小鳥遊……だけじゃない? その1
「……ん」
カーテンから漏れてきた光で、俺は目を覚ました。
あれ? ……ベッドの上じゃない……って、なんでだ……
考えを巡らせながら体を起こそうと思った俺なんだが……何故か体を動かすことが出来ない。
「あ、あれ?」
俺の体には毛布が掛けられているんだけど……なんだろう、不自然に膨らんでいるような……
その毛布をめくった。
そこに、小鳥遊の姿があった。
「あぁ、そうか……昨日は小鳥遊と一緒にゲームをしたんだっけ……」
ようやく昨夜の事を思い出した俺。
……しかし……だ……
小鳥遊もゲームを終えていたんだけど……その小鳥遊は、俺に向かい合い、抱きつくようにして眠っていたんだけど……その、なんだ……小鳥遊の大きな胸が俺の体に押し当てられているもんだから、柔らかい感触がダイレクトに伝わっていて……ってか、こ、こんなに柔らかくて気持ちいいんだな、小鳥遊の胸ってば……
って
「い、いかんいかん……俺は何を考えているんだ……」
慌てて首を左右に振る俺。
すると、その声と動きに反応したらしい小鳥遊が目を覚ました。
ボーッとしている小鳥遊は、ゆっくりと左右を見回していたんだけど……その視線が俺の顔へと向けられた。
「……あ……浩さんだ……」
にっこり微笑むと、小鳥遊は俺の胸にぽふっと顔を埋めてきた……いや、これ、まだ完璧に寝ぼけてるだろう?
「あ、あの……小鳥遊?」
「……ふぅ……浩さんの良い匂い……」
「お、おい、小鳥遊……そんな俺の胸を嗅いだってそんな良い匂いなんて……」
「この匂い……しゅき……」
俺の胸に顔を埋めながら頬ずりをしてくる小鳥遊。
寝ぼけて、俺に甘えてきている感じなんだけど……これって一体どうしたらいいんだ?
小鳥遊を起こそうにも、その仕草が可愛いもんだからもう少し見ていたいとか、押しつけられたままになっている胸の感触をもう少し感じていたいというか……
そんな事を考えていると……小鳥遊の目が完全に見開かれた。
そのまま、俺の顔を真顔で見つめてくる小鳥遊なんだけど……その顔がどんどん真っ赤になっていく。
「……お、おはよう小鳥遊。目が覚めたか?」
「……あ、はい……って、いうか……」
俺に返事をしながら思考を巡らせていたらしい小鳥遊は、その顔を茹で蛸よりも真っ赤にしながら慌てて俺から離れていった……んだけど……
「ちょ!? た、小鳥遊……お前、なんて格好を……」
「へ? ……あ、ふぁ!?」
俺の言葉で、自分の体へ視線を向けた小鳥遊は、毛布で体を覆い隠していった。
そりゃ、そうなるだろう……何しろ小鳥遊ってば、上着の前ボタンを全部外していて、ブラが露わになっていて……更に、穿いていたズボンも脱いでいたもんだから、パンツまで丸見えになっていたわけで……ってか、寝苦しかったのかどうかわからないけど、なんでそんな格好になってんだよ、おい!?
「あ~……つ、ついでにシャワーを浴びたらどうだ? 俺はここで待ってるから」
俺の言葉に高速で頷くと、小鳥遊は持参してきていた旅行鞄を持って廊下へ向かっていった。
案内しようにも、小鳥遊ってばあんな格好だし……
そんな事を考えていると、ガラガラと浴室の扉が開く音がした。
まぁ、そんなに部屋があるわけじゃないし、どうやらすぐに浴室を見つけることが出来たみたいだ。
シャワーの音を聞いていると、お湯を浴びている小鳥遊の姿を想像してしまって悶々となってしまいそうだ……
とりあえずスマホをチェックしてみると、メールが数通届いていた。
1通は東雲さんからだった。
「『昨日のあれ、よろしくご検討ください』って……昨日のあれっていうと……あの『私、お味噌汁作れますから』って、あれの事だよな……」
いや、ちょっと待ってくれ……味噌汁云々をよろしくご検討くださいって……俺は何を検討すればいいんだ? おい……
しばらく考えを巡らせてみたものの、残念ながら浮かんでくるものは何もなかった。
……そうだな……わからない事を考え続けてもどうにもならないし……
そう考えた俺は、
『すいません、何を検討すればいいのかもう少し具体的に教えてもらえませんか?』
そう、メールを返信しておいた。
もう1通は、お隣の古村さんからだった。
「昨日会社帰りに見かけた気がしたんばけど気のせいだったのかにゃあ? ちょっと寂しかったのな。とりあえず帰宅されてるみたいだし、よかったらお昼でも食べながらイベントの感想などをお聞かせ願いたく=~」
……う~ん……
確かに、古村さんにはゲームのことで協力する約束をしているけど、さすがに今日はなぁ……
『とりあえず今日は先約がありますので、また次回ってことにさせてください』
とりあえず、会社帰りの件に関してはあえてスルーさせてもらって、話の件に関してはまた改めてってことにさせてもらった。
……ピロン
って、送信してから10秒もかからずに古村さんから返信が届いたけど……
「お~の~……ひろっちってば付き合いがわるいのな~……まさか女じゃないでしょうな? まぁ、ひろっちに限って浮気ってことはないと思うけど~」
……おいおい……浮気って……ちょっと待ってくれ……俺は別に古村さんと付き合ってもいないわけだし……まぁ、だからといって小鳥遊と付き合っているのか? と聞かれると、そんなわけがあるわけもないし……
「そうだよな……今日は小鳥遊を飯につれていってやるだけだし、別に交際しているわけじゃないんだし……」
そんな事を呟きながら、俺は、
「どうもすいません。また改めてってことで」
そう返信を返した。
「あ……あの……」
俺がメールを返信していると、部屋の入り口に小鳥遊が立っていた。
服を着替え終わったらしい小鳥遊は、俺を見つめながら、
「しゃ、シャワー……ありがとうございました……」
そう言いながら、大きく頭を下げた。
「あぁ、無事に入れたみたいだな。じゃあ、今度は俺が入ってくるから、小鳥遊はこの部屋で髪の毛でも乾かしていてくれるか?」
「は、はい……」
俺の言葉に頷く小鳥遊。
そんな小鳥遊と入れ替わるようにして、俺は風呂へ移動しいていった。
シャンプーやリンスも、俺のを使ったらしい小鳥遊なんだけど、容器がきっちりと並べ直されていた。
こういったあたりって、ホント几帳面だよな小鳥遊ってば。
そんな事を考えながら、俺はシャワーを浴びはじめた。
……しかしあれだな……さっきまでここで小鳥遊がシャワーを浴びていたんだ……って考えると……って、おいおい、俺の下半身は何、微妙に反応してやがるんだ……
苦笑しながら、体を洗っていく俺。
この後、小鳥遊と出かけるわけだし、少しでも綺麗にしておかないとな。
まぁ……今日はただの食事なんだし、それ以上の事は別に……
「あ、あの……」
「え?」
シャワーを浴びていた俺は、扉の向こうから聞こえてきた声に、思わず目を丸くした。
その声は、紛れもなく小鳥遊の声だった。
「おいおい、小鳥遊。ちょっと待っててくれって。俺、まだシャワーを浴びてる最中だから……」
そう言った俺なんだけど……小鳥遊ってば、なんで扉の隙間から顔をのぞかせているんだ、おい!?
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