ろした次第だったんだが……リサナ神様とクレイントーラ神様ってば、すっかり駄女神様認定されているけど……いいのか、これって……
思わず苦笑しながら、店の前に「CLOSE」の札をかけていく俺。
「……なんか、リトリサの方がすごい女神様になるんじゃないかって気がしないでもないというか……」
そんな事を呟きながら店内へ戻っていった。
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